6月18日 日曜日 「宇宙船の中に」

 今まさにNASAに突入しようとしていた私たちの目の前に、銀色の宇宙船が落ちてきました。
 お母さんはこれは神の思し召しだと言ってますけど……宇宙船を落としてくるような神様なんてろくな奴じゃないと思います。
 まあ私もその神様の一人なんだけど。

 「さあ千夏!! とっととこの宇宙船に乗り込みましょう!!」

 「お、お母さん……本当にこれに乗るつもりなんですか?」

 「そうよ? 何か問題ある?」

 「ええっとその……なんとなくこの銀色の宇宙船って、UFOみたいに見えません? もしかして宇宙人とか乗ってるんじゃ……」

 「あーっはっはっは!! 千夏ってやっぱり子供なのねえ!!」

 「うわ。そこまでバカにされてしまいますか」

 「だってUFOよ!? 未確認飛行物体よ!? 今私たちがこうして見ているのだから、もう未確認じゃないじゃないの」

 「そこ!? 否定するのはそこなの!? 宇宙人が乗ってそうっていうのは否定しないの!?」

 「実際宇宙人が乗ってそうなフォルムしてるしね」

 「ほらやっぱり……」

 「でもそんな事ないわよ。きっとNASAが秘密裏に開発していた新型の宇宙船で、その起動実験に失敗してここに墜落してきたのよ。
  そうに違いないわ」

 「またどっかの陰謀説のような事をさらさらと口にしちゃうんですねお母さん……」

 そんな事をのたまう母親なんて嫌だぞ。



 「よし! じゃあ突入!!」

 「ああっ!! 宇宙人とか居たらどうするのさお母さん!!」

 「捻じ切る」

 「戦う気マンマンなんですか!?」

 勝手に宇宙戦争とか起こすのやめてくださいよね。お母さん。








 「ふむふむふむ……なんだか本当に宇宙人の乗り物っぽいわね。機器類が人類が作った物に見えないわ」

 「ほらぁ……やっぱりこれ宇宙人の乗り物なんですよぉ。早くここから出ましょうよぉ」

 「千夏ってば宇宙人怖いの?」

 「怖いよ! だって捕まったり変な改造手術されたりキャトルミューティレーションされちゃったりするんだよ!?」

 「大丈夫よ。こうやって宇宙船の中に入っちゃっているんだから、捕まえられるまでもないわ!!」

 「相手の手間を省いちゃっただけじゃんか! 私たちにとっては何の大丈夫じゃないじゃん!!」

 「ああっ! 見て千夏!! なんか銀色の人が倒れているっ!!」

 「うっわあっー!! やっぱり宇宙人じゃん! グレイじゃん!!」

 「いえ! ただちょっと衣服の趣味の悪いNASAの職員が倒れているだけよ!! そうに違いないわ!!」

 「お母さん! それはあまりにも無理やりすぎる解釈だ!! どうしてそこまで信じたくないんですかこの現状を!!」

 「ううう……」

 「ああっ!? 宇宙人が目を覚ます!?」

 ど、どうしましょうか。いや、別にやましい事はしていないんですけど……でもやっぱりこういうコンタクトの仕方はあまり良くないような……。

 「えーっと、えーっと……おりゃっ!!」

 「カ、カルボナーラッ!!」

 「千夏!? 何いきなり宇宙人さんの首に手刀決めちゃってるの!?」

 「ああっ!! ついやっちゃった!! どうしようかこれ!?」

 め、目覚めた時が怖いなぁ……。
 というか、あの断末魔は一体なんだ? イタリア人?







 6月19日 月曜日 「宇宙の人」

 「うううっ……」

 「ああっ!? お母さん!! どうしよう!! 私が気絶させちゃった宇宙人さんが目覚めそうだよ!!」

 「よし。トドメ刺せ」

 「おい! これ以上関係をこじらせるような事言うな!!」

 「いえ、むしろ関係をすっきりさせるためにも……」

 なんにしたって娘に殺人……と言えるかどうか分からないものを勧めるんじゃございません。
 宇宙人だって生きているんです。殺したくなんて無いよ。



 「あ、あなた達はいったい…………」

 「げっ! 気付いちゃった!!」

 「今よ! ねじ切れ!!」

 「うっさい! うっさいよこのバカ母親!!」

 「あなた達は……まさか地球人!?」

 「え!? あ、はい。そうです。ア、アロハ〜…………」

 「何でハワイ語であいさつなのよ」

 だからうるさいですってば。放っておきなさいよ。

 「そうか……私は地球に辿り着く事が出来たのか……」

 「あ、あの宇宙人さん? 地球には何用で? 観光? それとも侵略とか?」

 「なにか空港の窓口みたいな質問になってるわね……」

 横からうっさいですってば。一応優しくコンタクト取っているんですから邪魔しないでよ。

 「そ、そうだっ!! どうか助けてください地球人のみなさん!!」

 「え!? 助けて? どういう事ですかそれは?」

 「実は……私たちの故郷の星が、ある怪物によって占領されているのです……」

 「そりゃあまたお気の毒に……」

 一応話は合わせて置きますけど、怪物に占領される宇宙人ってのはまた奇妙ですね。
 宇宙人ってぐらいだから、すっごいテクノロジー持ってて無敵無敵してると思ってたのに。
 勝手にそう思ってたのに。

 「……もしかして、その怪物を私たち地球人になんとかして欲しいと?」

 「ええそうです!! お話が早いですね!! どうか、私たちを救って欲しいのです!!」

 「いやいやいや……そんなの無理ですよ。宇宙人さんにどうにも出来なかったものが私たちにどうかできる道理がありませんよ」

 「そんなご謙遜せずにー♪」

 「謙遜なんかじゃありませんから。マジで本当の事ですから」

 「いえ、しかしこの星にはふざけた感じの戦闘能力を有する固体が居ると聞いたのですが……」

 「…………思い当たる人は確かに居ますけど、きっとウチのおばあちゃんの事でしょうけど、
  残念ながらその人は死んでしまいましてね……だから、私たちには何もできな……」

 「分かったわ! 私たちがなんとかしましょう!!」

 「お母さん!? 何勝手なこと言ってくれちゃってるの!?」

 「本当ですか地球人の人っ!!」

 「ええ。だけどね、その代わりにあなたの宇宙船をちょっくら貸して欲しいの」

 「それぐらい良いですよ!! いやー良かった! 地球の人は本当に素晴らしいですね!! 優しさに満ち溢れていますね!!」

 宇宙人に褒められるという経験があまり無いためか、なんだか微妙な心境だなぁ……。







 「で、その怪獣ってどんな奴なんですか?」

 「緑色でしてね、全てのスポーツに通じている恐竜で…………」

 「ガ、ガチャピン!? もしかしてガチャピンの事なの!?」

 ガチャピンすげえ。ついに地球から飛び出して宇宙征服を……いや、しないよ! ガチャピンはそんな事しないと思う!!




 6月20日 火曜日 「強さの証明」

 冥王星まで行くために、地球に落っこちてきた宇宙人の星を救う事になってしまった私とお母さん。
 まあなんとも奇妙な感じに物事が進んで行ってます。
 引き返すなら今のうちだと本能らしきモノがガンガン警告してるのですが、今さらどうしようもありませんね。



 「えっと宇宙人さん? あなたの星ってどんな所なの?」

 未知の惑星までいかなきゃならない事にさほど絶望していないらしいお母さんがそんな事を宇宙人さんに聞いていました。
 多分お母さんの辞書には心配という文字は無いのでしょうね。
 この不良品辞書め。


 「私の星はですね、それはもう素晴らしい星なのですよ」

 「具体的にどういう所なの?」

 「あなたたちの言葉で言うならば、ステーキとしゃぶしゃぶで出来たような星です」

 「まあ! それは素晴らしいわ!!」

 食い物で出来てるんですか宇宙人さんの星は……?
 そしてそんな星を素晴らしいと言う奴なんて、小学生程度なのだと思うのですけれど?

 「あと家庭の蛇口からコーラが出ます。あなたたちの言葉で言うところの」

 「まさに夢の星ね。ガチャピンが征服を企むのも頷けるわ」

 ずいぶんと食い意地の張った文明を築いているんですね。
 世のオカルト学者どもがこんな人たちに想いを馳せてたかと思うと笑いが止まりませんよ。
 あと、別に征服者がガチャピンだと決まったわけじゃないですから。言葉には気をつけてくださいお母さん。




 「しかしその……少しばかり心配なのですが、あなた方は本当にあの怪物を倒してくれるのでしょうか……?
  失礼ですが、まったく強そうには見えない……」

 「まったく。これだから宇宙人は困るわね。あなたたちの感覚で強さを測ってもらっては困るわ。
  これでも私たちは数多くの戦を生き抜いた戦士なんだから」

 「生き抜いたというよりは生き延びたと言った方が良いかもしれませんけどね」

 少なくとも私は自分から進んで戦いの場に出向いた事はありませんからねえ。

 「本当なのですか? あなたたちの事を信じても良いのですか?」

 「まったく疑り深い宇宙人ね。
  分かったわ。そこまで言うのであれば私たちが戦士である証拠を見せてあげる」

 そんな大それた事を言ったお母さんがポケットから取り出したのはジャムの瓶。
 …………ジャムの瓶? なんで?


 「さあ、これを開けてみなさい宇宙人っ!!」

 「こんなもの簡単に決まって……ぬっ!? あ、開かない!?」

 「ええ、そうでしょうね。なんて言ったってジャムの瓶となめ茸の瓶は地球で一番固い物だもの」

 その言い方だとまるで硬度の高い物質みたくなってますよ。
 正確に開けづらいと表現したらどうですか?

 「しかしっ!! この瓶もこうやってライターで口の部分を熱してやれば……ほら!! 簡単に外れたわ!!」

 「おおっ!! なんとすごい!!」

 「こんな感じでガチャピンも捻って中の人を引きずり出してあげるわ!!」

 「素晴らしいです春歌さん! あなたはまさに救世主だ!!」

 お母さん。もしかしてガチャピンも温めるつもりなんですか?
 というかお前も騙されるなよ宇宙人。



 あと、中の人なんてガチャピンには居ないはずです。
 個人的にそう信じています。



 6月21日 水曜日 「到着」

 「着きました! 着きましたよ春歌さんに千夏さん!!」

 「え……? 着いたってどこにですか宇宙人さん?」

 「なに寝ぼけているんですか!!もちろん私の星に決まっているじゃないですか!!」

 「ああ……そういえば私たちは宇宙人さんの星を侵略している怪物を倒さないといけないんでしたね。
  なんて面倒な約束してくれたんだお母さん」

 まあそうでもしなければ冥王星まで行く手だてが無かったのですけども……でもなんだかなあ。



 「ステーキとしゃぶしゃぶの星に着いたって本当なの千夏!?」

 「まだ昨日の発言を引きずってるんですかお母さん。
  ええ、どうやらそうらしいですよ。多分ステーキとしゃぶしゃぶは無いだろうけど」

 「わーい♪ 私が一番のり〜♪」

 「あっ! お母さん!!」

 人の話を聞かない事を信条としているようなお母さんは、そのありあまる知的探求心を解放し、宇宙船の外に飛び出して行ってしまいました。
 地球との環境があまりにも違いすぎる星だと、下手したら死んでしまうかもしれないというのに……。
  なんと無謀な人。



 「あの宇宙人さん……大丈夫なんですかね? 私たちが外に出ちゃっても」

 「ええ、大丈夫ですよ。私たちの星と千夏さんたちの地球はよく似ている大気をしてますから。
  あなた方の言葉で言うと、カレーライスとハヤシライスぐらい似てます」

 「ちょっと前から気になってたんですけれど、なんで宇宙人さんの比喩はすべて食べ物関連なんですか?
 ジョーク? スペースジョークなの?」

 そうだとしたら私は宇宙ではよろしくやっていけなさそうですよ。




 「千夏! ちょっと来て!! すっごい物があるわよ!!」

 「お母さん? どうかしたんですか?」

 お母さんの声に誘われるまま、私は宇宙人さんの宇宙船から降り、未知の惑星の大地を踏みしめました。
 これってけっこう全人類的にすごい出来事っぽいですけど、今はそんな事を考えている心の余裕なんてありませんでした。
 なんて言ったってこれからガチャピンと戦わないといけないのかもしれないからね。

 「ほら!! これを見てよ!!」

 「お母さんがそこまで慌ているんだからさぞかしすごいものなんでしょうね……って、なんですかこれは?」

 「見ての通りコンビニよ。宇宙人のコンビニなのよ!! すっごく入ってみたいと思わない!?」

 「え? ええ!? 宇宙的にもコンビニが大流行なの!?
  ついていけないよその宇宙ブームには!!」

 「しかもローソン宇宙支店」

 「ローソン!? ローソンってここまで進出してたの!?」

 すげえなローソン。



 6月22日 木曜日 「宇宙コンビニ」

 さっさと冥王星に行って黒い星の民を倒さないといけないはずの私とお母さんは、なんだか良く分かりませんがいつの間にか宇宙進出していたローソンの前に立っていました。
 あまりにも寄り道の規模が大きすぎて、もうどう足掻こうが修正不可能な気がします。
 あーあ。いつになったら冥王星に行けるんでしょうね。



 「ほらほら千夏! そんな黄昏てないでこのコンビニに入りましょうよ!!
  なんて言ったって宇宙のコンビニよ!? きっと地球なんかじゃ買えないような物が売っているに違いないわ!!」

 「いやですよ……。だってなんだかろくな事にならない気配が湧き立っているもの。
  触らぬ神に祟りなしです」

 「あははは! 何を言ってるのよ! 今は千夏がその神様じゃない!!」

 「私は元々祟るような神じゃないですよ」

 「もうそんなどうでも良いことは放って置いて、さっさとコンビニに入りましょうよ。
  コーラ買ってあげるから。スペース・コーラ、買ってあげるから」

 でもこの星、水道水がコーラなんでしょ?
 価値がミネラルウォーター以下じゃないですか。




 「いらっしゃいませー」

 「おお。さすがローソン。宇宙の隅にまで店員教育が行き届いているわね」

 「いらっしゃいませの挨拶程度で大げさな……」

 「こういう挨拶が何事も一番大事なのよ。宇宙人との意思疎通だって、まずは挨拶から始めなくちゃね」

 私たちはまず宇宙人さんに手刀かませちゃいましたけどね。
 宇宙人さん、その時の事を覚え無いようなので本当に良かったけども。




 「さあ千夏! 何買おうか!? 宇宙のコンビニで、何を買おうか!?
  カップラーメン? 菓子パン? それともちょっと捻って雑誌類?」

 「あなたは初めてコンビニを目にした田舎者ですか。はしゃぎすぎ」

 「う〜ん迷うわねえ……よしっ!! 私はこのフリスクを買うことにする!!」

 「宇宙まできてフリスクなんですか。もうちょっと珍しそうな物買いなさいよ」

 「でもこのフリスク、彗星味なのよ?」

 「珍しい! そして宇宙っぽい!!」

 そんなちょっとびっくりな品物を持ったお母さんは、宇宙コンビニのレジへと進みました。
 これでお母さんの無駄に有り余っている好奇心が治まってくれれば嬉しいです。

 「200スペース・イェンです」

 「あら、聞いたこと無い貨幣単位」

 というか今気付いたんですけれど、お母さんってこちらのお金持ってないですよね?
 いったい支払いはどうするつもり…………

 「スペース・ごうと……」

 「お母さん!? 今強盗って言おうとした!?
  なんかの技名のごとく、スペースって付けようとした!?」

 「おほほほ。なんの事かしら?」

 この人はホントに油断も隙もない……。



 6月23日 金曜日 「怒られた」


 「まったく、いい歳して何やってるんですか。大人として恥ずかしくないんですか?」

 「でもその……」

 「でも?」

 「フリスクが……」

 「フリスクなんてどうでも良いでしょう? これは道徳的な問題なんです!!」

 「あの〜……もうそろそろ許してあげてもいいんじゃ……?」

 「娘さんもっ!! あなたがしっかりしないといけないんでしょう!?
  それなのになんですか!! まるで人事みたいに!!」

 「なんで私がこんな親の面倒みなきゃいけないんですか。
  それじゃまるで介護だよ。

  ……じゃなくて、私たちは早く行かなければならない所がありましてね」

 「だからと言って解放なんて出来るわけないでしょう!!
  なんて言ったってあなたたち、万引き犯なんですから!!」

 「ごもっともです。まったくその通りです」

 ええ。宇宙コンビニの店員さんがおっしゃった通り、私たちは万引き犯になってしまったのです。
 何故かですって?
 そんなのお母さんが強盗から窃盗にベクトルを変えたからに決まっているじゃないですか。お母さんはスペース・万引きだと妙に誇らしげでした。
 死ねば良いのに。



 「まったく……本当にどうしようも無い人たちね! どういう育て方されたのよ!」

 まさか宇宙の果てにまで来て教育の事について怒られてしまうとは……気分悪い事この上無いです。

 「それにしてもお母さん……」

 「なに? あの店員さんの顔が面白いって?」

 「違いますよ。なに年下に怒られていながら小学生みたいな事を言っているんですか」

 「心はいつまでも若人だから♪」

 「死ねば良いのに」

 「ち、千夏……? もしかしてスペース・反抗期?」

 「なんにでもスペースを付けるの止めなさい。
  あのですね、まだこのコンビニしかこの星の様子を見てないので何とも言えませんが……割りと平和そうじゃありませんか?」

 「確かにそうね……とても怪獣に支配されようとしている星のコンビニには思えないわ」

 「いや、そもそも私たちは怪獣に支配されそうな星のコンビニを知らないわけですが……まあ、お母さんの言う事は外れてはいないと思います。
  だって緊急事態の星であるならば、今みたいに他人に対して道徳を説くなんて余裕無いはずだもの」

 「という事はやはりこの星には何か秘密が……」

 「ほらあなたたちは人の話を良く聞かない! もうこうなったら店長に怒ってもらいますからね!!」

 「まずいわね……コンビニの大ボスでである店長が相手だと、そう簡単には無視させてもらえないはずたわ……」

 「そう簡単に無視しないでくださいよ。お母さんのその態度のせいでこんなに長引いているんでしょうが」

 私たちはさっさと冥王星まで行って黒い星の民を倒さなくちゃいけないって言うのに。
 ああ、確かその前にガチャピンを倒さなくちゃいけないんでしたね。
 とにかくやる事がいっぱいあるんですよ。



 「ガチャピン店長! この人たちを叱っちゃってください!!」

 「もう……まったく鈴木くんは仕方ないなあ……」

 「あっれー!? 思わぬ所からターゲット登場!?」

 これはまさに運命的な出会い!!
 というか、手間が省けて助かりました……。


 6月24日 土曜日 「我が名はガチャピン。それは、大勢であるが故に」

 「お母さんお母さん!! ガチャピン! ガチャピンが出ましたよ!!」

 「え!? えーっと……ずっと前から好きでした!!」

 「それは違うでしょお母さん!!  何ぱにくっちゃって訳の分からない事ののたまっちゃっているんですか!!」

 「はっ!! あ、危なかったわ……。ついつい気が動転しちゃって、ガチャピンなんかに求婚してしまった」

 「あなたは気が動転すると求婚するのですか。どういう思考持って生きているんですか」

 「よし! とにもかくにも敵さんがあちらから現れてくれたのよ!! この機を逃すわけにはいかないわ!!
  覚悟ぉ!! この緑恐竜が!!」

 お母さんが勢い良くガチャピン店長に殴りかかります。
 一応お母さんの両手両足はおばあちゃんから貰ったものなので、決着はすぐにでもつくでしょう。

 「どおりゃー!!!」

 「ぎゃあああ!! いきなり殴るなんて非常識なああ!!!」

 「やったー!! ガチャピンを倒しましたよー!!」

 明らかに全国のちびっ子を敵に回した感じの私たちですが、世界を救うためには仕方のない事なのです。
 良かった良かった。本当に良かった。



 「よしお母さん! これでこの星でやらなくちゃいけない事は全て終わりです! さっさと冥王星に向かいましょうか!!」

 「そうね! それが良いわね!! それじゃあこのコンビニの商品全部持っていって……」

 「まだ強盗するつもりなんですか!? いい加減にしなさいよ!!」

 「くっ……ま、待てお前ら」

 「げ。まだガチャピン生きてた」

 なんとも酷いセリフ言ってくれますね……。

 「私は……ガチャピンの中の一人にすぎん! まだ私の他にも数多くのガチャピンが居るのだ!!」

 「数多くのガチャピン!? ガチャピンって一杯いるの!?」

 「もちろんそうに決まっているだろう……。
  レースやったりスキューバダイビングしているガチャピンが同一人物なわけ無いだろうが!!
  それぞれの分野にひとり、一流のガチャピンが居るのだ!!」

 「な、なんとなくそう言われたらそんな気がしてきた……」

 「だから、まだこの星は我々の物なのだ……がふっ」

 「…………ちなみにあなたは何を担当していたガチャピンなんですか?」

 「そりゃあもちろんコンビニ店員として一流のガチャピンだったわけで……」

 「そんなガチャピンって何だか嫌だな!! というかそれ、ガチャピンの中でも一番ダメなガチャピンでしょ?」

 はあ……まだ戦いが終ったわけじゃないそうですねぇ。








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