6月25日 日曜日 「良心を殺して」

 「お母さん……あのコンビニのガチャピンさんによると、まだまだいっぱいガチャピンが居るらしいですけど……どうしますか?」

 「どうするって言ってもねえ。全部倒すの、きっとすごい時間が掛かるわよねえ」

 「私たち的にはもうそんなにはこの星に長居はしたくありませんし……」

 「よし! じゃああの宇宙人さんにはもう全部倒しましたよって嘘吐こう!
  そして冥王星まで連れて行ってもらおう!!」

 「嘘吐いちゃうんですか? それはあまりにも酷いような……」

 「何を言っているのよ千夏。今私たちが、いえ、人類が置かれている状況は、一時を争うほど切迫しているのよ!?
  甘いことなんて言ってられないわ!!」

 「う〜ん……でもですねえ」

 「千夏はこの星と地球、どっちが大切なの!?」

 そりゃあもちろん地球の方ですけど……でも困っている宇宙人さんを騙しちゃうのも気が引けるんですよ。




 「よしっ。千夏、準備は良いわね? 何があっても嘘を吐き続けるのよ?
  良心の呵責に負けちゃ絶対ダメ!」

 「はいはい。分かってますよお母さん。
  まったく、自分の娘に嘘を吐く事を強いる母親ってなんなんだ……」

 「じゃあ行くわよ?」

 私に再三確認を取ったお母さんは、緊張した面もちで宇宙船で待っていた宇宙人さんの所へと歩いていきました。
 傍目から見る限り、私よりお母さんの方がドジ踏みそうなんですが?


 「ま、待ったかしら宇宙人さん?」

 「ああ、春歌さんっ!! ご無事だったのですね!?」

 「ええもちろん! ぱぱぱっとあのガチャピンを倒してあげたわ!!
  だからもうこの星は大丈夫!! 何の心配も要らないのです!!
  良かったね! これで枕を高くして寝れるよ!!」

 果たして宇宙人さんが枕を使用して寝ているのかは疑問ですがね。
 というかお母さんのそのハイテンションっぷりは怪しい事この上無いでしょうが。もうちょっと落ち着いていこうよ。

 「本当にあのガチャピンを倒したんですか!? さすが私が見込んだだけはありますね春歌さん!!
  あなたは私たちの星の救世主だ!!」

 「そうでしょそうでしょ? だから、その救世主のために冥王星までひとっ走りお願い……」

 「この調子で残りのガチャピンたちもばったばったと倒しちゃってくださいね!!」

 「……残りのガチャピン?」

 「あれ? 知らなかったんですか?
  ガチャピンって、何人も居るんですよ?」

 そんな宇宙の一般常識みたいに言われても。
 というか宇宙人さん、ガチャピンが何人も居る事知ってたんですね……。これじゃあ嘘の吐きようが無い。


 「……もちろん知ってたわよバカ野郎」

 「は、春歌さん!? 何でそんなに怒っているんですか!?」

 放って置いてあげてください宇宙人さん。




 6月26日 月曜日 「ガチャピン大会」

 「さて千夏さん……予期せぬ事態が私たちを襲っているわけですが、どうしましょうか?」

 「お母さんの言う予期せぬ事態というのは、この星を救うために倒さなくちゃいけないガチャピンが、たくさん居るという事でしょうか?」

 「ええ。その通りですよ千夏さん。
  しかも宇宙人さんに聞いた所、全部で108人ものガチャピンがこの星に存在しているらしいです」

 「煩悩の数だけいるガチャピンってのもかなり嫌ですね」

 「これだけの数のガチャピンを一気に相手するには、その5倍の数のムックが必要となるわ」

 「その力関係は良く分かんないけども」

 「だからと言って一体ずつ相手にしていけば時間がいくらあっても足りないわ。
  下手をしたら年を越してしまう」

 「この星で年越しそば食べるのは嫌ですねえ」

 「そこで春歌さんは考えました! なんとか楽にガチャピンたちを一網打尽にできないかと!!
  やじうまワイド見ながら考えました!!」

 「片手間じゃないか」

 っていうか、この宇宙の果てにまでやじうまワイドの電波は届くんですね。
 すげえやじうまっぷりだ。伊達にワイドは名乗ってない。



 「そして私がピカーンと思いついた作戦がこれです!!
  名付けて、『世界一ガチャピン大会大作戦』!!」

 「……丁寧な説明をお願いしますお母さん」

 「簡単に言えば、世界一のガチャピンを決める大会を開き、一カ所にガチャピンを集めます!!
  そしてガチャピン同士を最後のひとりになるまで戦わせ、余計なガチャピンの排除と優勝者の体力を消耗させる!
  そして満を持した状態で私たちがその優勝したガチャピンと戦えば……まさに漁夫の利!!
  たったひとりのガチャピンと戦うだけで、私たちは勝利を手にする事が出来るのです!!」

 「おー。我が母親ながらなんとえげつない作戦。
  しかしですね、全部のガチャピンさんが必ずしも参加してくれるとは限らないでしょう? 甘い算段だと思います」

 「大丈夫よ。彼らがガチャピンである限り、世界一のガチャピンを目指す事を諦められないわ。
  なぜならば、これはガチャピンの性なのだから」

 一体なんなんだ。ガチャピンって。

 「さあ、集まるがいいわ全宇宙のガチャピンたちよ!!
  自らが世界一だと証明するためにねっ!!」

 「調子に乗って全宇宙のガチャピンを呼び寄せないでくださいよ。
  108人以上集まって来たらどうするんですか」

 想像しただけでめまいがしてくるのですが。



 6月27日 火曜日 「ガチャピン大会開始」

 「見て見て千夏! 世界一ガチャピン大会に出るためにあんなにたくさんのガチャピンたちが集っているわ!
  これは壮観ね!!」

 「壮観っていうか激しく気持ち悪いんですけどお母さん?」

 「ここで彼らを同士討ちさせれば見事勝利は私たちの物……なんて素晴らしい作戦なのかしら」

 「ええ。本当に素晴らしい作戦ですね。
  悪の総裁とかが思いつきそうな作戦です」

 「つまり個性があるって事?」

 「違うよ! なに精一杯ポジティブな方向に身を置こうとしているんですか!!
  私はお母さんの事を陰湿極まりないと言いたいのですよ!!」

 「陰湿なんて言葉で私の全てを表現出来ると思うなよ!!」

 「それなんの威張りですか!? 誇るべき表現では無い気がするのですが!?」

 「あ。見てご覧なさい千夏。ようやく世界一ガチャピン大会が始まるみたいよ」

 「そりゃあまたプチ悪夢ですね」


 『全宇宙のガチャピンさま、たいへん長らくお待たせいたしました!
  これより、世界一ガチャピン大会の予選を開催いたします!!』

 「「おおおーー!!!!」」

 「うわ……なんだかすっごく盛り上がってますね。
  訳分かんないハイテンションぶりです」

 「まあ四年に一回の祭典だからね。
  ついつい気分が盛り上がっちゃうのも分かるわ」

 「ワールドカップ並みに開かれてるのかよ。このガチャピン大会」

 「ええ。前回の開催地は木星だったのよ。
  初の太陽系内大会だったんだから」

 そりや知らないはずだわ。
 だってどこの誰が木星なんかでガチャピン同士が戦っていると思いますかね。



 『それでは第一予選の内容を発表いたします!!
  第一予選は……生ガキ一気喰い対決だー!!』

 「い、一回戦からそれなの!? なんて危険なっ!!」

 確かに健康面から言えば危険があるかもしれないですね。
 当たっちゃうかもしれないから。ってバカ。このバカ大会。

 「こんなぬるい大会で本当にガチャピンたちを同士討ちさせる事が出来るんですか……?」

 『はい。出場者の前にはずらりと子供たちが並ばされ終わりました。
  いよいよ第1回予選のスタート……』

 「えー!!?? 生ガキって、生の子供の事だったんですか!? こええ!! 全然ぬるい大会じゃなかった!!」

 というかやめさせなさい。こんな大会。





 6月28日 水曜日 「優勝ガチャピン決定」

 「さて。ガチャピンたちが世界一ガチャピン大会に勤しんでいる間に、私たちは腹ごしらえでもしましょうか?
  なんていったって優勝したガチャピンと戦わなくちゃいけないんだからね。
  腹が減っては戦は出来ないわ」

 「……あんな悲惨な予選第一試合を見て食欲なんて湧きませんよ。
  お母さんはアレちゃんと見てたの?」

 「アレはアレ。コレはコレよ」

 「なにその羨ましい限りの思考切り替え。
  もう冷酷だとかそんな言葉が霞んでいく生き方をしなさるのですね。
  どこに行くんだあんたは」

 「千夏は何を食べたい? 私はね、やっぱりこの星でしか食べられない物が良いと思うんだ」

 「……そうですねえ。じゃあ私は軽めに宇宙そばください」

 「何言ってるのよ千夏。宇宙にそばなんてあるわけないじゃない。
  地球と同じ感覚で居てもらっても困るのだけど?」

 「宇宙そばって無いの!? 今まで散々宇宙コンビニだ宇宙強盗だってやってきたのに!?」

 「不思議なことに、そばだけは無いのよね」

 「なんでだよ。なんでよりにもよってそば何かが地球の宇宙に誇るべきオリジナリティになってるんだよ」

 「宇宙に来て初めて気付くものなのよ。
  そばの大切さをね……」

 「なにも宇宙に来てまでそれに気づかんでも」

 「とにかく、この星にはそばは無いの。そのかわりうどんはあるけど」

 「うどんはあるんですか」

 「ええ。うどんは宇宙でもっともポピュラーな食事だから」

 うどんすげえな。
 というか、うどんが宇宙で一番食べられておきながら、なんでそばが無いねん。
 その偏りっぷりはなにさ?



 「じゃあうどんで良いです……」

 「う〜ん……じゃあ私もうどんで良いかな。
  千夏は何うどんにするの?」

 「宇宙にも一応うどんの種類ってあるんだ?」

 「そりゃあもちろんよ。なんて言ったって月見うどんは大昔、宇宙から地球に伝わったとされているのだからね!! 黒歴史では!!」

 「そりゃ黒歴史にもなるぐらいしょっぼい宇宙からの伝来ですね。
  というかある程度文明が進めば食事に生卵ぶっかけるぐらいどこでもやりそうでしょうに。
  そのお節介な進化の介入は要らなかった気がします」

 「じゃー私は月見うどんにしよーっと」

 人が一生懸命突っ込んで居る時にさらりと無視するのはやめてください。





 「じゃあ私も月見うどんで良いです」

 「じゃあガチャピン大将、月見うどんふたつお願い」

 「はい! お任せあれー!!」

 「ってえー!? 敵であるガチャピンさんに作ってもらうの!?」

 どれだけボーダーレスなんだお母さん。

 『全世界ガチャピン大会優勝者は、うどん職人ガチャピンに決定です!!』

 「ええええ!!?? しかも優勝者!?」

 というかレーサーガチャピンとか宇宙飛行士ガチャピンとか柔道家ガチャピンが勝つと思っていたのに……何故よりにもよってうどん職人が?
 やっぱりうどんすげえな。



 6月29日 木曜日 「ガチャピンの月見うどん」

 「ねー、まだー? まだ月見うどん出来ないの?」

 「はいすみませんっ!! いますぐ作りますんで!!」

 「早くしてよねー。私たちはお腹空かせてるんだからさー」

 「……お母さん」

 「ん? どうしたの千夏? あまりにもお腹が空きすぎてごま塩食べたくなっちゃった?
  ダメだよー? これはご飯にかける物なんだから」

 「知ってますよそれくらい。
  今まで散々大人でも耐えきれないような試練を与えておきながら今さら子供扱いか。
  あのですね、私たちの目の前に居るのは誰ですか?」

 「うどん職人です」

 「敵であるガチャピンさんでしょ!? なにのんびりとうどんが出来上がるのを待っているんですか!!」

 「だって宇宙のうどんを食べる事が出来る機会なのよ!? そんな機会、滅多に無いのよ!?」

 「確かにそうかもしれませんけど、私たちって先を急いでいるんでしょ!?
  こんな事している時間なんて無いでしょ!?」

 「でも、でもっ……もしかしたら宇宙の月見うどんには本当の月が入っているかもしれないじゃない!!
  そんな珍品を食べないなんて誰が許すと言うの!?」

 「いくら宇宙だからといって月は入ってないでしょう!! 宇宙を舐めてるんですかお母さん!!」

 「宇宙は舐めてません!! ただ、人生を舐めてます!!」

 「誇らしげに言う事かオイ!!」

 あなたみたいな人の子である事が本当に恥ずかしいわ。




 「まあとりあえずここはゆっくり、月見うどんを食べ終わってからあのガチャピンを倒しましょうよ」

 「ここまでのマイペースはもはや才能ですねお母さん」

 「へいお待ち!! 月見うどん、ふたつ出来上がりましたー!!」

 グダグダ私とお母さんが喋っている間に、世界一ガチャピン大会の優勝者であるガチャピンさんが、うどんを作り終えてしまいました。
 まあせっかく作ってもらったのだからいただきますけどね。
 敵からの食事なのですが。

 「それじゃあいただきまーす」

 「いただきまーす…………もぐもぐ、うん……予想以上に月見うどんらしい月見うどんだ。
  どういう事なんだこれは。どこが宇宙月見うどんなんだ」

 ちょっと安心したけども、やっぱりがっかりですよ。
 こんなもののためにしっかりと待ってしまったんですか……。

 「うううう……なっとらーん!!」

 「うっわー!? お母さん!? なに!? どうしたんですか!?」

 「ダメよ! 全然ダメ!! これが月見うどんだとでも言うの!? こんなの全然宇宙月見うどんじゃないわ!!
  ただの、月見うどんよ!!」

 「それで十分じゃないですか。あなたは何を期待していたんだ」

 「そんなんじゃあダメ!! 敵として全然不甲斐ない!! 私が一から月見うどんの作り方を教えてあげるわ! 覚悟なさい!!」

 「おかあさーん!? また無駄に時間使っちゃう気なんですかー!!??」

 お願いだから先に進みましょうよお母さん……。




 6月30日 金曜日 「お母さんのクッキング講座」

 「ちゃらっちゃらちゃちゃ〜♪ 春歌料理魔神の3行クッキング〜♪」

 「はい質問ですお母さん」

 「はいなんでしょか千夏さん」

 「お母さんは一体いつから料理魔神という二つ名を授かったのでしょうか? 今まで一度もその名を聞いた事が無いのですけども?」

 「料理魔神の名はたった今襲名いたしました」

 「すんごいにわか名ですね。
  そいでもってもうひとつ質問なのですが、3行クッキングとはなにぞや?」

 「文字通り3行で料理を作り上げてしまう料理講座よ。3分クッキングをもじったの。
  これでガチャピンさんに一から料理を教えてやろうと思ってね」

 「たった3行で料理を一から教え込めるんですか?
  どう考えても無理っぽい気がするんですけど?
  しかも、お母さんそんなに料理やらないじゃん。ほとんど雪女さんに任せっきりだったじゃん」

 「私はこれでも料理魔神よ? 舐めないで欲しいわね」

 ついさっき名乗ったばかりの名前じゃないかそれは。全然当てにならない。





 「さあうどん職人ガチャピンさん! 準備は良いかしら!?
  私はそんじょそこらの料理魔神とはひと味もふた味も違うんだからね!?
  油断してると命を落とすわよ!?」
 そんじょそこらに料理魔神と名乗るバカが居てたまりますか。
 あと、命を落とすのならば私たちにとっては万々歳じゃないか。ガチャピンさんを倒さないといけないんだから。


 「わ、分かりました師匠!」

 そしてこのガチャピンさんもなんでノリノリなんだか。





 「それでは……3行クッキングスタート!」

 まあ一応3行クッキングとやらを見せてもらおうじゃないですか。お母さんがあそこまで自信満々なのだからどうせろくでもない物なんでしょうけど。

 「切る。
  焼く。
  食べる。以上っ!!」

 「ちょっと待ったお母さーん!!?? それが3行クッキングですか!?」

 「もちろんそうです。どう? 見事な教え方でしょう?」

 ええ。その3行クッキングのおかげでいかに雪女さんの地味だけど丁寧な料理が素晴らしい物だったか気付きましたよ。

 「そんなの料理を教えているとは言いませんよ!!」

 「切って焼けばだいたいの物は食えるわよ!!」

 「それはいくらなんでもおおざっぱすぎる!! それにですね、最後の『食べる』ってなんですか!?
  料理法でもなんでも無いじゃん!! 最後ひとつ余っちゃったから埋めましたてな感じになってるじゃん!!」

 「それは否定しない!! 確かに埋め合わせでした!!」

 「認めるなよ!! そんな恥ずかしい事っ!!」

 「じゃあ……喰うっ!!
  寝るっ!!
  遊ぶっ!! というのはどう?」

 「ただの脳天気な子供時代を表しただけの3行になってるじゃないですか!!
  クッキング、まったく関係無い!!」

 「じゃあ、作らない。
  持たない。
  持ち込ませない。とかどうよ?」

 「急に非核三原則を言われても」

 あと、最初から作る事を否定した調理講座ってなんなんですか。
 せめて作れよ。





 7月1日 土曜日 「三行抹殺」

 「こういう風に作ればカボチャが崩れないの。分かったかしら?」

 「はい! わかりました師匠!!」

 「……」

 お母さんがガチャピンに料理の作り方を教えています。
 なんでこんな事になったのかもはや思い出したくも無いですが、とにかく随分と時間を取られてしまいました。
 こんな事している暇なんて無いはずなのに。早く冥王星に行かないと、ウサギさんたちがどうなっているかわかんないっていうのに。
 そんな私の願いを無視する形で、お母さんはガチャピンさんにカボチャの煮込みの作り方を教えていました。
 というか、月見うどんの作り方を教えていたんじゃないんですか?

 「ねえお母さん……さっさと出発しようよぉ。こんな事してる場合じゃないでしょう?」

 「おっと……。確かにそうね。ついついガチャピンさんに料理の作り方を教えるのが面白くてカボチャの煮付けまで教えちゃったわ。
  あやうく生け作りまで教えてしまいそうだった」

 「お母さんできないじゃん。生け作り」

 「ものの喩えよ」

 どういう喩えだ。



 「ありがとうございました! これで本当に宇宙一うどんを作るのが上手いガチャピンになれました!!」

 規模が広いんだか狭いんだか分からないなソレ。

 「ふふふ……でもこの程度で満足してはダメよ? 常に精進を心がけなさい」

 「はいっ! 分かりました!!」

 まったく……妙に師匠風吹かせるんじゃないですよ。
 うざったいというか、すごくかっこ悪く見える。身内として。

 「お母さん……そんなガチャピンと仲良くなってもしょうがないでしょう。
  一応敵なんですから」

 「あ。そっか。そう言えば彼、敵だったのね?」

 「お母さん……しっかりしてよ本当に」

 「じゃあしっかりする事にして、悪ッ!
  即ッ!!
  斬ッ!!!」

 「ぎゃー!!!」

 「お母さーん!!??」

 いきなりガチャピンさんに向かって切りかかるお母さん。なんて不意打ちっぷりでしょうか。酷いにも程があります。
 それに昨日のノリで三行で倒さなくても。

 「よし! これでこの星のガチャピンは全て駆逐したわ!! いざ、冥王星へ向かいましょう!!」

 「こんなにもあっさり倒せるのならもうちょっと早く頑張れば良いのに……」

 「でもほら、よく言うじゃない。急がば回れって」

 「回りすぎでしょお母さん。トリプルアクセル何回決めてるんですか」

 「なにはともあれ、いざ冥王星へ出発よ!!」

 「おーっ!!!」

 ようやく、私たちの宇宙旅行が本筋に戻り始めました。








 「でもあれだね。お腹すいたからさ、宇宙ピザでも食べていこうか?」

 「また寄り道するつもりなんですかお母さん!!??」

 あんた、本当に冥王星行く気あるのか?









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