10月29日 日曜日 「脳漿ぶちまけた」

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 「うおおおお! どこに行ったんですかリーファちゃん!! ……の影!!
  見つけたらただじゃおきませんよ!!」

 リーファちゃんの影らしきモノを追った私は、この黒い星の民の城の一室へと足を踏み入れました。
 そこはどうやら他のびっくり部屋と同じ趣向らしく、真っ暗で数メートル先さえもまったく視認できないような空間でした。

 ……確実に罠ですが、それでも私は進んでいかなければならないのです。
 なぜならば、この手ですっごくリーファちゃん…………の影を殴りたいから!!
 怒りが、私の中に渦巻いているからなのです!!


 「私をおちょくった罪……しっかり償ってもらいますよリーファちゃん!!
  指にささくれとかいっぱい作ってやる!!」

 「なんともえげつない攻撃するんですね……」

 「あ、雪女さん。なんだ、ついてきてたの?」

 どうやら雪女さんは私を追ってきてくれたらしいです。
 戦力が増えたのでちょっとらっきいーです。まあ、しょせん雪女さんですが。

 「なんだじゃないですよ千夏さん……。早くみなさんの所に帰りましょうよぉ。
  みんな心配してますって」

 「それは分かってますけどさあ、やっぱりこのとめどない怒りがどうしても私の体を動かして……」

 「そんな迷惑な怒り捨ててくださいよ!」

 「そう言われてもねえ……。簡単に確執を取り除けるなら、六ヶ国会議もすんなり行くわけで」

 「微妙に時事ネタで喩えられても…………ぶはっ!!」

 「ちょ、どうしたんですか雪女さん!?」

 「アイタタタタ…………何かが頭に当たって……っ!? こ、これ、血ですか!? 私の頭から、血が流れているのですか!?
  あああああ!!?? 何かちょっと固体のようなものも!! これは、脳なのですか!?」

 「落ち着いてくださいよ雪女さん!!」

 「落ち着けるわけないでしょう千夏さん!! だって脳が出ているんですよ!? 脳ですよ千夏さん!?」

 「いや、確かにショックなのは分かるけど……」

 「ショックだ! 本当にショックだよ! だって頭から血と脳が出ているなんて!!
  というかなんで私死んでいないの!? 致命傷じゃないの!? 人間って、思っているよりもずっと強いの!?」

 本当に落ち着けよ雪女さん。

 「ねえ雪女さん……。それ、多分ケチャップじゃないの? なんかプニプニした固体は、多分トマトなんだと思うけど。
  ほら、よくあるじゃん。そういう果肉の入ったケチャップ」

 「何言っているんですか千夏さん! これが、ケチャップですと!? そんなこと、あるわけっ!!
  ほら、こうぺろっと舐めてもですね、全然おしくな…………美味しい! すごい美味しい!! ケチャップだこれ!!」

 それは良かったですね。




 「でも誰がこんな事を……」

 「おまえのカーチャンでーべそー」

 「……………………またリーファちゃんですか!!」

 もしかして彼女はイライラで私たちの脳血管をぷっつんさせようとしているのでしょうか?
 なんにしたって、すっごくムカつく。



 10月30日 月曜日 「ケチャップ利用法」

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 「コラー! どこ行きやがったですかリーファちゃん!! ……の影!!
  観念して出てきなさい!! 今ならまだ突き指程度で済ませてやるから!!
  でももし出てこない気なら……腱鞘炎レベルまで引き上げますよ!!」

 「なんで千夏さんの脅し文句は指先限定なんですか。
  昨日はささくれがどうとか言ってましたし」

 「地味に生活に影響が出るのが指先なんですよ。
  だからね、こうやられたら嫌だなーみたいな事を思わせるために……って痛!?」

 「ち、千夏さん! 大丈夫ですか!?
  ……きゃー! 血が! 千夏さんの頭から血がー! 血が噴出してー!!」

 「……雪女さん、落ち着きなさい。これ、トマトケチャップですよ」

 「脳みそもいっしょにー!! …………え? 本当ですか?」

 「本当ですよ。本当じゃなかったらどうやって喋っているんだ私は。明らかに致命傷でしょうが。
  本当に傷を負っていたら」

 「いや、でも千夏さんの口は胴体から切り離されても喋りそうじゃないですか」

 なにさらりと失礼な事を言ってくれてんですか。


 「でも誰がこんなイタズラを……」

 「そりゃあリーファちゃんの影に決まっているでしょうが。
  というよりか、それしか考えられない」

 「やっぱりそうなのですかねえ? でもなぜこんな事を?」

 「ただの嫌がらせなんじゃないですか? あの子は割りと心が歪んでいますからね、だたの愉快犯的犯行を重ねているだけだと……ぶばっ!!」

 「千夏さん!? …………きゃあああーー!! 千夏さんの頭から血が……」

 「もうそれはいいですってば雪女さん!! いい加減突っ込むのもうざくなってきたから!!」

 「ううう……私、どうしても血とかダメなんですよね……。だから、どうしても驚いちゃって」

 「素でやっていたんですか……。それじゃあちょっとお聞きしますけどね、トマトケチャップは怖いですか?」

 「そんなわけないでしょう……。なんで私が食品にかけるソースを怖がらなければならないのですか」

 「じゃあこれから人間の体内にはケチャップが流れているんだと思う事にしてみたら?
  そうすればこの先本物の血を見ても全然怖くないよ」

 「怖いですよ! 逆に怖い!! ケチャップがたっぷり詰まっている、ある意味で料理っぽい人間なんて怖いだけです!!」

 「新しい創作料理だと思いなよ」

 「どこまで自己暗示が得意なんですか私は…………ぶべらっ!!」

 「あ……今度は雪女さんの頭にトマトが……」

 「……きゃあああああ!! 血がー! 血がー!!」

 「だからもういいってば。
  しかし気に食わないですね……。闇にまぎれてトマトを投げつけるだなんて。
  農家の人を全て敵に回す勢いですね。まるで禁断の祭り、トマト祭りのように」

 「……そうだ! いい事を思いつきましたよ千夏さん!!」

 「え? もしかしてこの状況の打開策を考え付いたんですか!?
  いや、そんなバカな! だって雪女さんだし!!
  …………でも、もしかしたら奇跡的に何かを思いついて……?」

 「なんですかその失礼な発言。私だってですね、きちんとモノを考えているんですよ」

 そうでしたね。すっかり忘れてました。

 「で、その良い事とはなんですか? ちょっとだけ期待してますよ」

 「あのですねえ、このトマトを……」

 「このトマトを? どうするんです?」



 「今晩の夕食……オムライスに使おうと思うんです!!」

 「……」

 もう、言葉も無くすわ。




 10月31日 火曜日 「ケチャップフラグ」

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 「千夏さぁん……。トマトケチャップで体中がベトベトですよぉ……」

 「うーむ……いくらたいしたダメージの無いトマトケチャップだからと言っても……ここまでぶちまけられると腹が立って仕方ないですねえ」

 「千夏さん……早くこの真っ暗な部屋から出ましょうよぉ。
  こんな所じゃ絶対にリーファさんの影なんて捕まえる事なんて出来ませんよぉ」

 「……それもそうですね。ここは一時撤退しましょう。
  そして次は火炎放射器とかアサルトライフルとか持って出直しましょう」

 「マジで殺る気満々なんですね千夏さん……」

 そりゃあそうですよ。
 なんでも影って不死身らしいし。
 これぐらいやる気にならなきゃとてもじゃないですが捕まえられません。
 雪女さんの時だってそんな覚悟で挑んだんだから。……まあその覚悟の結果がただ飯を食わせただけに終わったんですが。



 「……ってあれ? そっちにあったはずの扉はどこいったんですか?」

 「え……? さっきまで確かにそこに……」

 「まさか私たち……閉じ込められたんですかね?」

 「えええ!? そういう展開なんですか!?
  ……だから千夏さんと一緒に行動するの嫌なんですよ!!
  なにかしらイベントあったら死が紙一重だし!!」

 「そこまで死にかけてないですよ私は」

 「ううう……そうですよ。千夏さんと一緒に居るからこういう事になるんですよ。
  なんで最初からこの事に気付かなかったんだろ」

 「雪女さん?」

 「もう千夏さんなんかには付き合ってられません!! 千夏さんとは別行動取らせてもらいます!!」

 「ちょ、なんですかそのホラー映画ではビシバシ死亡プラグが立ちそうなコメントは!!
  早まっちゃダメですよ雪女さん!!」

 「とめないでください千夏さん!! 私はもう……ひとりで帰ります!!」

 「雪女さんってば!」

 「だからとめな…………きゃあっ!!」

 急に私の視界から消え、悲鳴をあげる雪女さん。
 いったいどうしたのかと思いましたら……床に突っ伏していました。
 おそらく、床にも大量にぶちまけられている トマトケチャップに足を鰍轤ケたんだと思います。


 「その……大丈夫ですか雪女さん?」

 「…………」

 「……雪女さん?」

 「……そんなには痛くないですけど、ちょっと恥ずかしすぎて顔あげられない……」

 そりゃあそうでしょうねえ。
 まあ、しばらくそうしてなさい。今もすっごくかっこ悪いけど。



 ……しかし、どうここから脱出すれば……。



 11月1日 水曜日 「雪女さんの昔話」

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 「雪女さん……生きてますか?」

 「……なんとか」

 「……お腹すきましたねえ」

 「ええ……。そうだ、このトマト食べます?」

 「嫌です。だってそれ、雪女さんの頭にぶち当てられた奴でしょう?」

 「いいえ。これは左頬に当てられた奴です」

 だからどうした。まったく食欲なんて湧きませんよ。
 その事実を教えてもらっても。


 「はぁ……私たち、閉じ込められてしまったんですよね……?」

 「そうでしょうね。この空間に閉じ込めるのもリーファちゃんの影の作戦だったんでしょうね。
  私たちはそれにまんまと引っかかってしまったと」

 「私たちって言うよりか、千夏さんが引っかかったようなモノじゃないですか!!」

 「そ、そんな……まるで私だけの所為のように……」

 「そうだねー! まるで全部千夏さんだけが悪いみたいだよー!!
  そんな事、普通ないんですよねー!?」

 うわぁ……なんだかすっごく腹立ってますねえ。雪女さん。
 正直そんな切れ方されるとバックドロップ放ってやりたくなるぐらいムカつくのですが、
 まあ私にも悪い所があるので何もしないでおいてあげます。
 命拾いしたな雪女さん。



 「ふぅ……でもどうやってここからでましょうか? まっくらでどこに出口があるなんて分からないですし……」

 「そうですねえ。適当に直進して壁をぶち当たって、そしてその壁を壊せばいいんじゃないですかね?」

 「そんな力づくの作戦……。ウサギさんならまだしも、トマトぐらいしか持っていない私たちに、
  壁をぶち破るパワーなんてあるわけないじゃないですか」

 「もしかしたらこのトマトには不思議なパワーがあるじゃないですか。
  食べたらスーパーパワーを手に入れる事が出来るかもしれないじゃないですか」

 「へぇ……そういうなら雪女さんがこのトマト食べればいいじゃないですか」

 「ええ……? そう言われても…………このトマト、私の二の腕に当てられたモノなんですよ?」

 知らないよそんなの食べる気が無いならそんな提案しないでよ。



 「千夏さん……私たち、ここで死んでしまうのでしょうか?」

 「どうだろうねえ。このまま餓死という最悪の未来は、結構簡単に予測できてしまいますけどねえ。
  まあさすがに……誰か助けに来てくれるんじゃないですか? ウサギさんとかが」

 「せっかくここまで来たのに……黒い星の民の足もとまで来たのに死んでしまうなんて……私は嫌ですよ。
  もう少しで全部終わりそうだったのに……」

 「そうですねえ。確かに嫌ですねえ。
  所詮私たちには世界を救うなんて大役、背負いきれる器じゃなかったという事なのでしょうかね?」

 「それはあまりにも悲しすぎますよ千夏さん……」

 「そうですねえ。悲しいですねえ」

 「……私、すっごく嬉しかったんです」

 「嬉しかった? 何が?」

 「もしかしたら私が世界を救うことができるんじゃないかって……そういう事が」

 「はあ。そんなものですか」

 「だってですね、今までどこに行っても邪魔者扱いされていた私が……人類を救う英雄になれるかもしれないんですよ!?」

 「雪女さんってどこでも邪魔者だったんだ?」

 「ええ……あれは私も思い出す事が辛い事なのですがあれは雪女の里での出来事なのですが……」

 「ちょっと質問いいですか?」

 「え? なんですか?」

 「その雪女の里って不思議名称は……何?」

 「文字通りの意味にとっていただきたいのですが?」

 「そ、そりゃあそうだよね。雪女の里だもんね。雪女の里以外の意味なんて持たないよね」

 いやぁ……あまりにも突拍子も無い名前でしたので、自分の耳を疑ってしまいましてね。
 あっはっはっはっはっは。


 「まあ例えるならば……たけのこの里の雪女版だと思っておいてください」

 「お菓子!? お菓子なの!?
  雪女の里っていうお菓子での話なの!?」

 なんの事やら訳が分からないのですが?


 11月2日 木曜日 「雪女さんの仕事風景」

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 「あれは私がお菓子工場で働いていた時の事でした……」

 「おお……衝撃的な事実からの出だしですねえ……」

 「え? そうですか?」

 「雪女の里って、本当にただのお菓子の事だったのね」

 「ええ。そうですよ。あまり売れずに発売から1年未満で製造中止になったんですけどね……」

 「へぇ……。まあそりゃ雪女の里なんて名前だからねえ」

 「あとなぜか完成品に異物が混入されるという事件が多発しましてね……」

 「ああ、もうそれはなんていうか……ご愁傷様で」

 で、そのお菓子がどうしたんですか。
 まったくつながりが見えない。



 「私はその職場でずっと真面目に働いていたんです……。
  一生懸命、雪女型チョコの箱の中にびっしりと詰めていたんです」

 「やっぱり雪女の形をしたチョコなんですか……名前の通り」

 「でも……工場長にいつも酷く怒られてしまって……」

 「え? 真面目に働いていたのにですか?
  それはすっごく酷いですね!!」

 「ええ……酷い話でしょう? ただ、お菓子の箱の中にぎっしりとお菓子を詰めただけなのに」

 「……そりゃあ怒られるでしょうね。会社にとってはただ赤字を増やしているだけなんだもん」

 「私は……私はただ! お客様の笑顔を見たかっただけなのに!!
  ぎっしりと詰まっているお菓子を見て笑みを浮かべる子供たちの事を考えただけなのに!!」

 「その職業意識は素晴らしいと思いますけども、それはあまり人を幸せにしない職業意識なんですよねえ……。
  やっぱり会社の他の人たちに迷惑をかけてしまうのはいけないと思うんですよ」

 「そうして私は工場を追い出されてしまったのです……」

 「へぇ……昨日から引っ張った割には、ただただあなたが首になっただけの話じゃないですか。
  今の世じゃそんなリストラ物語、あふれかえっているんですけど?」

 なんかすっごく聞いて損した気分ですが?

 「それでですね、私は放り出されたシベリアの極寒の地で誓ったんですよ」

 「その工場、シベリアにあったんですか。さすが雪女の里」

 「私はいつか、人に必要にされる人になろうと。今のように無残にも捨てられるような事なんて無いように、
  いらないからと言ってゴミのように投げ出されるような事なんて無いように。
  そんな人間になろうと誓ったのです!!」

 「人間っていうか雪女でしょ……? まあその心がけは良いと思いますよ。
  だが、別にこんな密閉空間で聞きたいような話ではなかった。
  私の期待を返せ」

 「それでですね、私は次の就職先を探したのです」

 「全然興味ないですよ雪女さん!! そんな事よりも、早くこの部屋から出る方法を考えましょうよ!!
  もうそろそろお腹が空き過ぎて体力がなくなってきたんですけど!?」

 「そして私は常夏の地ハワイにて新しい職場を見つけたのです。
  これがまさか私の運命を決めてしまうだなんて……誰が思ったでしょうか」

 「…………一応聞いておきますけど、その職場って何?」

 「夏男の里というお菓子の工場で……」

 それはまた売れなさそうで。
 …………とりあえず『里』がいけないんだと思うよ。
 それをどうにかしなさい。



 11月3日 金曜日 「誘拐事件発生」

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 「千夏ー! 大丈夫か千夏!!」

 「はっ……!? この声はウサギさん!? 助けにきてくれたんですか!?」

 「千夏ー! 生きてるかー!?」

 「う、ウサギさん! 生きてますよ! めっさ生きておりますよ!!
  でも今この部屋に閉じ込められているんです!! お願いですからここから出してください!!」

 「分かった。ちょっと待ってな」

 『ドガッ!!』

 鈍い衝撃音と一緒に、一筋の光がこの真っ暗な部屋の中に差し込みました。
 ああ、それはまさに希望の光で、私たちにとっては何よりも待ち望んでいた物だったのでした。

 「大丈夫か千夏!?」

 「大丈夫と言えば大丈夫ですけど……やっぱダメでした! お腹空き過ぎてどうにもなりません!!
  なにか食べさせて!!」

 「千夏は本当に食い意地張っているなぁ……」

 「そういう事をしみじみ言われても困るのですが……。
  ほら、雪女さん。さっさと立ち上がってくださいよ。ここから出ましょう」

 「……」

 「……あれ?」

 「どうして雪女の奴はまったく動かないんだ?」

 「えーと、もしかしたら昨日のツッコミが急所に入って……?」

 「…………まあいいや、とりあえず、俺が担いでここから出よう」

 死んでたらやっぱり私の所為になるんですかね……?
 ツッコミ殺人? それは嫌だ……。





 「さて千夏……。実はな、ちょっとばかし悪い話があるんだ」

 「え……? 悪い話ですか? いきなりそれを聞かされるのはちょっと嫌なんですけど……」

 「じゃあ少し楽しい話をしてから聞かせてあげようか?」

 「少し楽しい話ってなんですか?」

 「女神さんの奴が、出会い系の掲示板にはまりました」

 「ぶふーっ!! 何やってるんですかあの人は!? 一応女神なんでしょう!?
  まったく高貴さが感じられない事やっているんじゃないですよ!!」

 「ちょっと楽しい話だろ?」

 「楽しいというよりはあきれる話なんですが。
  ……それで、悪い話っていうのは何なんですか?」

 「出会い系で出会った人と待ち合わせしにいった女神さんが誘拐されました」

 「なんですとー!? 大事件じゃないですかそれは!!」

 「ああ、本当に。どうもね、俺たちが以前使った手をまるっきり真似されたらしいんだ」

 「バカですね。本当に」

 「俺たちも同じことやっていたがな」

 「あれ……? ちょっと待ってください。私たちと同じ方法を使って女神さんを誘拐したって事は、
  その犯人は……」

 「ああ、どうもリーファの影らしい」

 「なんですって!? リーファちゃんの影!?」

 私たちを部屋に閉じ込めている間に女神さんの方を襲うだなんて……なんという策士なのですか。
 思いっきり翻弄されていますよ私たち!!
 くそう……待ってなさいよりーファちゃん。絶対にあなたの事を捕まえてやりますからね。



 11月4日 土曜日 「不思議なお店」

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 「さて、どうやって女神さんをリーファさんの影から取り戻しましょうか?」

 「はい!」

 「おっ、いい挙手ですね雪女さん。じゃあ雪女さん発言どうぞ!」

 「お腹空きました! 何か食べさせてください!!」

 「知るか! 知るかこのごく潰し!! お腹鳴らしている暇があったら何かいいアイディアを思いつきなさい!!」

 「はい」

 「はいウサギさん。発言をどうぞ」

 「まずはリーファの影を捕らえて、そして女神の居場所を聞き出すのがいいと思います」

 「なるほど。確かにそれはいい方法かもしれませんね。闇雲に探すよりはずっとマシそうです。
  でも問題はどうやってリーファちゃんの影を捕まえるかという事なんですよね。
  彼女、どうやら自由に空間を行き来できるらしいですし」

 「はいはいはい!!」

 「おーっ。元気だけは人一倍ですねえ雪女さん。
  じゃあさっきの失敗を取り戻すためにも、何か素晴らしい発言をどうぞ!!」

 「お腹空きました! マジでご飯ください!!」

 「もうダメだな。ダメダメだな。
  雪女さんはお手つきとしてしばらくの間黙っていなさい」

 「そうじゃなくて! 本当にお腹空きすぎて死にそうなんですけど!?
  これは、この空腹感だけはどうにかして!!」

 「どうにかと言われてもですねえ。せっかく部屋から出たんだから、何か食べればいいのに。
  私はあそこから解放された後、きちんとカップヌードルで食事を取りましたよ?」

 「私は気絶していたから食べれなかったんです!! それにどこ探しても食料なんて見当たらないし……。
  本当にこのままだと餓死してしまいますよ!!」

 「うーん……私が食べた奴で最後だったのかな。
  でも食料なんてこのお城の中で簡単に補給できるわけがないし……」

 「またコンビニにでも行けばいいんじゃないか?」

 「あっ。そうか。それがありましたね。
  じゃあ仕方ないですから、雪女さんのために無人コンビニに窃盗をしにいきましょうか」

 「どうあってもお金を払うつもりは無いんですね千夏さん……」

 店員が居ない店の品物は、タダと言っても過言ではないと思う。







 「……」

 「……」

 「……千夏さん、ウサギさん、これは…………」

 「ええっと……」

 私たちはこのお城の中のコンビニの前に居ます。相変わらず建物の中にがっつりとコンビニが嵌っている風景はシュールですが……
 まあその事はどうでもいいのです。
 問題は隣。コンビニの隣にあるお店の存在が問題なのです。

 そう。そのコンビニの隣にあったお店の看板にはどうどうと……『女神屋』と書かれていたのでした。



 「女神さんって市販されていたんだね。すごいびっくり」

 「びっくりっていうか普通におかしいですよこれは……」

 「代えの女神さん、買っていこうか?」

 「え!? 本物はどうするんです!? リーファさんの影の方にさらわれてしまった方は!?」

 「代わりが居れば、それでいいんじゃないかな……」

 「見捨てる気満々なんですか!?」

 ま、それはともかく入ってみましょうよ。
 なんだか面白そうだし。









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