9月24日 日曜日 「走馬灯観覧」


 『ちゃらちゃちゃちゃら〜♪
  千夏という少女の一生ダイジェスト〜45分・VHS』

 「……これは何かの悪夢ですか」

 大妖怪さんの攻撃を思いっきり喰らった私は、走馬灯を見ております。
 いや、見せつけられていると言うべきなのでしょうか?
 なんにしてもショックです。私の人生がたかが45分のVHSに収まるなんて。
 というか今どきビデオか? 後生だからせめてDVDに。


 『199×年。日本の越谷という場所に、千夏という少女が誕生しました。
  そう、彼女こそが歩く不幸集積器の異名を持つ女と成長する少女だったのです』

 越谷だったのか。私の出生の地は。知らなかったし、別に知りたくも無かったよ。
 あと、年を妙な所で隠すな。その表記だとまるで核戦争でも起こったかのような世界に思えますから。
 もひとつ付け加えると、その異名はいらない。



 『生まれて間もない千夏ちゃんは、なんにでも興味を持つ好奇心旺盛な子で……』

 なんだか結婚式……というか披露宴で流れそうなほどつまらないビデオですねえ。
 走馬灯ってみんなこんなものなのでしょうか? 是非走馬灯をご覧になった事のある方の意見を聞きたいです。

 『そんなこんなで千夏ちゃんは小学生になりました』

 「いきなり飛んだなオイ」

 私の半生がそんなこんなでで済ませられてしまいました。
 まあ確かに特筆すべき事なんて無かった生き方してたけどさ。いくらなんでも酷いじゃないか。

 『順風満帆に人生を歩んでいた千夏ちゃんですが、この小学校で思わぬ障害と出会います。
  その障害とは……イジメ!!』

 ああ……そう言えば私、イジメられていたんでしたね。
 まあ言うなれば人生やら運命やら全部にイジメられていた気がしてましたから、忘れてましたよ。

 『イジメのきっかけはほんの些細なものだったのです。
  そう、千夏ちゃんがちょっとふざけてとある男の子を別件逮捕で監獄に送り込んだばっかりに』

 「そんな出来事が小学校で起こるか」

 そしてそんな刑事モノのハリウッド映画みたいなノリでイジメられてたまるか。

 『そして、千夏ちゃんは短いその人生に幕を下ろしたのでした』

 「ってえー!? すっごくはしょりすぎな気がするんですけど!?
  これじゃ私、生まれていじめられてそして死んだみたいじゃん!!
  さすがにそこまでひどい人生送ってねえよ!!」

 『ぱらぱぱぱぱら〜 制作 冥王星テレビ』

 「冥王星テレビ!? 死ぬほどローカルっぽい局ですね!?」

 というか私はこの走馬灯の作り直しを要求します。
 これじゃあ死ぬにも死に切れない。




 9月25日 月曜日 「死に際」


 「さて千夏さん……あなたは今からとある場所に行かなくてはなりません。
  その意味……お分かりですね?」

 「な、なに言ってるんですかADさん……まるでそんな、死後の世界の案内人みたいな事言っちゃって。
  た、たかが走馬灯ビデオの編集者の癖して!!」

 「いいえ……実は私、走馬灯の編集以外にも、あの世へ向かう人の整列管理もやってるのです。
  ほら、このアトラクションは30分待ちでーすとかやる奴。
  ああいうのです」

 「ほんっとうに雑用係なんだな」

 下積み時代はこんなものなのでしょうか?
 というか、もし下積みが終わったらどんな役職になるんだ。
 やっぱりディレクターなんですか? 冥王星テレビのディレクターになるのですか?



 「さあ、行きましょう千夏さん……。
  もう十分走馬灯は見たでしょう。このままここに留まり続ける事などできないのです」

 「ま、待ってくださいよ!! 全然満足なんてしてない!!
  不満だらけの最後です!!」

 「もうそれだけつっこめば十分でしょうに!!」

 「別に私はツッコミがしたいからこの世に留まっているわけじゃないですよ。
  勝手に人をしょぼい霊にするな」

 「とにかく! もうタイムリミットなんです!! もう、終わりなんですよ!!」

 「そんな事言われても……あまりにも急すぎますよ!!」

 「だって巻きが入ってるからさ!」

 「巻き!? 誰かが展開早くしろって言ってるの!?
  誰だそいつは! ディレクターか!? プロデューサーか!?」

 「じゃあさようなら千夏さ〜ん! あなたの活躍はみんな決して忘れないよ〜」

 「ちょ、ちょっと待てー!! こんなんで人生終われるかあ!!」

 いくらなんでもこういう結末は認められな…………………



 『ゴミとロボとイジメの関係  終劇』





















 「……………ぶはぁっ! し、死にかけたぁ!!」

 全身の力が抜けてあやうく……死ぬってあんなにひどいぐらいに優しく無音なモノなのですか。
 すげえ怖かった。

 「あ、あなた! なんで生き返る事が出来るのですか!?」

 「し、知りませんよそんな事……」

 「……はっ!? もしかしてあなたはあの伝説の、複数の命を持つと言われているあの…………『7つの亀を踏む者』では!?」

 「そんなマリオみたいな命の増やし方してねえ」

 何はともあれ助かった。




 9月26日 火曜日 「復活」


 「……かはあっ! げほげほ……はあ、マジで死にかけた」

 「千夏ちゃん! 良かった、生きてたんだね!?」

 「えっと……玲ちゃん?
  ああ、私、現世に戻ってきたんですね。良かったあ……」

 どうやら私、生き返ることが出来たみたいです。
 まああんなしょぼい走馬灯見せられて死ねるかってんですけどね。なにはともあれ大妖怪さんの攻撃を受けながら蘇生できたのは奇跡です。
 もしくは、カメを踏んだからなのでしょうか? 身に覚えないけど。

 「お前……私の攻撃を喰らっていながら立つとは……面白い!」

 「ああ、お久しぶりですね大妖怪さん。あなたのおかげで楽しい自主制作ビデオを見ることが出来ました。
  一応礼は言っておきます。もう2度と見たくはないけど」

 「ふふふ……やけに余裕の受け答えじゃないか。あの世で私に勝つための秘策でも教えてもらったのかね」

 「まあ、そんな所ですよ」

 「ち、千夏ちゃん、それ本当なの!?」

 「ええそうです! 私は生死をさまよう事によって、玲ちゃんのソウルブローを越えるような必殺技を手に入れたのです!!」

 「……どういう原理で?」

 「えーっとほら、よく漫画だとパワーアップして帰ってくるじゃん。
  その原理で」

 「なるほど」

 納得されちゃったよ。自分で言っておきながらあんまりな理論なのに。



 「ふんっ。まあいいさ! どうせお前はまたあの世に行く事になるんだからな!!
  生き返られたのには驚いたが、また殺してやればいい!!」

 「へーんだ! みすみすまた殺されてやるわけは無いでしょう!! 今度は前みたいには行きませんよ!!」

 睨みあう私と大妖怪さん。割と緊迫した空気が、私たちの間に流れます。
 いつまでもこうしているわけにはいかないので、一気に勝負を決めようかと思います。

 「くらえー! ひっさつ……」

 「なに!? 必殺技!?」

 少しだけひるむ大妖怪さん。その隙を見逃さず、私は技を繰り出します。

 「ねこだましー!!」

 『パチン』

 「ってえー!? 千夏ちゃん!? それが必殺技なの!? あまりにもしょぼすぎ……」

 「さあ行きますよ玲ちゃん! 今のうちに逃げるんです!!」

 「必殺技は!? 必ず殺す技は!? 嘘っぱちに決まっているでしょうが!!」

 そうです。一回死に掛けたぐらいでパワーアップなんて出来るわけがありません。
 こういう所は常識的に考えて欲しいね。



 「で、でも千夏ちゃん……」

 「何グズグズしてるんですか! 早く逃げないと! じゃないとまた大妖怪さんに殺されちゃうよ!!」

 「でも……」

 「あー、もう、なに!? なにか言いたい事でもあるの!?」

 あまりにもグズグズしてるとぶん殴りますよ?

 「妖怪さん…………倒れてるんだけど?」

 「…………え?」

 振り返ってみると、確かに大妖怪さんがあお向けに倒れていました。
 えっと……なんで?

 「ふふ……効いたぜ、お前の鼓膜割り……。まさか音の力を利用して敵を倒すだなんて……さすがだな」

 「おおーい!? なに敵キャラの最後はお前を認めてやるぜ的な事を言ってるの!?
  ねこだましで死ぬ気かてめー!?」

 「でも気をつけるんだな……。この城の中には、私よりも強い妖怪がごまんと…………ガクッ」

 「だ、大妖怪さーん!!??」

 えっと……やっぱりこれって殺人とかになるのかな?
 ねこだましで前科付くのは嫌なんですけど。




 9月27日 水曜日 「埋葬」


 「はやく! 玲ちゃんも手伝ってよ!!」

 「え……でも千夏ちゃん……。いくらなんでもその…………すぐに埋葬しちゃうのはどうかと。大妖怪さんを」

 「昨日の死に方見たでしょ!? あのふざけた感じの!!
  ぜってい生き返るから!! というか死んでないから!! だから今のうちに埋めて本当に死んだ事にしちゃうの!!」

 「それって普通に殺人なんじゃ……」

 「これは殺人とは言いません!! 死体遺棄です!!」

 「どっちにしたって犯罪だ!!」

 冥王星に日本の刑罰が通じるとも思いませんがね。
 とにかく、今のうちに大妖怪さんを始末しないとね。今が本当にチャンスなのです。

 「千夏ちゃん……」

 「もう! 玲ちゃんってば! 口動かさずに手ぇ動かしてよ!!
  ほら、大妖怪さんだってさ、きっとすぐに埋葬してもらいたがっているから!
  だってそうでしょう? そうしないときちんと成仏できないでしょう?」

 「うーん……それはそうかもしれないけど、でもさ、じゃあなんで大妖怪さんの体にグルグルと鎖を巻きつけてるの?」

 「それはですね、お墓の中で寝相が悪いと大変だからですね、こうやってじっとしてもらっているのですよ」

 「じゃあさ、なんでその上から黒い分厚い布を巻いているの?」

 「それはですね、大妖怪さんは実はイスラム教徒だったんですよ。
  だから、死後までその貞淑を守ってあげようかと思って」

 「そうなんだ……。でもさ、やっぱりその黒い布、中が動いているように見え……」

 「だから、急がないといけないんじゃん!!」

 「意識を取り戻した事承知で埋めようとしているんだね千夏ちゃん!?

 ナンノコトヤラ。
 ナンノ、コトヤラ。





 「とりあえずさ、こう穴を掘って、その中に大妖怪さん埋めましょうよ」

 「むーっ。むーっ!」

 「妖怪さん嫌だって言ってますよ……?」

 「もーっ。よっちゃんはワガママだなぁ。ちょっとした砂風呂とか岩盤浴とかそんな感じだって。
  安らかに成仏できるって」

 「ああ……。どうあっても今は妖怪さんが生きているわけじゃないとしたいんだね千夏ちゃん」

 「そうだね。言わばシュレディンガーのネコって感じだね。
  袋の中を開けてみないと、生きているネコか死んでいるネコか確定しないって奴」

 「多分違うと思うよ千夏ちゃん……。それは量子力学の……」

 「うーん。埋めるのが嫌ならやっぱり焼くべきかなあ。ここ、そんなに高温の火を出せそうな環境じゃないしなあ。
  まあ、いざとなれば生焼けのままでいっか」

 「むっー!! むっー!!」

 「千夏ちゃん……妖怪さん、すごく暴れているよ?」

 「ポルターガイストだね。怖い怖い」

 「あくまで霊現象として処理するんだね千夏ちゃん……」

 だから言っているじゃないですか。大妖怪さんは、もう死んだのですと。
 鎖を断ち切られる前にさっさと処理方法を決めましょうよ。



 9月28日 木曜日 「影の暗殺者」


 「えっさ、ほいさ」

 「むーっ! むーっ!!」

 「えっさ、ほいさ。えっさ、ほいさ」

 「むーっ!! むーっ!!!」

 「千夏ちゃん千夏ちゃん……」

 「ふぅ……いい汗掻いた。なんですか玲ちゃん? もしかして麦茶とか持ってきてくれたの?」

 「違うよ千夏ちゃん。何日曜大工的ないい汗掻いちゃってるの…………。
  あのさあ……」

 「なんですか!? もしかして怖気づいたの!? ここまできてそれは無いですよ!!
  一緒に大妖怪さんを埋めようって言ったのに!!」

 「えー!? なんか私まで共犯者みたいな感じになっちゃってるの!? いつの間にかに!!」

 「今逃げたら玲ちゃんに命令されてやったと私は自供しますからね」

 「しかも脅迫まで…………。あのね千夏ちゃん、そうじゃなくて……あれってなんだと思う?」

 「あれ? あれってなんですか……?」

 大妖怪さんを埋めようとしていた私を止めた玲ちゃんは、私たちが居る屋敷の部屋の隅の方を指差します。
 忘れているかもしれませんが、私たちが居る場所ってお城の屋内なんですよ。
 あまりにも広すぎて忘れているかもしれないけども。
 あ、ついでに、床を剥がして地面を掘ってみると、ちゃんと土がありました。
 うーん……ここは一応一階みたいですね。もしかしたら二階も同じような広さなのでしょうか。
 ちょっと迷い込みたくありません。

 「アレは……黒い染み?」

 玲ちゃんが指し示す屋敷の隅には、黒い点のような物がポツンとありました。
 これだけ広いお城なんだからこういう汚れぐらいなんの不思議もありませんが……。

 「っ!? あれ、なんか動いてる?」

 「うん。そうなの。なんかモゾモゾと……もしかして虫か何かかなあ?」

 「うわぁ……それは気持ち悪いですねえ。ちょっとあまり近付きたくない」

 「……っ!? ムガー! ムガムガー!!」

 「あ。妖怪さんが暴れてる」

 「やれやれ。騒がしい幽霊ですねえ」

 「千夏ちゃん本当にそれどえ乗り切るつもりなんだね……」

 「もがもが……プハアッ!! おいお前ら! やばいぞ!!」

 「あっ。噛ませてた猿ぐつわが外れちゃった」

 「いつの間にかそんなのしてたんだ千夏ちゃん……」

 「そんな和んでいる場合じゃないぞ! あいつが来たんだ! マスターの……黒い星の民直属の暗殺者が!!」

 「え? あの虫がそうなんですか?」

 「あれは虫じゃあない! 影だ!!」

 「……影?」

 「そう! 暗殺部隊『影法師』!! そいつらが来たんだ!!」

 「なんかわからないですけど、それってヤバイんですか? あまり影がやばいって言われても実感がわかな……」

 『ドッゴーンッ!!!!』

 「……え?」

 先ほどの黒い染みが居る場所を見てみましたたら、なんとまあ黒い染みがまさしく人型の影の姿をしていまして、
 その人影が、パンチで壁を一発でぶち壊していました。
 あらぁ……なんとまあ暴力的な影さんで。


 「よっしゃあ! 逃げるよ玲ちゃん!!」

 「ち、千夏ちゃん!? 相変わらず逃げの判断が早いね」

 「迷ったらそこで死なんですよ! とにかく行きますよ玲ちゃん!!」

 「は、はい!!」

 「ちょっと待て! 私も連れて行ってくれ!!」

 「千夏ちゃん!? 大妖怪さんがそんな事言ってますよ!?」

 「よし。放っておこう」

 「そういう決断も早いですね!?」

 だってさ、大妖怪さんだもん。




 9月29日 金曜日 「再三の逃亡中」


 「痛い痛い痛い痛い!!!」

 「あーっ! もううっさいですね大妖怪さん!! 一緒に逃げてあげているんだから文句言わないでよ!!」

 「一緒に逃げてるって言うのかこれは!? ただ、私を引きずっているだけじゃないか!!」

 「仕方ないでしょう!? あなたにかっちりと巻かれた鎖、なかなか外れないんだから!!」

 「お前が巻いたんだろうが!!」

 「そういえばそうでしたね」

 私たちは今、黒い星の民のお城の中を逃走中です。もう何回目になるんだと言うべき逃走劇ですね。
 なんか逃げ癖がついている気がする。
 とにかく、いちはやくここから出たいです。何度も言っている気がするけど。



 「それで! あの影は一体なんなんですか大妖怪さん! 逃げながらでいいので説明してください!!」

 「あれは私のマスターが、黒い星の民が作った暗殺者だ!! 影で構築されていて、実体が無い!! だから不死身の兵隊なんだ!!」

 「実体が無いのになんで攻撃できるの……?」

 「えーっと、いろいろ頑張ったから」

 そうですか。影さんは努力家だったんですね。
 っておい。頑張ったで全部済ますなや。もうちょっとそこは説明しなさい。



 「とにかく、あれは不死身ですっごく強い奴なんですね?」

 「まあそういう事だ。それにそれだけじゃなくて……あいつは、お前のよく知っている奴の力をコピーしている」

 「へ? それ、どういう事なんですか?」

 「元々あの影法師はこの城に侵入してきた敵対者の影だったんだ。
  それをマスターが再利用して影を作っているのさ」

 「お城に侵入してきた敵対者……? それってつまり……」

 「そう! あの影はお前の家族……それもウサギ野郎の物なのだ!!」

 「な、なんですって!? マジですか大妖怪さん!!」

 「ああ。あの攻撃力は間違いない」

 「そんな……ウサギさんの影が私たちを襲うだなんて…………。
  っていうか、そもそもウサギさんたちは一体どうなったんですか!! きちんとした説明聞いてないんですけど!!」

 「いたたたた!! 落ち着けって!! それは……」

 「それは!? なに!? どうなったの!?」

 「えーっと、あの影法師を倒したら分かるかも……」

 「あんなの倒せるかー!! だってあれを倒すって事は、間接的にウサギさんを倒すって事じゃないですか!!
  出来るかいそんなの!!」

 「だ、大丈夫……。あの影にも、やはり弱点があるんだ」

 「影に弱点……? やっぱり、光関係とかそういうの?」

 「いや、湿気に弱い」

 「お前と同じなのかよ!! どうなってるんですかこのお城の連中は!?」

 素材は紙なのか? トイレットペーパーなんですかあなた方は?




 9月30日 土曜日 「ウサギさんの弱点」


 「とにかく出口を! この城の出口を教えなさい大妖怪さん!!」

 「えーっと……確か今の時期だとカシオペア座が爛々と輝いている方角で……」

 「どうにか屋内でその方向を確認出来る教え方にしてくださりませんかね!?
  ここじゃ星なんかひとつも見えやがらねえ!!」

 「……やはり逃げているだけじゃダメだ。
  助かりたければ、真っ正面からあの影と戦わなければ」

 「なに言ってるんですか!! 相手は事もあろうにウサギさんの影ですよ!?
  雪女さんとか女神さんとかとは違うんですよ!?
  子どもが鼻で笑いながら相手出来るようなレベルじゃないんですよ!?」

 「そのふたりの事は全然評価してないのな」

 あのふたりですからね。



 「とにかく無理です。ウサギさんとケンカするぐらいなら巨人とケンカする方がマシです!」

 「そっちの方も割と怖そうだがなあ」

 「決してお金の力に屈したりしませんから!! 精一杯戦いますよ!!」

 「あ、巨人ってジャイアンツの事なんだ? なぜお前は野球球団と戦うだなんて急に言い出したんだ。
  頭でも膿んでいるのか?」

 「とにかくウサギさんは無敵なんですー! 私なんかにはかないっこないよ!!」

 「千夏ちゃん!! 諦めちゃダメだよ!!」

 「玲ちゃん……そうは言いますがね」

 「きっとウサギさんにだって弱点のひとつやふたつあるって!
  千夏ちゃんはずっと一緒に暮らしていたんでしょう!? 日常の生活の中でその弱点を見たことがあるんじゃないの?」

 「う〜ん……ウサギさんの弱点ねえ……」

 「……そうだ! あいつは何だかんだで兎なんだから、切り株が弱点に違いない!!」

 「ああ。童謡でそんなのありますもんね。ってバカですか大妖怪さん」

 「そ、それ! きっとそれに違いないわ!!」

 「玲ちゃーん!? なに同意しちゃってんのー!?
  調子乗るからやめてよ!」

 「そう言えば確か向こうに切り株だらけの部屋があったような……」

 「よし! そこに行きましょう!!」

 私を置いて話を進めないでー! というか、ウサギさんの弱点を切り株なんかに決定しないでー。








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