10月15日 日曜日 「夜の雑談」


 「……ウサギさん。もう寝ました?」

 私たちは今、黒い星の民のお城の中にあるコンビニの休憩室で寝ています。
 なんというか……すごく、寝づらいです。
 私、結構どんな所でも寝られるんですけどねえ。


 「なんだよその修学旅行などでよく聞きそうな質問は。
  どうかしたのか千夏?」

 「いや、どうかしたというわけではないんですけど。なんというか……眠れなくて。
  ウサギさんは眠れそうですか?」

 「う〜ん……俺も、あまり眠れそうにないかもな。
  なんかこのコンビニ、すごく居心地が悪いんだよな」

 「やっぱりウサギさんもそう思いますか!?
  あのですね、きっとこのコンビニには幽霊か何かが住んでいるんですよ!
  っていうか、あの不気味な店員さんが幽霊なんですよ!!
  私たちを食べるためにこのコンビニに泊めさせたんですよ!」

 「幽霊ねえ……幽霊ってあんなものなのか?」

 「生きているとは思えぬ程コミュニケーション能力が乏しかったじゃないですか。
  それが証拠です」

 「生きてなかったらコミュニケーションもなにも無いと思うけどな」

 「……はっ!? そう言えば今気づきましたけど、あの人の足音を聞いた覚えがない!!」

 「そりゃあまあ注意深く聞いてなければ、足音なんて聞き逃してるだろうけどさ」

 「違いますよ! 絶対あれは幽霊なんだ!!
  よくよく考えてみると、コンビニに人がいるなんておかしい!!」

 「おい千夏。ここの常識に染められるな。
  下界ではコンビニに店員がいることは普通だぞ」

 「ううう……どうしよう。
  きっと私たちが寝静まった頃を見計らって、この部屋に入ってくるんだ。
  そしてその手に持っている包丁で私たちを輪切りに……」

 「そんなわけないだろ」

 「そうですね……輪切りじゃなくて短冊切りかもしれませんね」

 「切り方の問題じゃないってば。
  千夏ってさ、そんなに幽霊とか怖かったっけ?」

 「いや……幽霊が怖いというよりはあの店員さんが怖いんです。
  私、ああいうの嫌いなんですよね」

 「暗い人が?」

 「いや、20代中盤なのにフリーターな人が」

 「完全にバカにしてるな。全然怖がっているふうには見えない」

 「ああ……もう寝たくないよぉ。怖いよぉ」

 このまま朝を迎えるしかないのでしょうか?
 雪女さんと戦わなきゃいけないからきちんと寝ておきたいんだけど……この状況じゃあなあ。




 「ふふ…………ふふふっ。もう寝ましたかお客様……?」

 「なんかきちゃった!?」

 ああ……これは本当に寝てる場合じゃないかもしれません。


 10月16日 月曜日 「真夜中の侵入者」


 「うふ……ふふっ、ふふふ……。よくお眠りのようですね……」

 (いえ! 全然寝ておりませんよ!? っていうか何しに来たの店員さん!?
  まさか本当に私たちをぶつ切りに……)

 なんのわけがあってか、眠っている(はずだった)私たちの部屋に入ってきたコンビニの店員さん。
 あきらかにその行動は怪しいです。常軌を逸してます。
 やはり、私の予想通り幽霊だか妖怪だかの化け物なのでしょうか。
 自分の食欲を満たすために、私たちをこのコンビニに泊めたのでしょうか。
 ちくしょう……やはり罠だったのですか。

 「ふふふふ……よし。それじゃあさっそく……」

 「こらー!! 私たちを襲おうったってそうかんたんにはいきませんよ!!」

 「うわー!? びっくりした!! お、起きてたんですか!?」

 「そりゃあもう起きてましたよ!! なにか起きていたらまずかった事でもあるんですか!?」

 「い、いや……別にそういうわけではないですけど」

 「嘘だね!! あなた……私たちが寝静まった所を襲おうとしていたのでしょう!?
  隠し包丁でも入れ て煮た時に味が染み込むようにでもする気だったのでしょう!?」

 「なんですかその下ごしらえ」

 「正直に白状しなさい!! 今なら、脳みそに直接デコピンするだけで勘弁してあげますから!!」

 「十分致命傷じゃないですかそれは!」

 一応これでも優しくしてあげているつもりなのに。



 「私はただ……そう、あなた方の布団を直して差し上げようとですねぇ」

 「嘘だね! あなたからは、そんな母親的な優しさなんて感じない!」

 「そんな失敬な……。これでもですね、家庭科の成績はいつも5だったのですから」

 「別に学校の家庭科の成績が母性を象徴してくれるわけじゃないだろ」

 「と、とにかくですね、私はただちょっと様子を見に来ただけなのです。
  怪しい事などなにも……」

 「むぅ…………とうっ!!」

 「うわっ! ちょ、なにし……」

 私はむりやりコンビニの店員さんを押さえつけ、何か凶器を持っていないか探りました。
 いくら口でごまかしたとしても、物的証拠を出してやれば……。

 「ってなんですかコレ? なんで、こんな物が店員さんのポケットの中に」

 「そ、それは……」

 店員さんのポケットの中に入っていたものは、飲み物などに使うロックアイスでした。
 普通におかしいでしょ。こんなのポケットに入れてるなんて。びしょびしょになっちゃうしさ。

 「えーと、ですね、それはその……」

 「そ、そうだ! こいつを私たちの背中に入れて冷たびっくりさせてショック死させるつもりだったんでしょう!?
  この計画的殺人犯め!!」

 「…………」

 …………いや、その、分かってるんですよ? そんなバカな事があるわけないって。
 でもですね、このままだと私が変な事を言っているだけになっちゃうじゃないですか。
 一度疑ってしまったんだから、それを貫くしかないじゃないですか。
 人には引けない事が多々あるじゃないですか。おそらく、こういうときに意地を通すものじゃないとは思うけど。

 「…………ふふっ、ふふふふふ……。バレてしまっては仕方ありませんね」

 「あっれー!? もしかして正解だったの!? そういうしょっぼい殺し方を本当にしようと思っていたの!?」

 私たちの心臓はノミ並みかよ。

 「ここまでばれては仕方ない! 私の正体、お前らに明かしてやろう!!」

 「え? え? そういう展開? 私、まだ心の準備が出来てな……」

 「はーっはっはっはっはっは!! 実は私はお前たちの仲間、ゆぎっどんな……雪女の影法師だ!!」

 「自分の名前噛んだー!?」

 おおっ。そういう所はまさしく雪女さんの影っぽい。




 10月17日 火曜日 「雪女さんの影、来襲」

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 「わははははは!! お前らをガツンと氷漬けにしてやる!!」

 「そのガツンというのは氷漬けにするという行為に適した擬音なのですか……?
  いや、まあどうでも良い事ですけれど。
  ともかく、ついに正体を現しましたねコンビニの店員さん!!」

 なんと、コンビニの店員さんは雪女さんの影法師でした。
 それにしてもやけに饒舌な影ですね……。わはははだなんて笑っちゃって。

 「ウサギさんウサギさん! 起きてください! 大変ですよ!!」

 「んん……? どうしたんだよ一体……」

 「見てくださいよあれを! なんとですね、コンビニの店員さんが雪女さんの影だったんです!
  私たちをここに泊めて、寝込みを襲うつもりだったんですよ!!」

 「ああ。その通りだ! この氷を寝ているお前たちの背中に入れて、ショック死させてやろうと画策していたのだ!!」

 「なんとセコイ作戦。真正面から戦ってきなさいよ。
  周囲の気温を下げて私たちの体力を奪うとかしなくてもさ」

 「バカめ! それが戦術というものなのだ!! 私は本体とは違う! 何も考えず に生きていたあのバカ女とは違うのだ!!」

 「自分の影にそこまで言われるとはなんて不憫なんですか雪女さん」

 まあ影さんのいう事は良く分かりますけどね。
 確かに、雪女さんはバカだった。

 「でもですね……例えバカであっても、雪女さんは正々堂々としてましたよ!
  あなたみたいに恥ずかしいことなんて、決してやろうとしませんでした!!」

 「だからダメだったんだ! だからあんなにも、損をする生き方をしていたんだ!!
  あの女の人生は失敗だった!! ただの、愚か者だったんだ!!」

 「そんな事無いです! 雪女さんだってきっと幸せだったはずですよ!
  なんていったって、自分が生きたいように生きていたんですからね!!」

 「他人にこき使われる事が幸せなわけないだろう!!」

 「いや! 彼女はそういう辛い環境でも楽しむ術を知っていました。
  言い方を変えれば、すっごいMでした!!」

 「言い方を帰るな!! おのれ……本当にムカつく奴らだ。
  こうなったら真正面から攻撃してやる!!」

 「う、うわ! ちょっと待った! もうちょっと悪口の言い合いしようよ!
  その方がなんとも平和的だし!!」

 「そんなわけいくかあ!!」

 プッツンしてしまったらしい影さんが、私に殴りかかってきました。
 雪女としての能力でもってその拳に痛そうな氷の鉄拳を装備してやがります。
 うわ、マジでやる気だよこの人。

 「させるかあっ!」

 「なっ!?」

 しかし私に届くかと思われた拳はウサギさんの手によって受け止められます。
 やっぱり純粋な戦闘能力ではウサギさんには敵わないんですね。


 「くっ……やはりダメか。事を急ぎすぎた。
  おいお前たち! 今日の所は勘弁してやる! 命拾いしたな!!」

 「あっ! ちょっと待ってくださいよ!!」

 なんともらしい捨て台詞を吐いて、雪女さんの影は姿をすっと消してしまいました。
 くそう。なんか本当に影みたい。

 「どうしましょうかウサギさん。逃がしてしまいましたよ」

 「ああ……多分、これからも付け狙われるんだろうな」

 「はぁ……これからどうしたら……」

 ……雪女さんが引っかかりそうな罠でもしかけて捕まえるしかないですかねえ。
 あんぱんでも置いとけば寄って来るでしょ。




 10月18日 水曜日 「トラップトラップ」


 「……千夏。なにやってんの?」

 「ああ、ウサギさん。ウサギさんも手伝ってくださいよ。雪女さんの影用の罠作り」

 「罠って……そういうのでひっかかるのか?」

 「トラップはですね、慢心している敵にもっとも有効なのですよ。
  例えばなまじ強い力を持っていて、相手を追い詰めていたりする奴には。
  ほら、今私たちは雪女さんの影の力でこのコンビニまで逃げてきたでしょう?
  だから、きっと相手は少しばかりの油断があると思うんです。だからこそ、罠が必要なのです。
  そう塾で習いました」

 「どんな塾だよそれは」

 ゲリラ戦をいろいろと教えてくれた塾なんですよ。
 月謝払わなかったらやめさせられたけど。当然ですか。

 「うーん……そう言われるとすっごくいい作戦に思えてくるけど……。
  っていうか、それが罠なのか?」

 「何か問題あります?」

 「俺にはどうみても……熊とか捕まえるような檻に見えるのだが?」

 「ピンポーン! 大正解です!! こいつはですね、山の中に居るような獣を捕まえるための罠なんですよ。
  檻の中の餌を食べると、こう入り口がガシャンと閉まりましてね」

 「さすがにそれじゃつかまらないだろ。いくら雪女の影だからと言って。
  というかむしろ普通の雪女よりも頭よくなっていたじゃないか。あの影」

 「大丈夫大丈夫。しょせん雪女さんですぜ?」

 「千夏の方が思いっきり油断しているように見えるのだが?」

 気のせいではないでしょうか。

 「……でもさ、その檻ってどこにあったんだよ。まさか千夏が自作したのか?」

 「まさかそんなわけないじゃないですか。こんな物が自作できるなら、私は罠職人になってますよ。
  小学校を中退して」

 「義務教育をやめるほど魅力的な職業なのか? その罠職人というのは?」

 「この檻はですね、このコンビニの倉庫の中にあったんです。多分売れ残った在庫なんでしょうね」

 「ここのコンビにって檻を店頭に置いていた事があったんだ? なんの需要に応えての品揃えなんだ」

 「きっとここらへんって獣の被害がすごいんじゃないですか? だから日用生活品みたいな扱いなのかも」

 「そんなわけないだろ」

 「ほら。北海道ではコンビニで熊退治用のライフルが売っていると聞きますし」

 「そんなわけないだろ。どんな銃社会が北海道に根付いているんだ」

 「そういうわけですから、そんなに気にせず使いましょうよ」

 「千夏さ……疑問に思う事をやめているだろう?」

 だって考えたって解決しない事が多すぎるんですもの。
 悩んでいると疲れるんですー。






 「さて……あとは餌ですけどどうしましょ。本当にあんぱんでいいかなぁ」

 「それじゃさすがになあ……」

 「そうですね。切れ端ぐらいでいいですよね」

 「グレード下がったな。ますます来なくなりそう」

 「くっ……じゃあ奮発してチーズ蒸しケーキで」

 「千夏の価値観から言うとチーズ蒸しケーキはあんぱんよりグレードが高いのか?」

 「だって蒸されてますしね。チーズですしね。そしてケーキなのですからね。
  餡なパンよりずっといい感じだと思います」

 「名前を分割しての評価なんだ。そういう勝負なんだ?」

 「まあこんな感じでいいでしょ……。よし! じゃああとは雪女さんの影を待つだけだね!」

 「本当に引っかかるか? こんなの?」

 「大丈夫大丈夫!! だって雪女さんだもん!!
  私とケンカした時に嫌がらせとして料理に塩の代わりに砂糖を使おうとしたけども、
  でもさらに間違って普通に塩を使って美味しい玉子焼きを食べさせてくれた人なのだもの!!」

 「それは確かにバカだ」

 「きっと雪女さんの影なら、こんな見えみえな罠に引っかからないようにして、むしろ引っかかるようなウルトラCを見せてくれます!!」

 「それは本当にウルトラCだな……」

 雪女さんなら期待は裏切らな……

 『ゴガンッ!!』

 「なんの音ですか!?」

 突如鳴り響いた不審な音の場所に行ってみると……コンビニの入り口、自動ドアになぜか挟まれている雪女さんの影の姿が。

 「くっ、しまった!! こっそりコンビニの中に入ろうとしたら壊れた自動ドアに挟まれて……っ!!」

 「罠じゃないものに捕まってるー!!??」

 さすがですね。ウルトラCだ。
 神の偉業だ。




 10月19日 木曜日 「コンビニ拷問」

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 「ついに来ましたね雪女さんの影さん! この日をどんなに待ったことか!!」

 「くっ……私をこのような卑劣な罠にかけて……正義の風上にも置けぬな!!」

 「いや、その自動ドアに関しては私はまったくノータッチですよ。っていうかなんで壊れたんだろ」

 「多分雪女の影の奴が冷やしすぎたから誤動作を起こしちゃったんじゃないか?
  なんにせよ自業自得だな」

 「なるほど……確かにそれっぽいですねウサギさん」

 さすが雪女さんの影。どんなに知力があがったとしても、基本がダメなのだからどうにもならないのでしょう。



 「ふふふ……しかし残念だったなお前たち。いくら私を捕まえたとしても、殺す事など出来ない。
  なぜならば、私は不死身の影法師だからだ!!」

 「そう言えばそうでしたね……。うーんどうしましょう?
  このまま自動ドアごと女神さんの所に持って行きましょうか?
  彼女の所に連れて行けば、元にもどしてくれるんですよね?」

 「いや……さすがに自動ドアごとはもっていけないだろ。
  そんな豪快な運搬方法聞いたこと無い」

 「ほら、一昔前に流行ったATM強盗みたいな」

 「重機持ってこないと無理だろう」

 「はあ……じゃあどうしましょうか? このまま自動ドアに挟んどくわけにはいきませんし。
  ……そうだ!! 運びやすいように適当にダメージ与えてぐったりさせて、
  おとなしくなった所で女神さんの所に持って行きましょう!!」

 「なんて外道な作戦をさらりと思いつくんだあなたは!!」

 私たちを凍死させようとしたあなたに言われたくはないですよ。


 「で、でもなあ! 私は生半可な攻撃でぐったりするほど弱くは無いぞ!!
  お前らのちんけな攻撃で意識など失わぬ!!」

 「ふふふっ……まな板の上の鯛の癖していう事だけはでかいじゃないですか。
  あなたはもうね、私たちに美味しく調理されてしまう以外に道はないのですよ。
  観念しなさいな!!」

 「千夏。それはなんだか決して正義を背負う者が口にするような言葉ではないと思う」

 正義だ悪だなんて、立場やなんかですぐに裏返るものだというのが最近の定説じゃないですか。
 だから仕方ないのです。まあ、仕方ないなんて言葉使ってる時点で正義だとか悪だとか別にどうでも良いってのが丸分かりですけど。


 「雪女さんの影さん。あなたは私たちを舐めすぎです。
  確かに通常時の私たちならばあなたにダメージを与えられないかもしれないですけど……
  今私たちが居る場所をお忘れですか!?」

 「今居る場所って……コンビニでしょ? それがなんだっていうのさ」

 「そうコンビニ! コンビニならば、あなたを昏倒させるような武器が楽々手に入るというわけなのですよ!!」

 「そんなわけないでしょうが!! なんでコンビニに置いてあるようなあるような物で昏倒させられなきゃいけないんだ!!」

 「だから舐めてもらっては困りますってば。
  じゃーん! コンビニで基本的に販売されている品、チューブ入り練りわさび!!」

 「ま、まさかそれを!!??」

 「そう。あなたの目の下にですね……」

 「や、やめろ……やめろー!!」

 「はーっはっはっは!! 拷問は始まったばかりですよ!!」







 「千夏。すっげえ怖い」

 「うん。私も自分でちょっと引いた」

 でもこれも仕方ない事なのです。全世界の平和のために。そういう正義のために必要な事なのです。
 まあ、すぐにでもひっくり返ってしまいそうな正義ですが。



 10月20日 金曜日 「拷問中」

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 チナツ「これでもくらえー。ひっさつ、おでんこうげき!」

 ゆきおんなのカゲ「あつい!」

 *チナツは ゆきおんなのカゲに 10ポイントのダメージをあたえた。


 ゆきおんなのカゲ「ふっふっふ。そんなこうげき、いたくもかゆくもないわ!!」

 チナツ「それならこれはどうだー。あたためだしたばっかりで、そとがわだけあつく、なかがつめたいにくまんこうげき!!」

 ゆきおんなのカゲ「あつい! そして、ちょっとがっかり!! なかまでふんわりだとおもっていたのに、ちょっとがっかり!!」

 *チナツは ゆきおんなのカゲに 20ポイントのダメージをあたえた。


 ゆきおんなのカゲ「くそう……いまのはちょっときいたぞ。このみがじゆうならば、おまえたちなどひとひねりなのに……」

 チナツ「まだまだわたしたちのこうげきはおわらないぞ!! くらえー、コンビニべんとうこうげき!!」

 ゆきおんなのカゲ「ああっ! カロリーが! もぐもぐ。ずっとせっせいしていたカロリーが!! もぐもぐ、きになってしまう!!

 ウサギ「じゃあたべるなよ」

 *チナツは ゆきおんなのカゲに 4ポイントのダメージをあたえた。
  こうげきのこうかにより、ゆきおんなのカゲはたいじゅうがきになりだした。

  ウサギはツッコミをした。しかしこうかはないようだ……。



 チナツ「しぶといやつめ。じゃあこれならどうだー!! ちょっとだけはやった、さんそすいこうげき!!」

 ゆきおんなのカゲ「ああっ! なんのこうかなんてないとわかっているはずなのに、でもそれでもすっきりとしたきぶんになっていく!!
          だまされているのに! きぎょうのえさになっているというのに!!」

 チナツ「こういうこうかがあるのかわからない、みずかんけいのけんこういんりょうなどはですね、やゆとしてみずしょうばいとよばれているのですよ」

 ゆきおんなのカゲ「へぇー」

 *チナツは ゆきおんなのカゲに 0ポイントのダメージをあたえた。
  こうげきのこうかにより、ゆきおんなのカゲはちょっとじこけんお。
  あと、へぇボタンをおした。




 チナツ「まだまだねばるか! ならば、これならどうですか!! コンビニべんとうのなかでもちょっとランクのたかい、
     ごくじょうまくのうちべんとう!!」

 ゆきおんなのカゲ「そ、それは! ちょっとリッチなひぐらいにしかたべるきのおきないでんせつのべんとう!!
          まくのうちってそんなにえらいのかとたずねたくなるような、そんなべんとうではないか!!」

 チナツ「はーっはっはっは!! おもうぞんぶんたべるがいいさ!!」

 ゆきおんなのカゲ「もぐもぐもぐ……うまっ、うまい!! これは……もぐもぐ、けっこういけるかも。あ、でもカロリーが」

 *チナツは ゆきおんなのカゲに4ポイントの………………





 「なあ千夏。それって拷問なのかな? なんか、ご飯食べさせているだけに見えるんだけど?」

 「えっとですね、これはフォアグラ式拷問法です」

 「太らせて苦しめるつもりなのか!? なんともしたたかというか卑劣というか……」

 女性には一番効くんじゃないですかね。この拷問は。



 10月21日 土曜日 「勝利」

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 「ふふふ……こんなことをいくらやっても無駄だぞ。その程度の攻撃では、私は死なない」

 私の食べ物拷問を受け続けた雪女さんの影が、余裕の表情でそんな事を言っております。
 まあそうでしょうね。食べ物食べさせていただけだから。

 「わーっはっはっはっはっは!! しょせんお前たちの力などこの程度なのだ!!
  私に傷一つ付けられない、出来損ないどもなのだ!!」

 「黙って聞いていれば勝手な事ばかり抜かしやがって……。
  よし。ウサギさん。こいつを自動ドアから解放してやりましょう」

 「え!? いいのか? そんな事して」

 「ええ。良いんですよ。やっぱりこんなちまちました事やっているより、直接ぶん殴った方がいいと思うんです。
  100の説法より、一撃の鉄拳ですよ!!」

 「千夏。将来教育者を目指す事だけはやめておけよ? 誰も幸せにならないからな」

 なんか酷い言い様ですねそれも。



 「えーっと……ここのスイッチ押せばいいのかな? ぽちっと」

 『ガゴンッ』

 「ふは、ふははははは!! 自由だ! 私は自由だぞ!!」

 「おーっ、まるで鳩時計から外の世界へ飛び出した喜びを全身でハトのようだ!!」

 「微妙だ。その喩えは微妙だ」

 「ふふふ……血迷ったなお前たち! 私を自由にするとは……なんたる愚行よ!!
  今までの仕打ち、100倍にして返してやる!!」

 という事は私たちは100倍、物を食べさせられてしまうのでしょうか。
 それは嫌だなぁ。太ると、あとが大変だし。生活習慣病とかさあ。
 今、子供の肥満が問題になっているんだから。特にアメリカとかで。

 「うらー! くらえ、ひっさつの…………おっとっとっと」

 なにやら必殺技を使おうとした雪女さんの影ですが、バランスを崩して倒れかけてしまいました。
 あはは。ちょー笑えるんですけどー。

 「なっ、こ、これはなんだ!? 体が、いう事を聞かない……?」

 「ふっふっふっふ。愚か者はあなたですよ雪女さんの影さん。自分の姿を良く見てみなさい!!」

 「な、まさか…………これはっ、太ってる!? ぶくぶくと、まるで豚のように!?」

 「その通り!! 昨日受けた私の必殺技の数々は、全てあなたの脂肪になったのです!!
  その肉じゃあ、もう前みたいに動く事なんて出来ませんよ!!」

 「相手の肉になる必殺技ってなんなんだ」

 素敵な必殺技じゃないですかウサギさん。平和的な拷問ですよ。


 「く、くそう……これじゃ戦えない」

 「よしウサギさん。動けないこいつをさっさと女神さんの所に持って行きましょう。
  そして、元の雪女さんに戻してもらいましょう」

 「ああ、そうだな……。でもさ、こういう勝ち方でいいのかな?」

 「いいんですよ。勝てば、なんでも良いんですよ。例え相手を太らせた末での勝利でもね!!」

 「相手を太らせた末での勝利なんて言葉、初めて聞いた」

 まあいいじゃないですか。結果オーライ。オーライオーライ。








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