1月9日 日曜日 「連続更新企画」



コレをやってましたって。

 1月10日 月曜日 「本当のお年玉」


 「お母さん……お年玉としてもらった餅を全て食べきったんですけど」

 「よくやったわ千夏!!」

 「お褒めの言葉はどうでもいいんで、はやく本当のお年玉をください」

 「もうあなたって本当に良く出来た娘ね!!」

 「いや、だから、お年玉を……」

 「目に入れても痛くないほど……」

 そんなに私にお年玉をあげたく無いんですか?


 「お母さん。契約違反で民事訴訟起こされたくなければ、早くお年玉をよこしなさい」

 「実の子どもに法律を武器にお年玉を要求されるとは夢にも思わなかったわ」

 私もまさかこの歳でそんなこと言うとは思いませんでしたよ。
 大人になれば遺産相続とかでいろいろあるかとは思ったけれども。


 「では、全て餅を食べきり、デンプンをたんまり体内に溜め込んだ千夏には、これを差し上げます」

 うっ……好きで溜め込んだんじゃありませんよ。
 太らなきゃいいけど……ロボットだし、大丈夫ですよね?


 「じゃ〜ん!! 残り物のおせち〜!!」

 「……あの、お母さん?」

 「いやね、何だか今年は家族が多かったでしょう?
  だから、例年より多めに作ったんだけど、見誤っちゃってちょっと作り過ぎちゃったみたいな」

 「……うぅ」

 「千夏?」

 「うわぁん!! お母さんの、ばかぁ!!」

 「ま、マジ泣き!? 今まで散々酷いことしてきたけど、よりにもよってお年玉でマジ泣き!?」

 「ああぁん!! もうお母さんなんてぇ、嫌いぃ!!」

 「ああ、ごめん千夏! なんていうか、本当にごめん!!
  ほらちゃんと本当のお年玉をあげるから」

 「うぅ……本当に?」

 「ええ、本当よ。はい、これあげる」

 「あ、ありがとうお母さん……」

 泣きながらもお年玉の袋をあける私。
 その中には……。


 「今どき五百円玉はないよぉ!! うえ〜ん!!」

 「よく見なさいよ千夏!! 旧五百円玉よ?」

 「珍しくもなんとないよぉ!!」


 2時間ほど泣き続けた結果、ようやく5千円をもらえました。
 さっさと渡してくれればよかったのに。

 1月11日 火曜日 「女神宛てのの小包」


 「女神さ〜ん! 何か荷物が届いてますよ〜?」

 ……。

 「……女神さ〜ん?」

 「ん? どうかしたのか?」

 「あ、ウサギさん。女神さん見ませんでしたか?
  多分どこかの隙間に挟まってると思うんですけど」

 「もはや変な虫扱いだな。
  俺は今日は一度も見てないぞ?」

 「まったくもう……隙間産業女神のくせに行方不明とは生意気な……」

 「扱いが、不憫すぎる。
  ……もしかしてさ、カルタ大会の時にもらったクルージング旅行に行っちゃったんじゃないか?」

 「うわっ、せっかくの出番を旅行で潰してるなんて、
  ますます不幸に磨きがかかってますね」

 「少なくとも幸運の女神ではないことは確かだな」

 「う〜ん……それじゃあこの荷物はどうしましょうか?」

 「それにしても珍しいな。あの人に荷物が届くなんて」

 「なんでも通販しやがったみたいですよ。女神のくせに」

 「なに買ったんだろ?」

 「装着すると目立つようになるような品物ですよ。きっと」

 「聞いたことない。そんな不可思議アイテム」

 「キリンの首の剥製とか」

 「目立つね。確かにそれは目立つね。すごく長そうだし」

 「でもセンスは悪いですよね」

 「成金でも買わないな。そんな剥製は」

 「渋谷の109の1の部分とか」

 「……それを付けて歩くの?」

 「目立ちますよ?」

 「目立つけどさ、なにが何だかよく分からない」

 「そうですよね。傍目には1が歩いてるようにしか見えませんもんね」

 「っていうかこの小包はそんな大きな物が入ってるようには見えないだろ?」

 「……確かに。キリンの首が入ってるにしては小さすぎますよね」

 「多分入ってないけどね。キリン」

 「開けてみましょうか? そして無駄な努力してやがるよコイツって笑いましょうか?」

 「何か陰湿だなぁ……」

 「え〜い、ばりばり〜」

 「あ〜あ……本当に開けちゃったよ」

 「……」

 「……」

 「……えっと、これは」

 「シークレットブーツだな」

 「……努力も地味な人ですね。
  これじゃあ存在感を強化することは出来ないと思うんですけど」

 「まあ、その、頑張ってるんだよ。彼女なりに」

 「地味すぎて笑えないですし……」

 「そうだね……」

 「……」

 「……」

 

 たった一つの小包で、ここまでテンション下げさせるなんて、
 さすが女神。恐るべし。

 

 

 1月12日 水曜日 「リーファちゃん宛ての小包」


 「リーファちゃ〜ん! 荷物が届いてますよ〜!」

 ……。

 「……リーファちゃ〜ん?」

 「千夏……それってもしかして」

 「あ、ウサギさん。
  いやね、これはリーファちゃん宛ての小包でして……」

 「珍しいな。二日連続で小包が届くなんて」

 「そうですよね。お歳暮だって滅多に来ない家なのに」

 「ちょっと悲しいことをさらりというなよ……」

 「それにしても……この小包の中には何が入ってるんでしょうね?」

 「俺はなんとなく分かってるけどね」

 「え? そうなんですか?」

 「刃物とか爆発物とか、人を天国へ召しませう物ばっかりな気がします」

 「やっぱりそっち系統ですかね?
  ……う〜ん、小包からは変わった匂いはしませんよ?」

 「麻薬探査犬じゃないんだから、匂いで判別しようとするなよ」

 「……おや? 微かにアーモンド臭が……」

 「……青酸カリとか?」

 「ありえなくはないですが、毒物による暗殺は何度も失敗してるので、
  再びリーファちゃんが毒物を使うとは思えないんですよね」

 「何度も毒殺を謀られてたのか。
  そこに俺はびっくりです」

 「アーモンド入りの爆弾とかかなぁ?」

 「爆弾に豆を混入することに意味があるのか?」

 「爆発した時に皮が全部剥けて飛び散ります」

 「全然意味が分からないんだけど?」

 「節分の時に便利じゃないですか。
  一度にたくさんの鬼を追い出せますし」

 「追い出すどころか命を奪ってる。それは」

 「気になりますねぇ……中身」

 「やめとけって。
  人の荷物を開けるなんて趣味悪いぞ?」

 「だったらウサギさん!!
  もしこの小包の中身がゴルゴ13愛用のライフルで、
  それによって私の命が奪われたら、責任とってくれるんですか!?」

 「ありえなくもない所が怖いな……。
  分かったよ。好きにしなさい」

 「わ〜い! いざ、リーファちゃんのプライベートへ!!」

 「やっぱり興味本意なのかよ」

 「……」

 「……」

 「……これって、なんですかね? 缶詰みたいですけど……何が入ってるんだろ?」

 「……千夏、そこで待ってろ。
  今シェルターから防護服持ってくるから」

 「え!? ウサギさん? 何を言って……」

 

 …………
 ………………

 ……そうかぁ、BC兵器(生物兵器)かぁ。
 リーファちゃん、殺人ウイルスの宅急便での輸送はまずいと思うんだぁ。
 っていうか、マジでやめて。


 

 1月13日 木曜日 「醤油対ソース」

 

 「千夏!!」

 「な、なんですかお母さん?
  そんな怖い顔して……」

 また小皺が増えますよ?

 

 「あなた、醤油派とソース派どっち!?」

 「何でそんなどうでもよさそうな事……」

 「どっち!?」

 だから、怖い顔はやめてくださいってば。


 「そうですねぇ……ケチャップ派かな?」

 「ケチャップ派!?
  この千夏のトマト!!」

 何だその小学生低学年レベルの中傷は。

 

 「ふふふ、ほら見てごらんなさい春歌ちゃん。
  やっぱり日本人には醤油が一番なのよ」

 おばあちゃんが横にリーファちゃんをはべらせてそんなこと言ってきます。
 どうやらリーファちゃんも醤油派のようで。


 「でも私、目玉焼きにはソースをかけますよ?」

 「な、なんですって千夏ちゃん!?」

 「良くやったわ千夏!!
  さすが我が娘!!  このトマト姫!!」

 そんな二つ名は要りません。

 

 「どう? お母さん。
  これで2対2ね」

 「千夏ちゃんがまさかブルドックの手先だったなんて……」

 ブルドック?
 ……ああ、ブルドックソースのことですか。

 

 「みなさんどうかしたんですか〜?」

 お母さんがさぼってる家事を、健気にやってる雪女が話しかけてきました。
 そろそろ自分がいいように使われていることに気付きべきだと思うんですけど。


 「雪女ちゃんは醤油とソース、どっち?」

 「メロン味でお願いします」

 「かき氷のシロップじゃありませんよ!!」

 「雪女ちゃんの……このメロン!!」

 あ、いいなそのあだ名。
 トマトより全然素敵な感じがします。


 「雪女ちゃん。
  目玉焼きには何をかけるの?」

 おばあちゃんがそう雪女に聞きます。
 どうやら目玉焼きに何をかけるかが、
 どっち派かの基準に認定されてしまったらしいですね。

 

 「目玉焼きにはブルーハワイを……」

 「え!? またシロップ!?」

 新しくブルーハワイ派が誕生しました。


 

 1月14日 金曜日 「ちゃんこ」


 「力士が食べる物は、すべてちゃんこって言うんですって」

 「……どうしたんですかお母さん?
  急にトリビアの泉で仕入れた知識を披露して?」

 「それってさ、すごく便利よね。全部ちゃんこで済んじゃうんだもの」

 「そうですかねえ? 結構不便だと思いますけど」

 「『シエルおばさんのふわふわ海鮮パスタ』って長ったらしい名前が、ちゃんこで済んじゃう」

 「海鮮パスタがどうふわふわなのか気になりますが、確かにそうですね」

 「少年チャンピオンもちゃんこでOK」

 「食べないから。
  お相撲さんは少年チャンピオンを食べないから」

 「毎食のメニューを考える必要もなくなるし」

 「いや、別に名称がちゃんこになったからって作る物は一つでいいわけないですよ?」

 「そういうことを踏まえて、私たちの家で食べる物の名前は、すべて『チナツ』にします」

 「すごく不愉快です。踏まえないでください」

 「ちなみに今日の夕飯はチナツです」

 「ちなみも何もないじゃないですか。
  っていうか、夕食のメニューが全然分からない状態なんですけど?」

 「チナツ炒めとチナツサラダです」

 「うわっ、なんだか私が料理されてるみたいで気分悪いですよ」

 「食後には粒々チナツを用意してあるわよ」

 「私は粒々してません」

 「あと今日はチナツの上映会が……」

 「上映会!? なんだか、食べ物じゃなくなってきてますよ!!」

 「明日は家族みんなでチナツまで出かけようかと思います」

 「地名にまでなっちゃったよ。私の名前」

 「それで、みんなで崖の上からチナツします」

 崖の上から……?

 「って心中ですか!? 私の名前を心中っていう意味にしないでくださいよ!!」


 というか心中もごめんです。

 

 1月15日 土曜日 「お母さんの歳」


 「お母さん」

 「なあに? 千夏」

 「ちょっと聞きたいことあるんですけど……って、何してるんですか?」

 「爪楊枝で万里の長城を作ってるの。手伝う?」

 「スケールがでかいんだか小さいんだかよく分からない事してますね……」

 「……あ〜、めんどい。何でこんなことしてるんだろ……」

 「自分でやり始めたくせに……ってそれは別にいいとして、お母さんに質問があるんです!!」

 「なあに? さっさと言いなさい。今駐車場を作ってる所だから集中してるのよ」

 「ば、万里の長城に駐車場ってあるんですか……? まあ観光地だからありえなくはないですけど……。
  そ、そんなことより、お母さんって歳はいくつですか?」

 「……なんでそんなことを? あれか? 嫌がらせか?
  私の口から自分の年齢を言わせることによって、自己嫌悪を感じさせるという、そういう戦法か?
  残念ですけどっ!! 私はそんなことで凹むようなやわなハートはしてませんもんねっ!!」

 「そんなどうでもいい強がりはいいんで、さっさと言ってくださいよ」

 「舐めんなよ。母、舐めんなよ? 私、言っちゃうかんね!?」

 「言えよ。さっさと言えよ」

 「23です」

 「嘘つけ!! お母さんが23歳だったら、私は13歳の時に生まれた子っていうことになるじゃないですか!!」

 「いや〜、あの時は大変だった。通風でさぁ」

 「そりゃ大変でしょっ……って、通風が大変だったんですか!?
  13歳で通風になるなよ!!」

 「いいじゃない、別に。気にしないでよ」

 「お母さん、いい加減なこと言ってないでよ。
  ……あと、その時のお父さんの年齢は?」

 「45歳」

 「ロリコンだ!! それが思いのほかショックだ!!」

 「ロリコンって失礼ね。あなたの父親はきちんと私を愛してくれたんだから」

 「ちゃんと純愛だったんですね?」

 「ええ、素敵な人だったわ。お金持ってたし」

 「お母さんの方が純愛じゃなかった!! お父さんが、酷く可哀想だよ!!」

 「あ〜、若い頃は良かったわねぇ。何も考えずに生きていられたし」

 「っていうかさ、嘘でしょ?」

 「13歳でも、生物学的には子どもを産めるわよ?」

 「倫理的に間違ってます」

 「はんっ!! これだから最近の人間は嫌なのよね!!
  いい? 人間っていう生き物の一番の発情期は10代の後半であってね?
  その時に妊娠するのが動物としては一番自然な……」

 「変な理論で誤魔化すなよ!!
  っていうか10代前半じゃん!! お母さんが産んだって言い張ってる歳は、10代前半じゃん!!」

 「それはあれよ。テクニックでカバーよ」

 「訳分かりません。テクニックでどうカバーできるのか、全然分かりません」

 「まあ今だから思うわけだけどさ……」

 「……なにを?」

 「あの歳で産んだのは、失敗だったわ」

 「産まれて来てしまった私はどうすればいいんですか?」

 えらく傷つくんですけど。

 

 

 「おばあちゃ〜ん。聞きたいことあるんだけどいい?」

 「なに? 千夏ちゃん」

 「あのね、お母さんの歳を教えて欲しいなぁって」

 「それってあれ? 誕生日の時に、バースデーケーキと称して、沢山のロウソクを立ててやるのね?
  そういう攻撃なのね?」

 「違うよ!! そんな陰湿な攻撃しないよ!!」

 「あれ? それじゃあ直接年齢を言うとか?」

 「直接的な行動ですけど陰湿ですよ。
  ……ってそれはどうでもいいんで、お母さんの歳を教えてください」

 「えっとねぇ、確か春歌ちゃんは……」

 ようやく、お母さんの歳が明らかに……。

 「確か、22歳だったわよ」

 「自己申告より若かったー!?」

 




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