9月10日 日曜日 「コンビニ冥王星支店」


 「はあ……お腹空いたなあ。ご飯食べたいなあ」

 お風呂に入れたのはいいのですが、もうそろそろ体のいろんな所が限界です。
 もうこれはダメかもしれませんね。木星より広大なお城の中で死んでしまうかもしれませんね。
 ……なんて意味不明な最期ですか。私の墓になんて刻まれるんですか。変なのは嫌ですよ。


 「千夏さん千夏さん。どーしたんですか?」

 「いやね、ちょっとばかりお腹が空きまして……今なら吉野家の牛丼を企業倫理だなんだのと文句言わずに食べる事が出来るのですよ。
  それくらい、お腹が空いているんです」

 「なんだか喩えはよく分かりませんでしたけど、千夏さんの状況は分かりました。
  じゃああちらでなにか食べていきましょうか?」

 「へ? あちらって……」

 「コンビニですよ」

 メイドさんが指し示す先にあるのは、間違いなくコンビニ。
 そう、今の世ならばどこかしこにだって存在しているコンビニなのです。
 知らなかった……最近のコンビニって、お城の中にもあるんだ……?



 「ってなんでコンビニ!? なんでコンビニがこんな所にあるの!?」

 「木星並みに広大ですから、コンビニとかなくちゃ大変でしょう?」

 「その論理はよく分かりませんでしたけど、とにかくやりましたよ!!
  あのコンビニの店員に助けを求めれば良いんですよ!! これで全部解決です!」

 「残念ながらそうはいかないかと……」

 「おーい! コンビニの店員さーん!!
  ヘルプミー!!」

 私はコンビニという希望が見えた事が嬉しくて、メイドさんのお話しを聞かずにコンビニへと駆け出してしまいました。
 しかしながら悲しい事に、メイドさんの言葉の意味は店内に入ってすぐに理解してしまいました。


 「店員さん店員さん! ……ってアレ? 誰も……いない?」

 「もう、だからダメだって言ったじゃないですか。
  このお城の中のコンビニはですね、無人コンビニなんですよ」

 「無人コンビニ!? それってどうやって経営してるの!?」

 「ほら、よく田舎のあたりにあるじゃないですか。
  畑で穫れた野菜を道端の机にでも置いといて、自由に取っていっていいからお金を置いて行ってみたいな奴。
  まさにそれなのです」

 「人の善意の上に成り立っているコンビニがあったとは!!」

 なんだかすごい所ですね。このお城は。



 9月11日 月曜日 「メイドさんの正体」


 「とうりゃあああ!!」

 遭難しているはずなのに、何故かお風呂とご飯に普通にありつけた私たちは、また張り切って壁をぶち破り始めたのでした。
 相変わらずメイドさんは何一つ手伝ってくれませんけど。
 もういいよ。協力なんて諦めた。



 「それにしても……不思議ですねえ」

 「え? 何が不思議なんですか千夏さん」

 「いや、ほら……今さっき壁をぶち破って踏み込んだこの部屋、とても部屋だとは思えないじゃないですか。
  一面砂漠だし、あまりにも広すぎて向こう側の壁を視認できないですし」

 ……っていうか今度はどこまで続いているか分からない砂漠を歩いていかなくちゃならないんですか?
 普通に絶望するんですけど。



 「ふっふっふっ。木星並みの広さを舐めてはいけませんよ。
  なんて言ったって木星は、太陽系の中で一番大きな惑星なのですからね。
  桁が違うのですよ桁が」

 「なんでそれを誇らしげに言うんだよ。
  私たちが遭難しているのは間違いなくその無駄な大きさのせいなのに」

 「うふ、うふふ♪ うふふふふふ♪♪♪」

 「ちょ……大丈夫ですかメイドさん!? ついに壊れちゃった!?
  やっぱり極限状態が続いたから!?」

 「あーっはっはっはっはっはっは!!!!
  引っかかったな千夏め!! 私に導かれるままこの空間に足を踏み入れるとは……愚か者め!!」

 「め、メイドさん!? ってその声は……まさか大妖怪さん!?」

 「その通り!! 3丁目のよっちゃんで有名な大妖怪さまだ!!
  お前をここに連れ込むために、姿を変えていたのさ!!」

 「だ、騙すなんて卑怯ですよ!!」

 こんな時にどうでも良いことを気にしちゃうのですが、やけに地域に密着してそうな二つ名を貰いましたね。
 人間社会に馴染むなよ。妖怪のくせに。



 「ふふふ……覚悟しな千夏よ。ここがお前の墓場になるのだ!!」

 「そ、そんな! 一度は改心したはずじゃないですかよっちゃん!! 師匠にほら、閉じ込められて!!」

 「改心だと? あんなもの、空舞破天流を盗むための出任せだ!!」

 「ああ……マジで利用されただけの師匠が可哀想だ」

 「人の事を憐れんでいる場合ではないぞ千夏。
  なにせ私は、この砂漠では本来の力を十二分に発揮できるのだからな!!」

 「さ、砂漠で本来の力を!? なにかそういう特殊能力でもあるというのですか!?」

 「くくく……なにせ私はこの砂漠では……」

 「こ、この砂漠では?」

 いったい、どんな秘密が……





 「湿気を気にしなくていいからな!!」

 「えー!? そういう体質的な理由!? というかあなた湿気に弱かったの!?」

 「ああ。だから日本では本当に大変だった」

 せんべいみたいな奴だな。




 9月12日 火曜日 「地獄への配送」


 「ははははははは!! 覚悟しろ千夏よ!! 今からお前を八つ裂きにしてやって、ダンボールにつめて地獄に送りつけてやる!!」

 「ひー! そういう配送方法はやめて欲しいですよー!! 何便!? 何便で送る気なの!?」

 「ふはははは!! 愚問だな!! もちろんクロネコヤマトに決まっているではないか!!」

 そういう決まりがあったのですか。初めて知った。
 というかクロネコヤマトはそんなサービス請け負っていないと思いますよ。

 「まあこのまま一気にねじ切ってやるのはさすがに可愛そうだな。
  よし、じゃあお前にひとつ選ばせてやろう」

 「え……もしかして助けてくれるとか?」

 「ははははは、まさか。そんなわけないだろう。
  お前が選べるのは、時間帯指定のみだ!!」

 「配達のか!? 地獄への配達の時間だけ選べるのか!? いらねえよそんなの!!」

 まあどうせならあと10年近く待って欲しいのですがね。
 さすがに大人になる前に地獄に行ってしまうのは嫌だ。



 「くっ……でも負けませんよ!! ようやくここまで、黒い星の民までたどり着いたんです!!
  こんなところで全てを終わらせるわけにはいかない!!」

 「ふふふふ……そういうセリフ、お前の仲間も言ってたっけなぁ」

 「仲間って……もしかしてウサギさんたちの事ですか!? ウサギさんたちもここに来ていたの!?」

 「ああ! 私が全員、葬ってやったけどな!!」

 「そ、そんな……」

 まさかせんべいみたいな奴にみんなやられてしまったというのですか?
 水かけたら倒せそうなのに。それなのに。

 「……そういう事を聞いちゃったら、もう逃げる気も起きませんね……。
  久しぶりに私も本気になってやろうじゃないですか」

 「ほほう……面白いこと言うじゃないか。そのお前の本気、見せてみろ!!」

 相変わらずな悪人のノリな大妖怪さん。かなりこの状況を楽しんでいるようです。
 なんか腹立つ。



 「よし! じゃあさっそく勝負しましょうじゃないですか!!」

 「こっちはいつでもいいぜ!! 思いっきり殺しあおうじゃないか!!」

 殴りあいたいのは山々ですが……真正面から闘って勝てるとは思いません。
 いくら怒り心頭な私でも、そういった判断を間違えるような冷静さは欠いてはいません!
 だからここは……



 「よし! じゃあ人生ゲームで勝負しましょうか!!」

 「え? 嫌だけど?」

 あ。あっさり断られた。もうちょっと何か言われると思ったのに。
 そしたら私の交渉能力でいろいろごまかしてやろうと思ったのに。

 「じゃ、じゃあ将棋で勝負しましょうか?」

 「嫌」

 「オマケしてマージャンとか」

 「嫌だっての」

 「…………じゃあストU?」

 「やらないってば」

 「もうそれじゃあいったい何が良いって言うの!? あまりわがままばかり言わないでよ!!」

 「いや、だから殴り合いで……」

 「もうそんなわがままばかり言う子とおは遊べません! 私、家に帰ります!!」

 「って待て!! 何勝手に帰ろうとしているんだ!!」

 「……ダメ?」

 「良いと思ったのか?」

 作戦的には良かったと思ったんだけどなぁ……。
 やっぱり闘うしかないのでしょうか。


 9月13日 水曜日 「助っ人」


 「じゃあジャンケンで! ジャンケンで勝敗を決めましょう!!」

 「そんな事認められるか!! 何が悲しくて積年の恨みを晴らすことが出来るこの機会に、ジャンケンで決着をつけなきゃいけないのだ!!」

 「積年の恨み!? そんな、別に私は大妖怪さんに憎まれる事なんてなにひとつも……」

 「無いって言うのか!?」

 「無いと言えば嘘になります」

 「ほれみたことかー!!」

 ううう……まずいですね。このままだと本当に大妖怪さんとガチで殺しあう事になってしまいます。
 そうなるともう絶望。私が勝てるわけがありません。
 戦闘能力の差で言えば、アリとムカデぐらい離れていそうですからね。
 喩えは微妙ですけど。アリだって大群であればムカデにすぐに勝てそうではありますけど。


 「くそう……誰か、誰かこの状況を打破してくれる人は……」

 「ははははは!! お前らの仲間は全員冥界に落ちたと言っただろうに!!
  もう何もかも無駄なのだ!! 大人しく私に殺されろ!!」

 「うううぅ…………私もここまでだと言うのですか」

 さすがに死を覚悟した私。どうせならば酷い恐怖を目の当たりにしたくないと目をつぶりました。
 いつ最期の時が来るのだろうと身体を強張らせて居た時…………おぞましい爆発音と衝撃が、私を襲います。
 まるで、世界が揺れているようでした。

 『ドガアアアアアアアン!!!!!』

 「う、うわぁ!? な、なんの音ですかこれは!?」

 「だ、誰だ!? 私の邪魔をするのは!?」

 ここは広大な砂漠ですが、一応この城の一室であるため、天井というものがきちんとあります。
 そしてその天井が先ほどの爆発音及び衝撃によって砕かれ、私たちのもとへと降り注ぎました。
 運良く私には当たりませんでしたが、直撃したら一発であの世行きでしたよ。





 「ま、まさか誰かが私を助けに……?」

 「そんなバカな!! お前の仲間はみんな私が……ちっ!!
  まあいいさ! 誰であろうとも、またあいつらと同じように殺してやるだけよ!!」

 少し動揺したもののすぐにやる気を出しやがった大妖怪さん。
 そんな彼女の視界に、砂埃に包まれたひとつの人影が現れました。
 この人が私を助けにきてくれた人に違いありません!! いやぁ、世の中には本当のヒーローというものがいるのですねぇ。
 ちょっと感心しちゃいました。世の中捨てたもんじゃありません。

 「誰だ!? 名を名乗れ!! 私の邪魔をする奴は……誰だろうと殺してやる!!」

 「私ですか……? 私の名前は……」

 爆発と共に舞い上がった砂埃が吹き抜ける風によって流され、人影がその全貌を明らかにしました。
 女性である彼女は、着込んだメイド服を風になびかせ、何故かその手にフライパンを持っていたのでした。
 ……………………フライパン?

 「私の名前は、オーノ・妹子です!!」

 「って妹さん、あなただったんですか!!! というかさっきの爆発は何!?」

 「玉子焼き作ろうとしたら爆発してここまで飛んできちゃいました」

 「だからフライパン持ってるの!?」

 というか、ここまで破壊能力のある玉子焼きってなんだ?
 それは本当に卵を焼いたのか?


 9月14日 木曜日 「霊能力」


 昨日までのあらすじ:妖怪に襲われていたら、何故か冥王星探索団の妹さんが助けにきた。ホントなんでだろ?


 「ま、まあこの際助けてくれる人は誰でもいいですよ! 妹さん!! 私をここから連れ出してください!!
  もしくはそこの大妖怪よっちゃんを倒しちゃって!!」

 「……まあいいですよ。ちょうどこの神のフライパンの焼き加減を試したかったですからね」

 「おおっ! なんだか無駄にやる気ですね妹さん!! すっごく頼もしいですよ!!」

 …………でも神のフライパンってなんだ?
  その手に持ってる奴か? それでどうにかなるのか?

 「ふふふ……私も舐められたものだな。たかが神のフライパンを装備しただけで対等であると思われるとは!!」

 よっちゃんの口振りからすると、彼女も神のフライパンについて知識があるみたいですね……。
 っていうか私にはどうしてもただのフライパンにしか見えないのですが?

 「ね、ねえ妹さん。ちょっと質問いいかな?」

 「今の私はただの妹じゃありません。ゴッド妹です」

 「知るかそんなの。
  あのですね、そのフライパンっていったいなんなんですか? もしかして霊験あらたかな力でも秘めているとか?」

 「このフライパンで焼いたものは……」

 「焼いたものは?」

 「油が30パーセントカットされます」

 「そうっすか。びっくりするほどフライパンらしいフライパンだった」

 ……っていうか微妙に欲しいですね。
 そのダイエットに最適なフライパン。



 「でも大丈夫ですか妹さん? そんなフライパンじゃ誰も倒せないんじゃ……」

 「大丈夫です。千夏さんは忘れたんですか? 私は霊能者なのですよ?」

 「そう言えばそうですね。あなたのその霊能力とやらのために、ここで働いていたんですよね。
  すっかり忘れてました」

 思い出したら怒りも湧いてきましたよ。なんだ300万って。

 「じゃああなた方に見せてあげましょう!! 私の持っている26個の霊能力のひとつ!!」

 「26個もあるの!?」

 「ええ。ミスドでいっぱい買い物しましたから」

 「ポイントシールか何かか。お前の霊能力は」

 「霊能力、フライパン殴り発動!!」

 「え? なにそ…………ぎゃあああ!!」

 妙ちくりんな技名に油断した大妖怪さんを、技名そのままにぶん殴る妹さん。
 誰がどう見たってただの鈍器による殴打なのですが?
 どこにも霊能力の類の雰囲気が見えないのですが?

 「さあ! 今のうちに逃げましょう千夏さん!!」

 「あ、あの……霊能力は?」

 「本当は口から出任せという霊能力を使ったのでした」

 「それだって霊能力じゃねえ」

 っていうかあなたのために300万貯めようとしていた私が酷く馬鹿っぽいのですが?


 9月15日 金曜日 「妹さんの改心」


 「はあはあはあはあ……つ、疲れたぁ」

 「ほら千夏さん! 休んでいる場合ですか!! 早く走って!!」

 「そう言われてもですねぇ……マジで死にそう」

 妹さんの霊能力…………という名の力技によって、なんとか大妖怪の元から逃げ出す事が出来た私。
 しかしながら今度はあいつに追いつかれないためにこのお城の中を走り続ける事になってしまいました。
 うっひゃー。これはきつい。普段運動不足の人間を走らせる事を、どうか法律で禁じてください。
 死活問題なので。


 「はあはあはあ…………そ、それにしても、妹さんはすごいですね……。
  これだけの距離を走りながら、汗一つ掻いていないだなんて……」

 「これも霊能力です」

 「便利にも程があるな。霊能力。
  ぜひとも欲しいよ。そういうのだったら」

 「毎日10キロ程マラソンすれば身につきますよ」

 「それは霊能力じゃなくてただの努力だ。
  っていうかなんでそんなに走っているんですか……」

 「健康のために」

 「あらまた素敵な心がけで」

 「大丈夫ですか? まだ走れます?」

 「いえ……無理っぽいです。ちょっと休ませてください」

 「まったくもう……追いつかれたらどうなるかわかってますか? ばりばりもぐもぐって、食べられてしまうんですよ?」

 「そんな風に脅されてももうダメです。休ませてください」

 「はぁ。仕方ないなぁ」

 妹さんは呆れ顔で地面に座り込んでいる私の隣に座りました。
 どうやら彼女も休んでくれるらしいです。



 「千夏さん……なんだかよくわかりませんが、あなたはあの人たちと戦っているのですね。
  なんだかすごく崇高な使命を持って」

 「崇高かどうかは本当に微妙な感じなんですけど、まあ確かにあいつらを倒さないと世界が終わってしまうんです。
  それが嫌だから、仕方なしに闘っているんです。
  まあさっきはマジで返り討ちにされそうだったけど」

 「…………わかりました! 私もその戦い、参加しましょう!! あなたの力になります!!」

 「え!? それは本当ですか妹さん!? 私のために戦っても、なんの得も無いんですよ!?」

 「得が無いなんてそんな事ありませんよ。世界の危機は、私の危機でもあるのです」

 「妹さん…………ごめんなさい。ずっとあなたの事、誤解していました。
  てっきりアホでグズで間抜けで最悪の人間だとばかり思って……」

 「うふふ。いいんですよ千夏さん。誰にだって誤解ぐらい…………ごぶはっ!!」

 「ちょ、ええー!? 大丈夫ですか妹さん!? 口から血が出ちゃってますけど!?」

 「ご、ごめんなさい千夏さん……。慣れないことするから、胃に穴が……」

 「早いっ! 穴開くの早すぎ!!」

 やっぱり心底アホでグズで間抜けで最悪の人間だったのですね。
 使いものにならねー。



 9月16日 土曜日 「激走、作戦会議」


 「ぐふ、げほげほっ!! はあはあ……とにかく、早くこのお城から出ましょう千夏さん」

 「……そのダメージはなんですか妹さん?」

 「昨日胃に開いた穴が……」

 「そこまで引きずる程の傷だったのか!? 何ストレスひとつで死に掛けているんだよ!!」

 「怖いよね、ストレスって」

 「私に協力すると口走ったぐらいで負荷がかかるお前の心が怖いわ」

 「えっと……確か出口はこっちの方向だと思います」

 「あれ? もしかして妹さん、この城の道を知っているの?」

 「もちろんですとも!! これが私の霊能力です!!」

 「また霊能力か」

 「あ……信じてませんね千夏さん。この霊能力は本物なのですよ」

 「へぇ……」

 「この能力があったからこそ、千夏さんを見つける事が出来たんですよ!?
  もう、信じて欲しいですね!!」

 「いや、確か妹さんは玉子焼きを作っていたときに爆発で私の所まで飛ばされたんじゃなかったんですか?」

 「……じゃあそれも計算の内って事で」

 「信じません。絶対に信じませんからね」

 「とにかく脱出路はこちらで間違いないはずです。こればかりは自信を持って言いますもの」

 「その妙な自信はどこから?」

 「爆発で飛ばされる時にこっそり撒いておいたお米が、通路に落ちているからです」

 「すごく余裕な感じで飛ばされてきたんですね。妹さん」

 その落ち着きっぷりはどうなんだ。




 「てめえこのやろー!!! よくも逃げやがったなー!!!」

 「う、うわー!! 後ろからすごい形相のよっちゃんが!? 大妖怪が走ってきますよ!!」

 「くっ……たかが頭をフライパンでフルスイングしてやっただけなのになんとケツの穴のちいさい……」

 「いや、普通の人ならその霊能力フルスイングは怒るけどね。割とマジで」

 「とにかく今は逃げましょう! そして走りながら、どうにか撃退する方法を考えるのです!!
  ほら、よくホラー映画でありそうな展開!!」

 「ほんっとうに余裕あるんですね妹さん! そんな同でも良い事口にしてないで早く逃げますよ!!」

 こうして私たちはひと時の休憩をさっさと切り上げ、また再び走り出したのでした。
 今度は後ろの大妖怪をどうやって倒そうかという議題を持って。


 「そ、そうだ! 大妖怪さん、湿気が嫌いだって言ってましたよ!!」

 「なるほど……つまり私たちの唾をバケツ一杯分になるまで溜めて、それをあいつにぶつけてやるんですね!?」

 「そういう気持ち悪い作戦禁止!! あとそれ、別に大妖怪じゃなくてもダメージ受けるわ!!」

 ダメだ。走りながら妹さんと、作戦を練っても全然良いのが思い浮かばない気がする。








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