1月16日 日曜日 「カレーな日々」


 「三度の飯よりカレーが大好き。司会者の小林です」

 「カレーも飯ですよ?」

 「今日の『お宅のご飯を勝手に食べまショー』は、
  千夏さんちのカレーをいただきたいと思います」

 それ、どっかの番組をパクってませんか?

 「では千夏さん。どうぞ家のほうを案内してください」

 「あの〜、少しいいですか?」

 「はい? どうかしましたか?」

 「私、そんな珍妙な企画に出演するのをOKした覚えが無いんですけど」

 「この番組はアポなし礼儀なしがモットーですので」

 最悪なエンターテイメントだな。

 

 「おお〜、このボロい家が千夏さんのお宅ですか〜」

 「そんな失礼なこと言うならさっさと出てってください」

 「冗談ですよ。千夏さんのお宅というより、ご両親のお宅と言う方が的確ですものね」

 「そっちを訂正するんですか!? ボロいって言ったことを謝ってくださいよ!!」

 「そんなどうでもいいやりとりは結構なんで、早くご飯を食べさせてください」

 「本当に礼儀の無いテレビ番組なんですね」

 これだから最近のTV番組は。
 中途半端な笑いと愚かさしか無いんですよ。


 「お待ちしておりました」

 何故かお母さんが礼服でTVクルーを迎えます。
 っていうか、こういう場合は普段の格好をして、
 打ち合わせ無しに突然来ましたよっていう演出をするもんじゃないんですか?

 「さあどうぞ、私のいつも作ってるような、別に特別でもなんでもないカレーをお食べください」

 「うわぁ、あざとい」

 めちゃくちゃ具がたっぷり入っていて、美味しそうなカレーを出してくるお母さん。
 こんなカレー、食べたこと無いんですけど?

 「おおっ!! とても美味しそうなカレーですね?
  このカレーの名前はなんていうんですか?」

 「オメガティックブラストです」

 「えー!? これがおばあちゃんの必殺技と名高いオメガティックブラストなんですか!?」

 てっきりビームか何かだと思っていたのに、まさかカレーだったなんて。
 っていうかカレーで焼かれたことあるんですかお母さん。


 「素敵なお名前ですねぇ。それでは、いただきます」

 あっ、食べちゃいましたよ。
 何だか刺激的な味がしそうなカレーですけど、食べて大丈夫なんですかね?

 

 ……
 …………
 ………………

 「番組の途中ですが、急遽予定を変更して『細木数子のバンジージャンプ占い』の再放送を行います。
  当テレビは、お子さんも安心して見られる番組作りを心がけています」

 

 さすが必殺技。
 文字通り、必殺。


 

 1月17日 月曜日 「久しぶりのピンチ」

 

 「ただいま〜」

 毎日がサバイバルで有名な我が学校から帰宅してみると、
 何故かリビングのテーブルの上にほっかほかのコロッケが置いてありました。

 「これはアレですか? いつも健気に生きている私への、神様からのプレゼントですか?
  そういうことなんですね?」

 家の中の誰かが置いていったもので、勝手に食べるのはまずいだろうとは思いますが、
 そんな思考は私のポジティブシンキングで封じ込めます。

 「こんな所に、私の好物を置く人が悪いんです。
  それじゃ、いただきま〜す」

 サクサクの衣に包まれ、暖かいジャガイモで作られたコロッケ。
 あ〜、もう最高です。こんな素晴らしい物を食べられるなんて、天にも昇る気持ちですよ。
 そう、なんていうか、意識が飛んでしまうくらい嬉い……。

 「って、何か盛られてるよコレ!!」

 ばたんと倒れる私。
 痺れ薬でも入っていたのか、身動きがとれません。

 「はははははっ!!!! 愚かなり千夏お姉さま!!」

 「り、リーファちゃん!? あなたの仕業なんですね!?」

 「ええ、もちろんですわお姉さま。まさかこんな単純な戦法で勝利できるなんて。
  やっぱり初心に戻ってみるものですね」

 お、おのれリーファちゃん。
 最近はやけに大人しいと思っていたら、私の油断を誘っていたわけですね?

 「ふふふ……さて、どうして差し上げましょうか?
  コンクリートにくくりつけて、魚の餌にしてあげましょうかね?」

 「私はロボットだから、魚の餌にはならないと思うんですけど?」

 「そうですね。それじゃあサメの爪楊枝の代わりにガジガジと噛まれてもらいます」

 「しまった!! なんだか自分でハードルあげちゃったよ!!」

 「さあ、一緒に太平洋までドライブしましょう」

 「り、リーファちゃん。私たちは血は繋がっていなくても姉妹じゃないですか。
  こういうのは、間違っていると思うんですよ。
  もっとほら、平和的な関係を築きたいというか……」

 「駄目なんですよ、千夏お姉さま。
  私たちは、闘う運命なのです」

 「た、闘う運命? 何言ってるんですかリーファちゃん!?」

 「あれは前世でのことでした……」

 「前世とか言うと、頭がおかしい人みたいに思えるので、止めてください」

 「じゃあ違う宇宙でのことでした」

 どっちでもいいのかよ。

 「ある星のある国に、リーファ女王というそれはそれは素晴らしい王様がいました」

 「よく自分の事を一国の王として話ができますね。身の程をわきまえなさいよ」

 「いえ、これはお姉さまのことです」

 「リーファって名前なのに私なの!?」

 「その王国にはチナツという名の戦士がいて……」

 「……このチナツさんは?」

 「私です」

 「面倒だよ!! 頭の中でいちいち変換しなくちゃいけないじゃないですか!!」

 「それである時リーファがチナツにある命令を下しました」

 「えっと、リーファが私でチナツがリーファちゃんだから……」

 「町で行われる盆踊りで優勝できなければ、切腹しろと」

 「リーファちゃん、訳わかんない命令を出さないでくださいよ!!
  ……って、私か。私がその命令を出したことになってるのか」

 「その恨みつらみがこの宇宙にまでやってきてですね、闘わないと居られないのです」

 「嘘でしょ? それって嘘でしょ?」

 真実だとしても、他の世界の私の戯言のために殺されるのは嫌なんですけど?


 「まあ別にどうでもいいです。とにかく死ね」

 「うわぁ、ちょっとタンマ!!」

 「遺言なら聞きますよ?」

 「り、リーファちゃんは、私が死んでも何も感じないんですか!?」

 「すげえ嬉しいです」

 「うわっ、満面の笑みで言われてしまいましたよ。
  そうじゃなくて、困ったり、悲しくなったり、そういうことになったりしませんか?
  ほら、一応家族として生活してきたわけじゃないですか?」

 「……それは、確かに、少しは寂しいとは思いますけど」

 「でしょ!? ほら、千夏お姉さんが死んでしまったら、すごく悲しいでしょ?」

 「すごくというほどではないですけど」

 「すごくですよ!! すごく悲しいんです!! 今はそういうことにしとけよ!!
  だから、こんな事やめてくださいよ!! 憎しみでは、何も生まれないんです!!
  ねっ? 分かったよね? 分かれよこのやろう!!」 

 「そんなこと言われたって……どうにもならない事だってあるんです!!」

 「うわぁ!!」

 リーファちゃんが懐からナイフを取り出し、それを大きく振りかぶります。
 まずい。これは本当にまずいです。


 「…………リーファちゃん?」

 「ううっ、なんで、なんで止めを刺せないんですか!?」

 ナイフをその手から落とすリーファちゃん。
 幸運なことに、それは私の顔のすぐ傍に落ちました。
 危ない。もう少しで相手に殺意が無いのに殺されるところでしたよ。


 「リーファちゃん。あなたは本当は優しい子だから、こういう事は出来ないんですよ。
  だからもう、やめましょう……」

 「ううっ、お、お姉さま……」

 「リーファちゃん……」

 痺れから回復し、泣いているリーファちゃんを抱きしめる私。
 なんて、なんて感動的な場面なんでしょう。

 

 「やっぱり、ターゲットの顔が見えないような、弾道ミサイルで決着をつけることにします」

 「えー!? まだヤル気満々!?」

 

 

 1月18日 火曜日 「バイオハザード」

 「千夏〜」

 「なんですか黒服? しょうもないことで私のおやつタイムを邪魔するのなら、自衛権の行使もじさないですよ?」

 「それは自衛というのか?
  ……というか、何食べてるんだ?」

 「ししゃもです」

 「渋い。渋すぎるおやつだ」

 「カルシウムが足りなさそうなリーファちゃんのために買ってきたんですけど、
  いらないって言われまして……。
  というか世間話はいいんで、本題に移ってください」

 「おおそうだった。
  目が3つあって、4本足で、足の先に鋭い爪があって、
  火を吹いてて、見るからに悪役っぽい生き物見なかったか?」

 「え〜っと……信号機?」

 「違う。なぞなぞじゃあない。
  しかも目が3つって所しかあってないし」

 「そんなモンスターなんか見たことありませんよ」

 「そうか……そりゃ困ったな」

 「なんでそんな珍生物を探して……?」

 「いやね、実験用のカプセルから逃げ出しちゃって……」

 「……え!? それって」

 「プチバイオハザード?」

 「立派な生物災害ですよ!!
  なにプチなんか付けて口当たりを良くしてごまかしてるんですか!!」

 「バイオハザードモドキ」

 「モドいてない。
  全然モドキってないから」

 「とにかくさ、大変なんだよ」

 「あなたの落ち着き払った態度を見ると、まったく緊急事態に見えないんですけど?」

 「人が被害に会うかもしれません。ああ大変」

 「ものすごく他人事じゃないですか。
  もうちょっと真剣に生きてください」

 「さて、損害賠償を払わされる前に捕獲したいのですが、手伝ってくれませんか?」

 「ええ喜んで。
  間抜けな居候のせいで裁判沙汰に巻き込まれるのはごめんなんで」

 「というわけで、囮になってください」

 「はあ!? なんで私がそんなことしないといけないんですか!?」

 「ほら、よくこういうシチュエーションのホラー映画だと、美女が狙われるもんでしょ?」

 「ああ、なるほど。だから私を狙ってモンスターが現れるってことですね?
  すごく、納得できました」

 「本当はウサギとか雪女に頼みたかったけど、今出かけてるみたいだったから」

 「いい気分のまま囮にさせてくださいよ。
  一言多すぎです」

 「それじゃ早速捕獲に……」

 


 「きゃ〜!! 化け物よ〜!!」

 「うわっ、たっ、助けてぇ!!」

 「誰か警察を!! いや、自衛隊を呼んで!!」

 「うわ〜ん! お母さ〜ん!! 目を開けてよぉ!!」

 「俺は……俺はここで、死ぬわけにはいかないんだよぉ!!」

 「ジャーック!!」

 

 「……」

 「……」

 「……」

 「……外、騒がしいなぁ」

 「責任とって、腹切れや」

 

 

 1月19日 水曜日 「魔球伝授」


 「よう千夏」

 「……」

 「……千夏?」

 「……」

 「無視!? 盛大に無視!?
  くそう、こうなったら空舞破天流奥義『かまってオーラ』で……」

 「師匠……いい大人が恥ずかしくないんですか?」

 「お、ようやく返事してくれたか」

 ほっとくと、とてもかわいそうな状態になりそうでしたしね。


 「で、今日はなんですか?」

 「今日はお前に新しい空舞破天流奥義を……」

 「あ〜! 急にお腹がしんしんと痛い!
  それはもう、静かに痛い!!」

 「すごい。こんなにベタな言い訳、初めて見た」

 「という訳で、奥義伝授はまた今度の機会にってことで」

 「今度の奥義はすごいぞぉ?
  修得できれば、メジャーリーグでも大活躍間違いなしだ!!」

 「メ、メジャーリーグ?」

 「そう、なんと今回千夏に伝授しようと思っている奥義は、
  消える魔球なのです!!」

 前々から思ってたんですけど、
 どんどん武術と関係なくなってますよね?


 「どうだ千夏? 一緒に、メジャーリーグを目指さないか?」

 「いきなりの進路変更にびっくりなんですけど。
  っていうか、私は女の子なんだからメジャーリーグには……」

 「それじゃあセントラルリーグでいいや」

 随分目標が下がりましたね。
 しかも問題は解決してないし。

 

 「まずフォームから教えてやろう」

 「ねえ、空き地でキャッチボールってのは自分の息子とやってくれませんかね?
  木枯らしがすっごく冷たくて、家に帰りたいんですけど?」

 「子供は風の子だろ? 耐えろ」

 今の世なら虐待ですよ。


 「まずフォームなんだが、両手をまっすぐ天にかざし、
  そして気を溜め込むように……」

 「元気玉ですか?
  あと、多分それってボーク……」

 「次に、両手を合わせてバッターの方に向け、身体に溜めた気を放つように……」

 カメハメ破か?
 今日はそういうパロディーなんだ?


 「そして息を吸って、吸って、吸って、今日の夕ご飯の事を少し考えて、
  全ての力を息を吐くと共に打ち出す!!」

 今日の夕ご飯はコロッケだといいなぁ。

 「空舞破天流奥義、スター・オブ・ジャイアント!!」

 そう叫んだ師匠の両手からビームみたいな魔球が。いや、ホントにビームみたいな、周りに生えてた草焦がしてるし。
 でも師匠はボールって言い張ってるし。だから、ボールが、飛んできました。私目指して。

 

 「ってうわぁ!?」

 間一髪でよけた私。
 服のわき腹に位置してる部分が削り取られてました。


 「師匠!! こんな奥義、野球で使えませんよ!!
  キャッチャーが消し飛びます!!」

 むしろ純粋な暗殺拳ですし。


 「だから言ったじゃないか。
  『消える』魔球って」

 ……あ〜なるほど。
 消えるのはボールじゃなくて、キャッチャーの方でしたか。
 あはははは。
 こりゃ一本取られた。


 「さようなら、師匠」

 私の前から消えてください。


 

 1月20日 木曜日 「赤ちゃんの作り方」

 「おか〜さ〜ん。
  聞きたいことあるんだけど?」

 「何? 親の偉大さを知らしめるために、見事かつ華麗に答えてあげるわよ」

 なんて高慢な……。


 「赤ちゃんってさ、どうやって出来るの?」

 「そりゃあセッ……」

 「ちょっと待ったお母さん!!」

 「何よ?」

 「なんていうか、ストレートすぎ!!
  私が望むのは、あたふた困ってる親の反応なのに!!」

 「ああ、そういうこと……。
  つまり、答えにくいことを聞かれて、
  なんとか答えを濁そうとしている親の恥ずかしい姿を見たかったのね?」

 「要約するとそうですね」

 「っていうかあなた、赤ちゃんの作り方知ってるでしょ?」

 「まあ女の子ですし」

 ませてるんですよ。大抵。


 さて、いろいろ説明しなければなりませんが、
 先ほどのお母さんへの質問は、簡単に言ってしまえばテストのようなものでした。
 どっかのテレビ番組で、子供に赤ちゃんの作り方を聞かれて戸惑う親たちを
 観察するようなコーナーがあったので、それを真似たのです。

 

 

 「雪女さ〜ん?」
 お母さんは全然面白い反応を返してくれなかったので、ターゲットを雪女に変更したいと思います。

 「何ですか千夏さん?
  あ、もしかしていつも家事を頑張ってくれてありがとう。
  君は妻の鏡だよ。これはほんの気持ちさ的なプレゼントとかくれるんですか?」

 「違いますよ!!
  名前呼ばれただけでそこまで妄想するなんて、
  どんだけポジティブシンキングなんですか?」

 「そうですか……それは残念です」

 勝手に盛り上がって、勝手に落ち込まれても困るんですけど。


 「雪女さんに質問があるんですよ」

 「好きな食べ物はかき氷と雪見だいふくです」

 「そんな事は聞きません」

 っていうかなんとなく予想出来そうな答えでしたし。

 

 「雪女さんは、赤ちゃんってどうやって出来るか知ってますか?
  知ってたら教えて欲しいんですけど」

 「なっ……!?」

 真っ赤になって固まる雪女。
 ああ、この反応ですよ。私が求めていた物は。
 さあ、一体どんなトンチンカンな言い訳を言ってくれるのでしょうか?

 

 「千夏さん、嬉しい!!
  やっとその気になってくれたのね!?」

 「は!? いや、その気って言われても……」

 「じゃあ早速ベッドルームへ行きましょう!!
  私が手取り足取り腰取り教えてあげますから!!」

 「なんですか!? その腰取りっていう怪しい単語は!?
  っていうか女同士じゃ赤ちゃん出来ないでしょ!?」

 「想像妊娠なら出来ます」

 「すんなよ!! そんなもの!!」

 「昔から一姫二太郎っていいますし、やっぱり最初の子は女の子がいいですよね」

 「想像妊娠に男の子も女の子も無いだろ」

 「れっつごお、らぶらぶべっどぉ」

 「わ〜!! ごめんなさい!!
  ほんの出来心だったんです!!
  少し困らせたかっただけなんです!!」

 「雪女の辞書に立ち止まるという単語はありません」

 「不良品ですよ!! それは!!」

 

 

 

 1月21日 金曜日 「街角の占い師」

 「今年の運勢を占ってしんぜよう」

 「間にあってます」

 道ばたに座っていた怪しいおばさんに、声をかけられてしまいました。
 どうせ不吉な相が出てるとかなんとか言って、変なお守りとか札とかを売りつけるつもりなんでしょ。

 

 「おおっ!! そなたの背後に怪しい影が見えるぞ!!」

 「それは私のスタンドです。
  気にしないでください」

 「ああおそろしや。このままではそなた、地獄に落ちますぞ」

 「細木か? 細木のおばちゃんかお前は?」

 「そなたの血液型を教えてくれるかな?」

 「身体中ガタ型です」

 「自己中心的で変わり者。違うかね?」

 「うわぁ、まさかボケで占われてしまうだなんて」

 「星座は?」

 「座・ドリフターズ」

 「保守的でありながら、新しい物にはどうしても惹かれてしまう。
  当たってるでしょう?」

 「なんていうかさ、占うのに私の血液型とか関係ないんでしょ?」

 「さて、そんなあなたが2005年を幸せに生きるためには、この水晶玉が必要になります!!」

 「そんなガラスの塊がなきゃ幸せになれない人生ってなんですか」

 「ちなみにこの水晶玉、普通の水晶玉とは訳が違います」

 「水晶玉を見る機会がないので、
  何が普通で何が普通じゃないのか分かりません」

 「この水晶玉は、魔を祓う力があると言われていまして……」

 「……ここまで私の話を無視されると、もはや快感になってきますね」

 「どんな悪霊でもたちまち退散してしまうのです!!」

 「本当ですか?」

 「本当です。占い師ウソツカナイ」

 「いや、占い師という肩書きを盾にされたほうが怪しいんですけど……。
  えっと悪霊って、雪女とかでもやっつけられるんですか?」

 「ええ、もちろん」

 「ふ〜ん……」

 まあ別に被害を受けているわけじゃないですけど、
 試してみたくなっちゃいましたね。

 

 「あれ? こんな所で何してるんですか?」

 ちょうどいい所に、買い物帰りらしい雪女がいました。
 まあ、物は試しってことで。


 「雪女さん……恨むなら、私の好奇心を恨んでください。
  悪霊、退散!!」

 雪女に水晶玉を向ける私。
 それを平然と見てるスーパーの袋を持った雪女。

 

 「……全然ダメじゃん」

 「え? え? 何の話ですか?」

 「なんでもないよ。もう帰っていいから」

 「酷い。なんだかすごく酷い」

 やっぱり水晶玉は偽物ですかぁ……。


 「あれ? 何してるんですか?」

 「あ、女神さん」

 何故か懐かしさを感じる人ですね。


 「あのですね。実はこの水晶玉が……」

 「うわぁっ!? すごく苦しいぃ!!??」

 「ええっ!? 女神さん、悪霊!?」

 また新たな事実が……。

 1月22日 土曜日 「流行語を作ろう」


 「今年流行りそうな言葉を作ろうと思います」

 「うわぁ、毎度毎度のお母さんの突発的な思いつきに、
  全然ついていけてないよコンチクショウ」

 「去年は『無念!!』という言葉が流行ったそうですが……」

 残念、ね。なんだか嫌でしょ。
 無念なんて流行ったら。


 「それに負けないような流行語を、どんどん作っていきましょう!!」

 「……で、何で私をそんな計画に巻き込むんですか。
  私はこう見えても忙しいんです。
  他の人たちに相手してもらってください」

 「だって、千夏なら文句言いながらも最後まで付き合ってくれそうなんだもん」

 くっ……!! 人のつっこみ症な所を利用してっ!!


 「さて、流行語というのは、その年の世情を反映していること多々あります。
  例えば去年だったら『マツケンサンバ』とかね」

 「違う。マツケンサンバは流行語じゃない。
  というかマツケンサンバな世情ってどんな社会だよ」

 「『負け犬』とかね」

 「ああ……確かにありましたね」

 「去年は人間の都合で捨てられた負け犬が社会問題にまでなって」

 「犬の種類のことじゃないですよ?
  負け犬って」

 

 「という訳で、今年の社会問題を予想したいと思います!!」

 迷惑かつ後ろ向きな予想だなぁ……。

 「え〜っと、今年は日本に巨大隕石が落ちます」

 「いきなりノストラダムってますねお母さん!!」

 「そしてそれから生まれた流行語が、『人類滅亡』」

 「人類滅亡しちゃったら、流行語も何もないんじゃないですかね?」

 「地球崩壊とどっちがいいか悩んだんだけどね〜。
  やっぱり、インパクト重視で選んでみました」

 「っていうかさ、もうちょっと現実感溢れる物にしないと、
  予想じゃなくてただの妄想になっちゃうんだけど?」

 「え〜っと、それじゃあ……今年は児童売春が大きな社会問題に!!」

 「おっ! 確かにそれは大問題になりそうです!!」

 っていうか実際問題だと思いますが。


 「そこで生まれた流行語が、
  『千夏ってる』」

 「訴えるぞ? 親でも」

 「ちなみに千夏ってるというのは動詞&形容詞で、
  使い方としては『ねえねえ、あの子、千夏ってるらしいよ?』と言う風に……」

 「最高裁まで争う気満々だぞ? 血を分けた肉親でも」


 「後ね、今年は社会的無視が問題になって……」

 「まだ続ける気なんですか……。
  っていうか社会的無視って何?」

 「『女神ってる』というのが大流行り」

 「女神ってる……」

 流行りませんよ。
 というより、流行ったら悲しすぎます。


 




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