11月13日 日曜日 「みたびマゾ企画」


だから、コレをやってましたって。

 11月15日 月曜日 「寒さに負けて」


 昨日の連続更新企画の疲れからか、私は深い夢の中です。
 連続更新企画の翌日は、毎回おかしくて長い夢を見ると相場が決まっています。
 どうせ今回もバカげた夢を見…………

 「って寒!?」

 あまりの寒さに普通に目が醒めてしまった私。
 思いっきり寝てしまいたかったので、少しいやな感じです。
 まだ疲れもとれていませんし。

 

 「な、何なんですか……この寒さは?」

 ガチガチと震えてしまいます。
 この部屋の温度は、絶対に氷点下ですよ。
 なんか、つららみたいのが天井に出来てるし。

 

 「ようやく起きましたね。
  もう、お寝坊さんなんだから」

 どんどん身体から熱を奪われていく私を、そりゃあもう素敵な笑顔をしている雪女がつつきます。
 うん、腹立つ。


 「もしかして……っていうかもしかしなくても、これってあなたの仕業ですか?」

 「私のせいじゃありませんよ!!
  ちゃんと7時には起こしました!!」

 ……ああ、私は遅刻決定なんですね。……じゃなくて。


 「いつもより早く起きてても、結局寝過ごしてることじゃなくて、
  部屋の状況のことですよ」

 「あ、気づきましたか?」

 「ええ、そりゃあもちろん」

 「千夏さんが学校に行ってる間に、たまに片づけしてたんですよ?
  妻の勤めとして」

 「そうじゃなくてですね!!」

 凍ってることは眼中に無しですか!?

 

 「部屋中、凍ってるじゃないですか!!」

 「あ、本当ですね。
  なんだか過ごしやすいなぁと思ったら、そういう訳だったんですね」

 あなたにとってはアイスバーンな部屋の床は
 ホットカーペット並みに縁の下の力持ちなんですか。

 

 「私じゃありませんよ。この氷は」

 「あなた以外に、誰がこんなこと……」

 「今年は異常気象がよくありますし」

 「局地的に寒波が襲ってきたっていうんですか……?」

 「いえ、ここら辺一帯は一面雪化粧ですよ?」

 「え……そんなバカなこと……」

 部屋の窓を開けて外を見てみると、本当に一面雪だらけでした。
 私の家の周辺はテーマパーク建設中の工事現場のため、
 風情なんて全然ありませんが、とてもきれいです。


 「うわぁ……日本海側じゃないのにこんなに積もるなんて」

 「過ごしやすくていいですよね」

 私は雪女のたわ言を無視してベッドにもぐり込みます。

 

 「うう……かけ布団の中も寒い」

 「それじゃあ私が添い寝して差し上げましょうか?」

 「けっこうです。気持ちだけ受け取らせてもらいますよ」

 「私、こうみえてあったかいですよ?」

 「あなたのプロフィールをどんなにくまなく見たって、
  そんな特徴の記述はありません」

 「タクシーとかお釣りはいらないって言いますもん」

 「懐はあったかそうというエピソード、ありがとうございます。
  でも、やっぱりいいです」

 「そう言わずに〜……」

 こんなやりとりでじゃれあっている(私は身体のために割りと必死)こと数分。
 突然部屋の扉が開きます。

 「っていうか、学校行きなさい!!」

 「は、はい……お母さん」


 ブルーマンデー、逃避失敗。


 

 11月16日 火曜日 「おばあちゃんと釣り」


 「あれ? これって……」

 リビングに無造作置かれていた物は、手作りっぽさが香る竹の釣竿でした。


 「ああ、それは私のよ」

 近くにいたおばあちゃんが答えます。


 「おばあちゃんって釣りするんだ?」

 「オーストラリアに居たときはよくやったわよ〜。
  川魚とか釣って生き延びたんだから」

 生き延びたって……オーストラリアではサバイバル生活してたんですか?
 お歳なんですから、ちゃんとした所に住んで生活してください。
 お願いだから。

 

 「でもどうして釣竿をこんな所に出しっぱなしにしてるんですか?」

 「久しぶりに釣りをしてみようと思って」

 「へぇ〜……」

 「今日の夕飯、楽しみにしてなさい。
  美味しい秋魚をたんまりご馳走してあげるから」

 それは本当に楽しみですね。


 そんな感じで釣りへと出かけて行ったおばあちゃん。
 帰ってきたのは夕飯のちょっと前くらいでした。

 

 「ただいま〜」

 「おかえりなさいおばあちゃん!
  魚、釣れましたか?」

 「ええ、大漁よ」

 そう言ってクーラーボックスを私に差し出します。

 「へぇ〜、どんなのが釣れて……」

 私が開けたクーラーボックスの中には、カニがぎっしり詰まってました。


 ……カニ?


 「おば〜ちゃ〜ん……」

 「久しぶりの釣りだったからね、やり方忘れてないかって心配だったけど、
  全然大丈夫だったわ」

 「……っていうかコレ、密漁でしょ?」

 「何言ってるのよ千夏ちゃん。
  たまたま私の竿に、誰かのカニ用の仕掛けが引っかかって、思わず釣り上げてしまっただけよ」

 水深の深い所にあるはずの仕掛けを釣ってしまったって……一体どこで釣りしてきたんですか?
 北の大海原?


 「でね、収穫はそれだけじゃないのよ」

 「……一体何を釣ったんですか?」

 ロクでもないものの様な気がして仕方ないです。


 「ちょっと大きくて家には持ってこれなかったから、一部分だけ頂戴してきたの。
  残りは港に置いてきたわ」

 「ふ〜ん……」

 おばあちゃんが私に見せたのは赤茶けた錆鉄で、そこにはとある名称が書いてあって。


 「お母〜さ〜ん!
  おばあちゃんが戦艦大和を釣り上げやがったよ〜!!」


 っていうかそれは釣りじゃなくて、
 もはやサルベージです。


 

 11月17日 水曜日 「遊園地完成」

 

 「千夏!! やったわよ!!」

 「朝からうるさいなあ……静かにうたた寝させてくださいよ」

 「あなたね、本当に寝すぎよ?」

 日常生活が、疲労困憊になるほど大変なんですよ。


 「で、なにがあったんですか?」

 「あ、そうそう忘れるところだったわ。
  なんとね、もう近所の工事の音に悩まされなくて済むのよ!!」

 ああ、確かに近所は今まで工事してましたね。
 近所っていうか、私たちの家を抜かした近辺が。


 「工事が中止になったんですか?」

 「いえ、完成したのよ」


 ……確か、遊園地を建てるための工事じゃなかったっけ?
 工事が始まってから、1年どころか半年も経ってませんよ?
 どんだけスピード工事なんですか。


 「いや〜最近の建築技術ってすごいわねぇ」

 「そうですね。最近の建築技術は、欠陥だらけでも完成と言い張りますからね」


 多分、というか絶対に手抜き工事くさいです。

 

 「さあ、行きましょう!!」

 「……どこに?」

 「もちろん遊園地に決まってるじゃない。
  私たち家は遊園地まで徒歩10歩なのよ?
  こんな立地条件で行かないわけにはいかないわ」

 「確かにそうかもしれませんけど……っていうか、オープンはまだですよね?」

 「レッツ、敵地侵入」

 忍び込むんですか。

 

 そういうわけで、家を囲うように存在している遊園地の塀を越え、
 私たち家族全員は無事に敵地に侵入出来ました。
 見つかったら、間違いなく不法侵入で逮捕されます。

 

 「さあみんな! タダなんだし思いっきり遊びましょう!!」

 「お、お母さん……誰かに見つかったらどうするんですか?」

 「実力行使担当が二人もいるんだし、逃げられるでしょ」

 ウサギさんとおばあちゃんを指さしてお母さんが言います。

 「人をエスケープツールにするな」

 「腕がなるわね♪」

 ……まったく間逆の反応です。実力行使担当。
 どうでもいいことですが、おばあちゃんのセリフにお母さんとの血のつながりを感じました。

 

 


 「ウサギさんウサギさん! あれ、あれに乗りましょう!!」

 さて、最初の方は渋っていた私ですが、久しぶり……というか物心ついてからは初めての遊園地にもうウキウキ状態です。
 本当ならばオープン前なのでアトラクションは動かないはずですが、
 黒服がハッキングして制御を握ったらしく、文字どおり乗り放題なんです。
 たまには役に立つな。黒服は。

 

 「ジェットコースターかぁ」

 「もしかしてウサギさん、苦手とか?」

 「違うって」

 「本当ですか〜? そう言う人に限って泣いちゃったりするんですよね」

 「言ったなこの〜」

 「きゃ〜」

 なんて言うか自分でもおかしいと思うくらいハイテンションです。
 おそるべし遊園地の魔力。


 「わ〜楽しみですね〜」

 ウサギさんを連れてジェットコースターに乗り込み、出発を今か今かと待っています。
 こういう時間が一番楽しいんですよね。


 「うわっ動き出しましたね」

 ゆっくりとレールの上を動くジェットコースター。
 一番上まで上がっていくのがもどかしいです。


 「なんかドキドキしますねウサギさん」

 「そうだな。ここまで高いとすごい迫力が……」

 急に言葉に詰まるウサギさん。
 まさか本当に怖くなってしまったのでしょうか?


 「ウサギさん、どうかしたんですか?」

 「……気のせいかもしれないけど、レールが切れてる所があるんだ……」

 ……え?

 「そ、そういうジェットコースターなんじゃないですか?」

 「でも側に工事用具が置いてあるし、あれはどうみても工事途中……」

 「そ、そんな……ってきゃ〜!!!!」

 何の知らせもなくゴール、いやむしろ天国へと走り出すジェットコースター。
 というかやっぱり手抜き工事だったな〜!!


 「千夏!! しっかり捕まってろよ!!」

 「え? ええ!? うきゃー!!」

 

 時速80キロ以上出しているジェットコースターから飛び降りるというウサギさんの荒行のおかげでなんとか助かりました。
 私は無傷ですが、地面に着地する時に私をかばってくれたウサギは傷だらけです。


 「ウサギさん……家に帰りましょうか?」

 「いいのか? 遊園地を楽しまなくて」

 「ウサギさんがこんな状態で楽しめませんよ……」

 それに怖くて他のアトラクションに乗れませんし。

 

 「そう……それじゃ、帰るか?」

 「はい!! 家で一緒にビデオでも見ましょうよ」

 「いいね、それ」


 ウサギさんさえ傍に居てくれれば、自宅は遊園地より魅力的な場所になるんです。

 

 ちなみに、家に帰る途中でおばあちゃんたちのはしゃぎ声と、
 見知らぬ人々の叫び声を聞きました。

 ……実力行使、したんですね?

 

 11月18日 木曜日 「競馬で一攫千金」


 「ねえ千夏」

 「な〜に〜お母さん?」

 「好きな数字とかある?」

 「好きな数字、ですか?
  う〜ん……4とか」

 「じゃあ嫌い数字は?」

 「9かなぁ……」

 「よし、それじゃ『ケッコンシキノオミヤゲ号』と『オセイボノタオル号』ね」

 「……なんですか、そのもらったらちょっと困る物たちは」

 「馬の名前よ。私、競馬でも始めようと思って」

 ……競馬!?

 「なに考えてるんですかお母さん!!
  貧乏人にギャンブルに手を出す余裕なんてないですよ!!」

 「貧乏だからこそ、一攫千金に夢を馳せるんじゃない」

 「大抵その手の人間は地に落ちると相場が決まってるんですよ」

 ギャンブルなんてもともと儲かるようには出来てないんです。
 客側が損しないと、向こうは経営できないんですから。


 「でもさ、競馬とかなら情報とか整理して、賭ける対象を自分で選べるだけいいと思わない?
  実力さえあれば、儲かる確率が上がるんだから」

 「さっき私に好きな数字と嫌いな数字を聞いて馬を決めた人が何を言いますかね」

 「大丈夫大丈夫。こういうのは欲のない人がやったほうが当たるんだって」

 舌が乾かぬうちに運に任せちゃいましたよ。この人。

 

 「で、いくら賭けたんですか?」

 「全財産」

 「お母さん!!」

 本当に何を考えているんですか!?
 お母さんがこんな浅はかな考えに人生を任すような人だなんて、
 すごくショックです。


 「金額で言うと、3000円」

 ……うちの全財産が3000円ぽっちだったなんて……またもやショックです。

 

 「どうぞ勝手にやってくださいよ。
  なんて言うか、当たらなかったら一家心中コースですけど」

 「ええ、頑張るわ!
  期待して待ってなさい!!」

 首に縄まいて待ってますよ。

 


 いよいよお母さんが全財産を賭けたレースが始まります。
 十数頭の馬たちにわが家の未来がかかっていると思うとなんだかやるせないです。


 「いよいよスタートね!!」

 「そうですね……」

 私たちはTVの画面でレースを見守っています。

 「……ねえ千夏? その荒縄は何?」

 「すぐに、必要になると思いまして」

 そんなことを喋っているうちに馬たちがスタートしました。
 お母さんが買った馬券は、4番の馬と9番の馬が1,2フィニッシュすればお金がもらえるというもの。
 確率はすごく低いものですが、どうか当たって欲しいです。


 「よ、4番と9番はどこにいるの!?
  全然画面に映らないんですけど!」

 「一番後ろのほうを走っているわよ」

 ……絶望的じゃないですか。
 先頭集団が最後の直線にさしかかり、
 それでもなお4番と9番の姿が見えないことを確認した私は、
 おもむろに荒縄を手にしました。
 と、その時

 『おおっと〜! これは一体どういうことだ!?』

 突如解説者の驚きの声が聞こえます。
 私がTV画面に目を移すとそこには……!?


 弾丸のように次々とライバルたちを追い抜いていく4番と9番。
 その走りはまるで空を駆けているみたいです。

 ……っていうか、実際飛んでます。


 『なんという大判狂わせでしょうか!!
  一着は9番、そして二着は4番です!!』

 「お、お母さん!!
  今、馬が飛んでなかった!?」

 「何言ってるのよ千夏。
  ペガサスじゃあるまいし」

 「そ、そうですよね。冷静に考えればそんなことあるわけ……」

 「お母さんが、後ろから馬をぶん投げた訳じゃあるまいし」

 「おばあちゃんですか!?
  おばあちゃんの仕業なのですか!?」

 「何はともあれよかったじゃない。
  万馬券だし」


 ……なんて力任せなイカサマなんですか。


 

 11月19日 金曜日 「謎の音」


 『へへめけ〜』

 恐ろしいぐらい気の抜ける音が鳴ります。


 「な、なんですか? 今の音は……?」

 「さあ……聞いたことがないような音だったけど」

 一緒に居間でテレビを見ていたウサギさんも、珍妙な音を聞いていたらしいです。
 幻聴かと思っていたので少し安心。


 『へへめけ〜』

 「あ、また鳴った」

 「動物の鳴き声ではなさそうだけど……家鳴り?」

 こんな風に鳴く家はいやだなぁ。

 

 『へへめけ〜』

 「もしかして霊障とかなんじゃ……」

 「まさかそんな……」

 『へへめけ〜』

 「ああ! なんだか、さっきより大きくなった気がする!!」

 「確かに音源は近そうだな……」

 「自爆霊の仕業ですよ!!
  お母さんの仕掛けた地雷で命を落とした郵便配達員たちの怨念なんですよ!!」

 「落ち着けよ千夏。後、自爆じゃなくて地縛だぞ」

 どっちでもいいじゃないですか。それは。

 

 『へへめけ〜』

 「また鳴りましたよ!」

 「どこから聞こえてくるんだ……?」

 「すぐ近くから聞こえてくるんですけど」

 そうまるで、私の身体の中から聞こえてくるような……


 『へへめけ〜』

 ……っていうか、実際聞こえてきます。


 「う、ウサギさぁん……」

 「ん? どうかしたか?」

 「いえ、なんでもないです……」

 言えないですよ。
 あの間抜けな音が、私のお腹の空いた音だなんて。
 ちょっとお腹が空いたかなって思ってましたけど、こういうことになるなんて。


 『へへめけ〜』

 「しかし本当に変な音だな」

 「そうですか? じっくり聞いてると、愛嬌のある音じゃありません?」

 「そうか……?」

 「そ、そうですよ」

 この変な腹の虫の鳴き声は、黒服が仕組んだことに間違いありません。

 

 「そ、それじゃあウサギさん。私、ちょっと行くところあるんで」

 「え? どこに?」

 「食料を調達しつつ、ターゲットの元へと侵攻するんで……」

 「……よく分からないけど、まあがんばれ」

 「ええ、しこたま泣かしてやりますよ」

 ウサギさんの前で恥かかせた罪、償ってもらいますよ。黒服。


 

 11月20日 土曜日 「おばあちゃんの財産」

 「おかあさん、いつになったらオーストラリアに帰るの?」

 「あら、いきなりなんなの春歌ちゃん?」

 私と一緒にTVを見ていたおばあちゃんに、突然そんな声がかけられます。
 声の主はもちろんお母さんで、すごく嫌そうな口調が、そのまま本心を表しているように思えます。


 「ちょっと気になって」

 「う〜ん、どうしましょうかねぇ」

 なんていうか、さっきの質問は帰れと間接的かつ、分かりやすく伝えている気がするんですけど。
 京都でお客様にお茶漬けを出すより。


 「もうそろそろおばあちゃんが来て1ヵ月になるじゃない?
  飽きたでしょ? ここにも」

 「そんなこと無いわよ。それに、まだここでやりたいことあるし」

 「やりたいこと?」

 「う〜んと、復讐とか」

 何しに日本に来てるんですかおばあちゃん。


 「ふ、復讐って誰によ!?」

 「私の手元から勝手に巣立って行って、ろくに連絡もしてこなかった愛娘とか」

 「……くっ」

 お母さん、もしかしてお父さんとは駆け落ちだったんですか?


 「まだ根に持ってたの……?」

 「そりゃそうよ。獲物を狩って意気揚々と家に帰ったら、下手な字で書かれた書置きのみが残されてるんだもの。
  あの時のショックといったら……」

 獲物って……やっぱりおばあちゃんたちはサバイバル生活をしてたんですね……?

 

 「だって嫌だったんだもん!! 狩猟生活が!!」

 そりゃあ嫌にもなりますよね。この現代社会に狩猟生活は。

 「だからってあんな出て行き方はないでしょう。どんなに悲しかったと思ってるの?」

 「でも、私はもう子どもじゃなんだから」

 「そうは言ってもねぇ」

 「いつまでも、守ってもらう訳にはいかないでしょう?」

 「私にとってはいつまでも春歌ちゃんは子どもなんだから。
  守るわよ私は。ずっと」

 「お母さん……だから私はもう……」

 「それに千夏ちゃんも可愛いし〜。ずっと見守っていたくなっちゃった」

 そう言われましても、なんだかおばあちゃんと一緒に居た方が危険な感じがするんですけど。


 「うう……お母さん、なんていうか、食費とかそういうのが大変なんですよ!!」

 あ、ついに経済的理由を盾にして追い出そうとしましたよ。

 「お金ならあるけど?」

 そう言っておばあちゃんはお母さんに通帳を渡します。

 「えっと……一、十、百、千、万、十万、百万、一千ま……億!?」

 「若い時に、たんまり貯めてたのよね。
  傭兵とかやって」

 おばあちゃんにまた謎の経歴が増えました。


 「お金、これくらいあれば足りるわよね?」

 「ぐ、ぐぬぬぬぬ……」

 これはどうみても、お母さんの負けです。
 精神的にも、そして何より経済的にも。


 「こ、これからもどうぞ、おくつろぎください」

 「分かればよろしい」

 おばあちゃんの財産のおかげで、お母さんはますます頭が上がらなくなりました。


 




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