7月9日 日曜日 「地球の危機」

 「お母さんお母さんお母さん!! 大変ですよ!!」

 「どうしたのよ千夏……? 慣れない長旅で疲れているんだからさあ、ちょっとは休ませて欲しいのだけど?」

 「私たちに休んでいる時間なんてないですよお母さん!! 本当に大変な事が起こっているんだから!!」

 「大変な事ねえ……。もしかして家の冷蔵庫の中に置いてきた食品の事が今さら気に成りだしたとか?」

 「うっ……確かに帰宅した時にあまり開けたくないなあとは思いますけど……じゃなくて!!
  そんな食品が発酵とかどうでも良い大変さじゃありませんよ!!
  この海賊船、地球に向かっているんですよ!!」

 「あらま。ちょっと予定よりも早い帰宅?」

 「ええ……なんだか地球滅亡も予定より早まりそうです」

 「それは困ったわね……本当にどしたものかしら」

 「早くこの海賊たちを止めないと!! そうしないと、地球の歴史が終っちゃいます!!
  彼らの暴虐の限り、見ていたでしょう!? 普通に星とか消し飛ばしちゃうんですよ!!??」

 「ふふふ……千夏、安心しなさいな。そんな簡単に私たちの地球がやられると思っているの?」

 「な、何か地球側に対策でもあるというのですか……?」

 「こういうピンチの時には…………きっとアメリカの人達がなんとかしてくれるわ!!」

 「どこのハリウッド映画的な願いだよそれは!! 現実では無理だからねっ!! あるわけないでしょ!!」

 「でも隕石とか爆発させてんのよ?」

 「そんな事言ったら日本は原爆で怪獣作ってるじゃねえか。
  まあそんな事はどうでもよくて……このままだと地球が本当に終っちゃいますよぉ……」

 「……どうやら、私たちがどうにかするしか無いようね」

 「ようやくそこに行き着いてくれましたか……」

 なんて手間のかかる人なんだ。本当に。

 「よし!! 私たちが内部からこの船を破壊しましょう!! そうして地球に辿り着けなくするの!!」

 「でも大丈夫ですかねえ……? もし海賊にでもばれちゃったりしたら……」

 「大丈夫よ。首が体から巣立つだけだから」

 「首チョンパですか!!??」

 「自立と言います」

 勝手に自立してもらっても困るわ。首が。

 「で、でもですね、この船を内部から破壊って言ってもどうやれば……」

 「いくらこれだけ大きい船だからと言っても、エンジンが止まってしまえば何にも出来ないわ。
  エンジンを狙うのよ。そこが弱点」

 「な、なるほど……。確かにそうですね……」

 おおう……。今日のお母さんはちょっと冴えてるかも。
 これは少しは頼りになるかもしれません……。

 「そ、それでですね……エンジンを壊すには一体どうやれば……」

 「爆薬を使うのよ」

 「ば、爆薬ですか!? そんなの持ってるの!?」

 「何を言ってるのよ千夏……。あなた、自分がどこに居るか知っているの?」

 「……そうかっ! 魚雷室!!」

 「ええ。その通り。爆薬なら吐いて捨てる程あるわ」

 「す、すごいですよお母さん……。今日は頭が冴えまくりです」

 一体どうしたというのでしょうか? まさか何か変な物でも食べたとか?
 ……ダメですね。凄い事をしているはずのお母さんを何故か疑っちゃってます。

 「ただ少し残念なのは……」

 「え? どうかしたんですか?」











 「さっき私がここら一体の火薬に、水をぶちまけてしけらせてしまった事かしら」

 「何してんですかあんた!!??」

 「いやね、この水差しを使ってどじっ娘メイドごっこを……」

 「やっぱりバカだ!! この人、本当にバカだ!!!!」

 どうしてくれるんだお母さん。






 7月10日 月曜日 「お母さんのいつもの作戦」

 「とりあえずこのネジ外してみようか? もしかしたら何かしらの貴重な部品で、この宇宙船壊れちゃうかも」

 「お母さん。もう良いですから。そんなネジ一本でどうにかなるような船じゃないから」

 今まさに地球を滅ぼさんとしている宇宙海賊船に乗っている私たち。
 地球が壊されてしまってはすんごく困りますのでどうにか止めようといろいろ考えてみたのですが……
 お母さんが爆薬に水をぶっかけてくれたおかげでこの船の破壊が非常に困難になってしまいました。
 どう責任とってくれるつもりだお母さん。



 「よし! 海賊たちの食事にいっぱい塩を入れてやろう! そうすればいずれ腎臓病となって……」

 「そんな気の長い攻め方がどこにありますか。ちんたらやっている間に地球が滅んじゃうよ」

 「例え塩であったとしても、3キロぐらい喰わせてやればきっと相手は死に至るわ」

 どんな食べ物でも3キロ食べさせたら結構酷い事になると思いますけどね。
 塩とか関係なしに。

 「お母さんさ……真面目にやる気あるの? もしかして地球なんて滅んでも構わないと思ってるんじゃないの?」

 「なっ、失礼な!! なんで私がそんな終末的な思考してないといけないのよ!!」

 「でもお母さん程のダメ人間なら自分さえ助かれば人類なんてどうなったって構わないと思っていそうですし……」

 「あなたね、自分の親をなんだと思っているのよ」

 だからダメ人間だと言っているじゃないですか。




 「仕方ないわね……こうなったらこの腕力でやってしまう他ないわ」

 「腕力って言いましても、相手は海賊ですよ?
  いくらお母さんがおばあちゃんの手足を持っているからと言っても、ただじゃ済まないんじゃ……」

 「大丈夫。ちゃんと策ならあるわ」

 「その策とは?」

 「まず千夏が彼らの注意を……」

 「またお得意な囮作戦ですか!?
  てめえの脳みそはそれしか出てこないのかよ!!」

 最近の将棋ゲームのコンピューターだって、もうちょっとマシな作戦を立てますよ。




 7月11日 火曜日 「魚雷の人」

 私たちがいつもどおりぐだぐだやっている間、まさに滅亡のカウントダウンが絶賛爆進中だった地球。
 このままぐだぐだやっている間に滅んでもらっても困るので、さっさと宇宙海賊どもを縛り上げる事にしました。


 「だけど問題はどうやって縛り上げるかという事なんですよね……」

 「だからさ、千夏が彼らの前に躍り出てね……」

 「うっさいですよお母さん。ちょっと黙っていてください」

 むむむ……本当にどうしましょうか?


 「……そこの人。どうやらお困りの様子ですね……」

 「え!? だ、誰か居るんですか!?」

 まさか私たちの他に誰かこの魚雷室に居たなんて……くそっ! 抜かりましたよ!!

 「どこに居るんですか! 出てきなさい!!」

 「出ていきたいのは山々なんですが……残念な事に私たちは縛られていて身動きが取れないのです」

 「縛られていて……? なるほど!! つまりそういうプレイ中なのね!?」

 お母さん。なんか突拍子もない方向で納得しないでください。

 「……あれ? この人の声、魚雷管の中から聞こえる……?
  もしかして、魚雷が喋っているのですか!?」

 「そんなわけ無いじゃない千夏。喋る魚雷なんて宇宙中探しても見つからないわよ」

 それもそうですね。
 割と喋る無機物との接点が多い私は、自分の価値観で物を喋ってしまいましたよ。
 それにしても、全宇宙を探しても喋る魚雷は無いのですか。私の周りが奇特すぎるだけかもしれませんが、何となく宇宙がちっさく思えます。

 「でもそれならなんで魚雷の方から声が……」

 「きっと魚雷の中に人が詰め込まれているのよ。そうでしょう?」

 「ええ。あなたの言うとおりです……」

 「魚雷に人が詰め込まれてる!? なんでそんな事に!?
  何かの罰ゲーム!?」

 「えらくエキセントリックな罰ゲームね。
  そんなわけ無いじゃない」

 いや、でもあの海賊たちならやりかねないじゃないですか……。

 「あの、なんであなたは魚雷の中なんかに入っているんですか? そういう趣味の人?」

 「なんの趣味ですかそれは。
  実は私……爆弾星人なんですっ!!」

 「な、なんですってー!?
  人間ひとりひとりがそのまま爆弾のような性質を持ち、成人男性ぐらいの爆弾星人が起爆すれば星ひとつ全ての物質が素粒子にまで分解されるほどの爆発力を持つという、あの爆弾星人!?」

 「そんな奴がこの宇宙には存在してるんだ!?」

 やっぱり宇宙は広いなあ。
 というかお母さん、妙に宇宙の事について詳しいよね。
 一般常識については疎い癖に。





 7月12日 水曜日 「繊細な爆弾」

 「えーっと人間爆弾さん……」

 「人間爆弾じゃないです。爆弾星人です」

 「そんなのどっちでも構わないじゃないですか。みみっちい……もがっ!?」

 何を思ったのか、お母さんが私の口を塞いできます。
 マジでトチ狂ったんですかこの人?

 「ぷはぁっ! 何するんですかお母さん!!」

 「千夏! この人に酷い事を言ったらダメ!!」

 「酷い事? 私はただ彼がみみっちいなあと思っただけで……」

 「はいダメー。そういう一言が他人を傷つけるんですー。
  千夏はもうちょっと他人の事を考えてくださいー」

 うわー。何か腹立つなこの人。

 「あのね千夏。ここだけの話なんだけど……あの爆弾星人さんたちは、些細な傷で爆発しちゃうのよ。
  擦り傷だろうが、心の傷だろうがね」

 「すげえ生きづらい仕様してますねそれ。
  というか心が傷ついても爆発するのかよ」

 「ええ。だから彼ら爆弾星人は有史以来その住処を点々としている放浪民族なの。
  住んできた星がことごとく爆発によって消えたのだからね」

 「まさに惑星デストロイヤーですね。
  そんな繊細で危険な方々とは友達にはなれないわ」

 「だからね、くれぐれも言葉使いには気をつけなさい。
  ただでさえ千夏は毒舌なんだから、もし彼らを傷つけるような事を言っちゃったりしたら……」

 それはあまり想像したくない展開ですねえ。
 分かりました。彼らを傷つけ無いように気をつけます。




 「え、えーっと爆弾星人さん」

 「なんですか?」

 「何故あなたはそんな魚雷の中なんかに?」

 「実は私たち、海賊の奴らに捕まえられまして、このように爆薬の代わりにされているのです」

 「ああ、なるほど……。爆薬の代わりなんですか。
  それはまた酷い事をしますね」

 「ええ……しかしこの宇宙では平然と行われている事なのですよ。
  どこの国だって爆弾星人のひとりやふたり、保有してるんです!!」

 そんな核兵器のように言わなくても。
 いや、威力だけを見るなら核兵器なんて足元にも及ばないみたいですけど。

 「私はすごく悔しいっ!! ただ爆弾星人として生まれただけでこのような扱いを受けるだなんて!!
  私の人生はいったいなんだと言うんだ!!」

 「うん……まあその悔しさは分かりますよ。私も地球ではすっごくイジメられてたし。
  というか人生が神様からイジメられてるような運命だし。そういう悔しさは分かります」

 「だから私、決めたんですよ。今ここで……口の中に出来ちゃった口内炎を思いっきり噛んでやるってね!!」

 「……それに何の意味が……?」

 「バカ千夏っ!! 彼は爆弾星人なのよ!?
  そんな想像しただけでのたうち回りそうな痛みを受けたら、最大の威力で爆発してしまうわ!!」

 「あっ、そうか! そうだった!!」

 私たちが居ない時ならまだしも、こんな近くで爆発するのはやめてください。
 えーっと、なにか自爆を食い止めるような説得の言葉は……えーっと。


 「あ、明日! 笑っていいともで、タモリさんが美味しいチャーハンの作り方教えてくれるんですって!!」

 しまった。死を思いとどまらせるにはあまりにも地味すぎる嘘だった。
 しかもその内容はどちらかと言えば増刊号向きだ。

 「……マジで?」

 「ってあれー!? なんか逆に興味津々!?」

 すごいなタモさんパワー。



 7月13日 木曜日 「宇宙で一番危ない人質」

 「ねえ千夏千夏。良いこと考えたんだけど聞いてくれない?」

 「なんですかお母さん……? 私は今、この爆弾星人を自爆させないようになだめている最中なんですが?
  これ以上私の精神を削り取るつもりならば迷わず斬りますけど?」

 爆弾星人が爆発する前に、気を使いすぎた私の脳みそが爆発しそうですよ。

 「あのねあのね、私たち、この宇宙船を止めないといけないじゃない?」

 「ええ、まあそうですねえ。このままだと地球が滅ぼされちゃいますし」

 「だからさ、その爆弾星人を爆発させたら良いんじゃないかしら?」

 「なーるほど。それなら海賊たちの船も消しされますし言うことなしですね。
  ……ってバカ!! そんな事したら私たちまで巻き込まれて昇天じゃないですか!!
  しかもそんな非人道的行いが許されるわけないし!!」

 「良い千夏? 大切なのは許されるか許されないかでは無いわ。
  行うか、行わないかなのよ」

 「そんな残酷な発言をさらりと言ってのけられても困りますよ!!」

 「まあとにかく、私たちにとってはチャンスなのよ。
  こうやって無駄な時間を過ごしている間にも、この海賊船は地球へと近づいているのだから」

 「まあそれはそうですけど、だからって爆弾さんをわざと自爆させるなんて……」

 「どうせ自暴自棄で爆発しそうだったんだしさ、そんな気に病む事無いって」

 「…………でもやっぱりダメです!
  自分たちのために誰かの死を願うなんて間違ってます!
  あっちゃあいけない事ですよ!!」

 「じゃあいったいどうするって言うのよ。このまま指をくわえて地球が滅ぶのを見てろって?」

 「ええっとそうですね……そうだ!! この爆弾星人さんたちを人質にして海賊たちを脅すんです!!
  船を止めなきゃ爆発させるぞ! ってね!!
  いくら海賊たちでも宇宙最強の爆弾を前にすれば怖じ気づきますよ!!」

 「なるほど……それは確かに良さげな作戦ね。
  よし! やってやろうじゃない!!」

 こうして私たちは、地球を救うための作戦を開始したのでした。




 「それであの、爆弾星人さん。私たちのために人質の役をやってほしいのですけど……」

 「嫌です。だってなんだか面倒そうだし。危険そうだし」

 「このっ……」

 くっ。我慢我慢。
 機嫌を損ねてしまったら協力してもらえないどころか爆発しやがりますしね。
 ここはひたすら耐えて説得を……。



 7月14日 金曜日 「魚雷から出る希望」

 「ほらさ、爆弾星人って海賊さんに捕まってからずっとこの魚雷の中なんでしょう?
  そろそろ外に出ても良いんじゃないですかねえ?」

 「えー? なんだかこの中も気に入ってるしなあ」

 そういう扱いが嫌だから口内炎を噛んで自爆しようとしたんじゃないのかよ。
 もう初心を忘却か。

 …………と怒ってやりたいのは山々なんですが、たったひとつしかない命をこんな形で失いたくはありません。
 ただひたすらここは我慢なのです。


 「きっと外の世界は楽しいですよ。だから私と一緒に外の世界へと歩み出しましょう!」

 「外の世界ねえ……なんだかそれって怖そうだから嫌だなあ」

 「怖そうって……決してそんな事ありませんって!」

 「そう言われてもなー。やっぱりなんか嫌だなー」

 「くっ……コイツ……」

 なんて引きこもり気質な宇宙人なんですか。
 私も割とその傾向はある人だけど、ここまで酷くはないです。
なんだか見ているだけで腹立つなあ……。



 「お母さん、どうしようか……?
  全然出てきてくれませんよ」

 「もう、千夏ったら引きこもりの扱いが下手ねえ。
  そんなんじゃあいつまで経っても出てきてくれないわよ」

 「別に引きこもりの扱いなんて得意にならなくて良いよ」

 「まあ私の技を見てなさい千夏……。
  そう、まるで北風と太陽の太陽のように軽やかにその魚雷の中から出させてやるわ!!」

 なんでそんな自信満々なんだか。
 まあお手並み拝見といきましょうかね?


 「ねえ爆弾星人さん。なんで外に出てこないのかしら?」

 「なんでって……そりゃあ外の世界は危険でいっぱいだからに決まっているじゃない。
  世界は不幸に満ち溢れているし、海賊の奴らみたいのもいる。だから出ないのさ……」

 「……そう。あなたの言うとおりよ。確かにこの世には目を覆いたくなるような悲劇に溢れている!
  だけど、そんな世の中でも生きていこうと思える希望が確かにあるのよ!!」

 「……例えば?」

 「えーっと……うだつの上がらない、ちょっと自分に自信の無い男の家に天使やなんかが降ってきたり……」

 「そんなちょっと古い感じのラブコメ出来事が起こるわけ無いでしょうが。
  というかそんな事がまかり通る世の中ならば、日本には天使やなんかが溢れかえっていると思いますよ」

 うだつの上がらない、ちょっと自分に自信の無い男どもが溢れていると思うから。

 「だから! 希望を持って!!」

 「さっきので希望を持てと言われてもこまるでしょうに……」

 「うん! 俺、ちょっと頑張ってみるよ!!」

 「えー!!?? そんな形の希望で良いのー!!?? そういうのでやる気になっちゃう世代なのー!!??」

 だからうだつも上がらないし自分に自信も持てないし明確な趣味が無いから貯金ばっかりしてるような独身貴族になるんですよ。
 あれ? ちょっと増えちゃった?



 7月15日 土曜日 「なんかもうダメだったらしい」

 「おらおらおらー!! 道を開けねえか!!! ここにおられる方をどなたと心得る!!
  家庭内暴力当たり前の爆弾星人さまだぞ!!」

 うわぁ……それは嫌な感じに爆発しちゃってる人ですねぇ。
 出来るだけ関わりになりたくない人種だよ。

 「な、何をしているんだお前たち!! そんなあまりにも危なすぎる奴を連れて!!」

 「あら、ちょうど良いところに海賊の手下さんが。
  いい? このちょっとぶちきれちゃってる感じの爆弾星人を自爆させたくなければ、私たちをこの船のブリッジまで連れて行きなさい!!」

 「わ、分かった!! だから爆弾星人に学生の頃書いた小説をちらつかせるな!!
  そんなものを見たら自分の痛々しさに傷ついて爆発してしまうじゃないか!!」

 本当に繊細な事で爆発するんですね。まあ確かに爆発するほど恥ずかしいかもしれないけども……。

 「ほら! さっさと連れて行きなさい!!」

 「わ、分かった……」

 「ふふふ……ここまでは順調ね千夏」

 「ええ、そうですね。まさかこうもすんなり行くとは……作戦の立案者の私としてもびっくりですよ」

 「なんにせよこのままの調子でこの船を乗っ取ってしまいましょう!!
  そして冥王星まで一気に行くわよ!!」

 う〜ん……あまりにも順調すぎてちょっと怖いですねえ。





 「こ、ここがブリッジです……」

 「よし! おいそこらに居るもの!! おかしなマネするんじゃないぞー!! 下手な真似したら爆発させるからなー!!」

 「ああん? なんだお前ら? 例のご客人じゃねえか……。そんな奴連れて何を……」

 「今からこの船の識見は私たちの物だ!! 異存は無いな!? ある奴はこの爆弾星人の前に出て見やがれ!!」

 うわー。すごい爆弾を持ってるからってそんなに強気になっちゃって。
 ちょっと調子に乗りすぎだと思います。

 「へぇ……面白い事やってんじゃんかよ。あんたつまり、死ぬ覚悟が出来てるって事だよな?
  爆弾をちらつかせて脅迫するって事はよ」

 なにやら海賊の頭らしき人がお母さんの前に立ちはだかります。
 うわ……これはもしかしてちょっとやばい雰囲気?

 「ええ。もちろん死ぬ覚悟ぐらい出来ているわ。ここでこの爆弾星人を爆発させれば、地球を救えるわ。
  まあ冥王星には行けなくっちゃうから、いずれ宇宙は滅びさるのでしょうけど」

 「ふぅん。じゃああんまりかわらねえな。あんたのやってる事は無駄になる」

 「無駄と言うわけではないでしょう。少なくとも地球に居る能天気な奴らには、思い出作りの時間が出来るわ」

 「ほう。他人のために死ぬのか。反吐が出るほど素晴らしい心意気だな」

 「ああ、そうだろ? しかし誰もが使って居そうなそのちんけな心意気の特別な所はさ、私は本気でやっちまおうと考えているという事だよ」

 「しかし残念だな」

 「何が?」

 「実はもう、地球についてたりするからな。お前の自爆劇が見れなくて残念だ。
  今ここで爆発させるとお前の星まで吹っ飛ぶぜ?」

 「…………あっらー」

 あれ? もしかして、もう手遅れだったりします?








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