11月28日 日曜日 「またまた恒例ですが」


これをやってましたんだって。

 11月29日 月曜日 「最後の審判」


 「千夏さん、こんにちは」

 「こんにちは……?」

 目の前の見知らぬ男性に挨拶されたので、とりあえず返事しました。
 っていうか、ここはいったい何処なんでしょうか?
 空が広くて、いたる所に白っぽい建物が建っていて、
 小鳥がさえずり、木々が音色を奏でていて、
 まるでこの世の楽園のように美しい場所はいったい……?


 「あの〜……ここってどこ?」

 「うぇるかむ・とぅ・ざ・へぶん」

 「……」

 まさしく楽園、もとい天国らしいです。
 ……そんなバカな!!


 「え!? ええ!? 私、死んじゃったんですか!?」

 「はいそうです」

 「何で!? 理由は!?」

 まさか寝込みをリーファちゃんに襲われて……。

 「過労死だったらしいですよ」

 「しょ、小学生で過労死……」

 昨日の連続更新企画がきいたんでしょうね。絶対。


 「そうかぁ……私、死んじゃったんですかぁ……」

 ウサギさんとかお母さんとかと離ればなれになってしまったのはすごく悲しいですけど、
 よくよく考えてみればウサギさんたちも時が経てばこっちにくるはずなんで、
 そんなに悲観するもんでもないと思います。
 むしろイジメられることが無くなるんだから、こっちにいたほうが断然よしですし……。

 


 「さて、それじゃあ千夏にはこれから最後の審判を受けてもらいます」

 「え? 最後の審判!?」

 「はい。千夏さんがこの天国にふさわしい人間か判断させてもらうんです」

 「ふさわしくないっていうことになったら……?」

 「ごぉ・とぅ・へる」

 地獄行きなんですか。
 ま、まあ私は地獄に落とされるような悪いことなんてしたこと無い…………はずなんで、大丈夫でしょう。
 少し、よからぬ思い出が頭をよぎりましたけど。

 


 私がさっき話していた男の人に連れてこられた所は、
 まるで裁判所のような建物でした。
 ここで最後の審判を行うらしいです。


 「これから第27751538回、最後の審判を行います」

 最後といいながらやけに開催数の多い審判ですね。
 なんだかこんがらがります。

 

 「え〜、それでは被告人千夏のプロフィールですが……」

 「異議あり!!」

 突然、私の傍に座っていた人が立ち上がってそう叫びます。
 多分弁護士か何かだと思いますけど……。


 「この審判において、被告人のプロフィールは全く関係の無いものであります!!」

 「主張を認めます」

 私のプロフィールって関係ないのー!?

 「やりましたよ千夏さん。
  これでこの審判が不利に進むことはありません」

 「ちょっと、それって私のプロフィールの中には
  天国から追い出される要素があるってことですか!?」

 なんだか酷くショックなんですけど。

 「それでは千夏さんの人間性についてお話したいと思います」

 ああ……そんなことを弁護人に聞いている間に、
 私の人間性を問われちゃってますよ。


 「千夏さんは……なんと、ツッコミ症です!!」

 「な、なにぃ!?」

 「ツッコミだって!?」

 途端にざわめきだす裁判所内。
 私がツッコミポジションなのがそんなに大変なことですか?


 「裁判長!! 被告人は、時折ボケも担当します!!」

 おい、弁護人。
 それは何か効果のあるフォローなんですか?


 「たとえそうであっても、ツッコミの罪は重いぞ……」

 苦々しく呟く裁判長。
 どうやらあの世ではツッコミは犯罪みたいです。
 そんなバカな。

 

 「例え……例え彼女がツッコミだったとしても、
  人間であることには代わりありません!!」

 「ちょっと、こっちではツッコミには人権が無いんですか」


 「つ、つっこんだぞ!!」

 「ああ、おそろしや……」

 「なんでだよ!!」

 「きゃ〜!! つっこまれたぁ!!」

 パニックになる裁判所。
 とりあえずつっこみまくる私。

 

 「判決を言い渡す!! 千夏、お前は帰れ!!」

 「なんでですか!?
  天国から追い返されるって、かなり人間的に問題ありって感じじゃないですか!?」

 「うっさい、この万年ツッコミが」

 「私の周りにはボケが居すぎるから悪いんですよ!!」

 

 

 ……
 …………
 ………………


 ……目が醒めるとそこは私の部屋で、
 デジタル時計の表示をみると11月29日の午後11時でした。
 遅刻、決定です。

 


 ……あれは私の夢で、
 全世界のツッコミポジションの人が天国に行けないという理不尽なことが、
 あの世で起きていないことを祈ります。


 

 11月30日 火曜日 「習字の時間」

 

 「今日の習字の授業は、自分の好きな言葉を半紙に書いてください〜」

 先生のそういう説明で、習字の授業が始まりました。
 何故か知りませんけど、好きな言葉を書けと言われたら、
 ボケを期待されているような気がするのは気のせいでしょうか?
 まあ私の頭が日常に毒されてるだけなんでしょうけど。
 とりあえず半紙には『ウサギさん』って書いておきます。

 

 30分後。みんな半紙に好きな言葉を書き込んだようで、それを先生に提出しています。
 ちなみに、私の作品を見た先生は、
 首を傾げていました。

 


 「さて、それじゃあ出来のいいものをいくつかお手本として見てみようか?
  えっと、まず山本くんのやつは……『三度寝』」

 やけに素敵な生活を送ってますね、山本くん。


 「いかにも眠いって感じの筆跡が、文字に説得力を生み出してますね」

 もっともらしい解説してますが、それってただ下手なだけじゃ……。


 「奨励として、山本くんには今日の給食のメロンを一つ差し上げます」

 うわっ、すごい羨ましい。
 こんなことならもっと真面目書いておくべきでしたね。

 

 「えっと次の人は……川原さんの作品です。
  『ゴジラVSモスラ』ですか。
  素晴らしく迫力のある作品ですね」

 まあ確かにそのまま映画の題字に使えそうなぐらい上手いですけど、
 好きな言葉って言われてこれを書きますか? 普通。

 

 「川原さんには今日の給食のプリンを差し上げます」

 ……今日の給食ってプリンとメロンが同時に出されるんですか?
 無駄に豪華ですね。

 

 「最後は平井さんの作品。『連帯保証人』ですか。
  血のような朱い墨で書かれているのが、切羽詰まった感を表していて素晴らしいです」

 もしかして、私んちより辛い経済状況の人がいるんでしょうか?
 なんだかすごく応援したくなります。


 「平井さんには今日の給食のチョコレートケーキを差し上げます」

 栄養バランス悪すぎだろ今日の給食!!
 せめてばらけてくださいよ!
 なんで一日にこんなにデザートが集中してるんですか!?

 


 「さて、今度は最悪な作品を紹介します。
  ちなみに、先ほどの奨励である給食ですが、この最悪な作品を書いた人の給食から進呈されます」

 うわ……それってすごく辛いじゃないですか。

 

 「それじゃその最悪な人ですが、物の見事に訳の分からない物を書いてくれた、
  千夏さんです」


 ………ええ!? 私なんですか!?


 「ちょっと先生!!
  どうして私がっ!?」

 「ウサギってなんだバカやろ〜。っていうか敬称付きなのかよ。
  分かんない。全然分かんないよ。


  …………と言う理由です」


 見事な正論です。

 

 12月1日 水曜日 「謎のパーティー」


 「今度の休みぐらいに、何かパーティーでもやろうと思うのだけど、
  個性的なパーティーにするためのいいアイディアとか無い?」

 学校から帰ってきて、台所で手を洗っている私にお母さんがそんな質問をしてきます。

 「……なんでパーティー?
  クリスマスにはまだ早すぎますよ?」

 「憧れるじゃない。むやみやたらにパーティーを開くことって」

 別に無理して上流階級ぶる必要は無いと思うんですけど。
 私たちは私たちらしく底辺をさまよっていればいいと思います。


 「ねえ、いいアイディアない?」

 「ないですよ。そんなの」

 「もうちょっと真剣に悩んで答えを出してよ」

 お母さんの頭の痛さには、真剣に悩んでいるんですけどね。


 「あっ、そうだ! いいの思いついた」

 「お母さんが思いつく物なんだから、どうせろくでもないアイディアなんでしょ?」

 「失礼な。すこぶる楽しいアイディアよ。
  意識を手放したくなるくらい素敵な思いつきよ」

 「調子に乗って変な脳内麻薬を分泌しないでください」

 「着ぐるみパーティーとかどうよ千夏さん」

 「着ぐるみパーティー?」

 「みんなで着ぐるみ着て、パーティーするの」

 「それ、ただのコスプレパーティーじゃないですか」

 「違うわよ!!
  コスプレパーティーだったらメイド服はオッケーだけど、
  着ぐるみパーティーだと不可なの!!
  これは、すごく厳しいラインなのよ!?」

 知りません。
 お母さんのそんな熱い想いだなんて、知ったこっちゃありません。

 

 「着ぐるみってどんなのがあるんですか?」

 「いろんな種類があるわよ。
  マグロとか鯖とか鱚とか」

 「何でみんな魚ばっかりなんですか!?」

 「ホタテもあるわよ」

 「ちょっと範囲が広がって魚介類になっただけじゃないですか!!」

 「他に着ぐるみって……思いつかないわね」

 「どんだけ狭い視野で生きてるんですか。
  ライオンとかパンダとか、いろいろあるでしょ?」

 「ガッツ石松とか」

 見てみたいよ。
 ガッツ石松の着ぐるみ。


 「それで、着ぐるみ着て何するんですか?
  ただ飲んだり食ったりしてるだけだったら、全然着ぐるみの意味がないですからね?」

 「え〜と、着ぐるみを着て……将棋大会」

 すごく個性的なパーティーですね。


 「意味わかんないですよ!!
  なんでわざわざ着ぐるみで将棋なんかしなくちゃいけないんですか!?」

 「着ぐるみの暑さに耐えて将棋をうつことこそ、
  堪え忍ぶ和の心を理解できるという……」

 「なんとなくもっともらしい理由をつけないでください」

 「それじゃあ……川柳大会」

 「だから、全然着ぐるみと関係ないじゃないですか!!」

 「いつもと違った姿をすることで視野が広がり、感性豊かな川柳が出来……」

 そういう後付け的な理由はいいんですってば。

 

 12月2日 木曜日 「謎の収集車」


 「壊れて使えなくなった電子レンジ、オーブントースター、
  冷蔵庫など、無料でお引き取りいたします」

 家でお菓子を食べながらテレビを見るという、
 素敵小学生ライフを満喫していた私の耳に、そんなスピーカーの声が聞こえてきます。
 よくいますよね。こうやって回収していく人たち。
 私の思い過ごしならいいのですが、ちょっと怪しい気がしません?

 

 「洗濯機、テレビなども回収いたします」

 スピーカーのボリュームが大きくて、ちょっと迷惑なんですけど。
 それにしてもこの人たちって、回収した物はいったいどうするんでしょうね?
 生態が謎すぎです。


 「いらなくなったビデオデッキ、バイク、濃縮ウランなどもお引き取り……」

 ……あれ?
 今なんだかものすごく物騒な名前がでませんでした?

 

 「処分に困る壊れたスクーター、乾燥機、死後1週間以内の絞殺死体なども……」

 そりゃあ処分に困るでしょうね。
 絞殺死体。


 「どうしても捨てられない別れた彼女の写真なども回収……」

 処分するのにはいい機会かもしれませんが、
 そんなの回収してあなた達はどうするんですか?


 「いらなくなったおじいちゃん、おばあちゃんもお引き取りいたします」

 現代版うば捨て山!?
 それ、いくらなんでも酷すぎでしょ!!

 


 「お母さん!! どこにいるのお母さん!!」

 突然私の所にお母さんが入ってきます。
 どうやらおばあちゃんを探しているらしいですけど……。


 「お母さん、いったいどうしたの?
  おばあちゃんがどうかした?」

 「いやね、あの回収業者にお母さんを引き取ってもらおうと思って」

 酷いことをさらりと言う人ですね。

 

 「お母さん〜? どこにいるの〜?」

 おばあちゃんを呼びながら部屋から出ていくお母さん。
 どう考えたって、黙っておばあちゃんが回収されるわけないと思いますけど……。
 まあ、頑張ってください。


 

 12月3日 金曜日 「新種のカキ氷」


 朝起きて、冷たい水道水で顔を洗って、あまりの冷たさに生きていることを後悔して、
 フラフラした足取りで食卓へと向かい、新聞片手に熱いお茶を飲みながら番組表をチェック。
 これが私の毎日の朝の行動です。
 平和ですね。ホントに。


 「千夏さん、千夏さん」

 「ん〜……? なんですか〜?」

 まだ脳みそがうまく起動出来ていない私に、毎日飽きずに台所でご飯を作っている雪女が話しかけてきます。


 「朝食作ったんですけど、食べてくれませんか?」

 「……イヤです」

 おおう、脳の活動が鈍っているから断るのに一呼吸置いてしまいましたよ。
 雪女が作ったご飯はろくでもない物だって分かってるのに。


 「そんなっ!! なんでですか!?」

 「だって朝から冷たい物なんて食べたくないもん」

 「ふふふふ……安心してください。
  今日私が作ったのは、『温かいかき氷』です!!」

 「なんだかすごいとんちがきいてそうな朝食ですね」

 っていうか温かいかき氷が存在していたとしても、朝食には向かないと思うんですけど。
 栄養価ゼロだし。

 

 「さあどうぞ、た〜んと召し上がれ!!」

 断ったにも関わらず、何事も無かったように自慢のかき氷を出してくる雪女。
 彼女の作ったかき氷は本当に温かいらしく、湯気がたってます。
 なんだか気持ち悪い……。


 「ううっ……なんかイヤだけど、一口だけいただきま〜す……パク」

 「ど、どうです?」

 「うわぁ……本当に温かいかき氷だぁ」

 人肌より温かい氷の食感が、すさまじく気持ち悪いです。

 「やった! 成功だぁ!!」

 料理としては完全に失敗ですけど。


 「っていうか、こんな奇妙なかき氷、どうやって作ったんですか?」

 「千夏さんへの愛を込めて作ったらそうなりました」

 私への愛がこんな未確認物体を生み出すなんて、気ぃ悪いです。


 「少なくともかき氷には向きませんよ、この氷は」

 「そうですか?
  冷たい物が苦手な人でも気軽に食べれるかき氷として人気に……」

 冷たくない時点でかき氷としての存在意義の80パーセントが消えて無くなっている気がします。

 

 「……そうだ!! この氷をスキー場とかで使ったらどうですかね?
  スキーウェアなんかを着なくてもスキーが出来て、風邪をひく心配もないって大人気間違いなしですよ!!
  きっとこれで億万長者ですよ!!」

 もしかしたら雪女のおかげで貧乏生活から抜け出せるかもしれません。


 「イヤです」

 おいコラ雪女。
 人の貧乏脱出計画をいきなり否定ですか?


 「何で!?
  これはすごい発明ですよ!?」

 「千夏さんとの愛の結晶を、何が悲しくて見知らぬいちゃつきカップルの為に役立てなくてはいけないんですか」

 見かけによらずみみっちい奴ですね。
 っていうか私はこの温かい氷に関しては何一つしてないのに、愛の結晶だなんて言われても困ります。


 「まあそう言わずにさ……」

 「ダメ。絶対にダメ。
  他人がどうなろうと知りません」

 身内以外の人には冷たい雪女ですね。

 

 12月4日 土曜日 「お風呂掃除」


 「大変よ!! 水道が、水道が反乱を起こしたわ!!」

 お風呂場で掃除していたはずのお母さんの、そんな悲鳴が聞こえてきます。
 多分、蛇口がどうかしちゃったんでしょうね。
 まあ私には関係ないので、さきほどから読んでいた漫画に目を向けたいと思います。


 「ああ!! ついに水道に人質にされてしまったわ!!」

 すごい反乱ですね。それは。


 「っ!? そんな要求なんてこの国が呑めるわけないでしょうが!!」

 何やら水道が人質の交換条件を出して、そしてそれが日本国家に関係のあることだったらしいです。
 ……自衛隊のイラク撤退でも要求したんですかね?


 「そんなことしても年金制度は改善されないわよ!!」

 どうやら年金関係の要求だったらしいです。
 一般人のためを思った反乱だったんでしょうか?
 すごいな水道。


 「あなた達にも親がいるでしょう? 両親の顔を思い浮かべてみなさいよ……」

 お母さん。その説得はどうなんですか?
 水道に、親っているの?


 「そう……戦災孤児だったのね……」

 戦災!? いつ生まれの水道なんですか!?


 「でも、こんなことしても誰も喜ばないわ。血の上に建つ平和なんて、戦時中にもその価値は劣るのよ」

 確か年金のために闘ってるんじゃなかったんでしたっけ?


 「ええ、分かってくれたならそれでいいわ。さあ、逃げなさい!!
  特殊部隊が突入してくる前に!!」

 水道逃がしちゃっていいんですか?
 今度からお風呂入る時どうするんですか。


 「みんな!! まっとうな水道になるのよ!! まっとうな、水道として生きるのよ!!」

 何やら感動なシーンがお風呂場で展開されているらしいですね。


 「……ふう、あ〜疲れた」

 綺麗に輝く汗を拭きながら、お風呂場から出てくるお母さん。


 お風呂掃除、お疲れさまです。

 

 




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