2月6日 日曜日 「花嫁修業」


 「千夏さん!! 一緒に料理作りましょうか!!」

 「うっせぇ雪女。人の二度寝を邪魔するとはいい度胸じゃないですか。
  マグロの入っていた発泡スチロールの箱に入れて、オホーツク海に送り返しますよ?」

 「べ、別に私はオホーツク海出身じゃないですよ!?」

 「……」

 「千夏さん!! 寝ないでくださいよ!! ちょっと!!」

 

 

 4時間後。ちょっと長すぎるかもしれない二度寝を終えてみると、
 傍にはふくれっ面した雪女が。

 「……ちっ、まだいたか」

 「分かってたんですね!? 分かってて起きなかったんですね!?」

 「で、今日は急に何なんですか? 料理だなんて、突然すぎますよ」

 「実はお義母さんに頼まれてですね、千夏さんに料理を教えようと……」

 なに母親の役目を早々と放棄して、居候なんかに任せちゃってるんですか。

 「嫌ですよ料理なんて。面倒なだけじゃないですか」

 「駄目ですよ千夏さん。そんなことじゃ立派なお嫁さんになれません。
  いいですか? いくら男女平等が進んだとしてもですね、料理が女の武器になることは変わらないのです!!」

 「はぁ……そうですか。
  で、何を作るんですか?」

 「おっ、やる気になってくれたんですね?
  今日はですね、ラザニアを作ろうと思ってたんです」

 「うわ、まったくもって雪女っぽくない料理ですね。
  もうちょっと日本妖怪としての自覚を持ってくださいよ」

 「え〜っと……カキ氷とか?」

 「それは料理とは言えませんけどね。
  でもまあそんなもんです」

 楽でいいですし。


 「でも駄目ですよ!! それじゃあ千夏さんの修行にならないじゃないですか!!」

 「じゃあもうちょっと楽そうなやつにしてください。
  いきなりラザニアはちょっと気が引けるんで」

 「楽なやつですか……?」

 「ポップコーンとか」

 「それこそ料理と呼べないじゃないですか。ただトウモロコシを鋳るだけですし」

 「一夜漬けとか」

 「本当に料理する気ないでしょ?」

 「そうですよ!! 大体私みたいなガサツな人間に、料理なんて出来ないんですよ!!」

 「うわっ、逆切れし始めましたよこの人!?」

 「せいぜい出来たとしてもカップラーメンと人外を闇に葬ることだけですよ!!」

 「カップラーメンは料理じゃないです!!
  それに人外を闇に葬ってるのも料理じゃないです!!」

 「おらネーチャン、あんたも闇に葬ったろかい」

 「妙な人格を目覚めさせないでください!!」

 「ふーんだ。別に料理出来なくてもいいですもーん。
  きっとこんな私でもウサギさんは嫁にもらってくれますもんねー」

 「今度はふて寝ですか……。
  いい加減にしてくださいよ千夏さん。
  何でそんなに料理を作るのが嫌なんですか」

 「……ほら、料理ってさ母親の仕事って感じするでしょ? 別に男尊女卑とかそういうんじゃなくて。
  でね、うちのお母さんってああじゃないですか? 全然お母さんっぽくないし。
  でもね、料理だけは必ず作ってくれてたんですよ。掃除はサボることあっても、
  私のために料理を作ってくれるのはサボったことないんです。
  まあそれは当たり前のことなんですけど、でも私にとっては大切なことだったんですよ。
  駄目な母親だけど、私のことを忘れてないっていう証だったんです。
  だから……その役目を奪いたくないんです。
  私が料理作れるようになっちゃったら、お母さんが料理作ってくれなくなっちゃうじゃないですか……」

 「ち、千夏さん……!! そんな想いがあっただなんてっ!?
  すみませんでした!! 私、そんなこと知らずに無理矢理誘っちゃったりして!!
  あまつさえここ最近なんか私が料理作っちゃったりして!!
  本当にごめんなさい!!」

 「いいんですよ雪女さん。
  こんなの、私のただの下らない意地なんですよ。
  下らないけど……私はっ、ぐす……」

 「ああ千夏さん!! 泣かないでくださいよ!!
  本当にごめんなさい!! もう料理しようなんて言わないですから!!」

 

 …………ふっ、ちょろいな。


 

 2月7日 月曜日 「メロン記念日(懐かしいとかそういうレベルじゃない)」

 

 今日は給食にメロンがでる日でした。
 なので、私のクラスは戦場になりました。

 多くの生徒たちが武器を持ち、他人のメロンを狙います。
 所有権という言葉は、今日だけ弱肉強食にすり代わるのです。

 みんな今日の日のためにいろいろ準備していたみたいです。
 近くのスポーツショップにアイスホッケーの棒を買いに行ったり、
 アメリカでコルトパイソンを仕入れてきたり、
 ギアナ高地で修行してきたりしてます。

 この時ばかりは法律とか倫理とか人間性とかがすべて消えてなくなり、暴力とメロンに支配されます。
 っていうかメロンに支配されます。

 

 編み物が趣味だと公言していた美雪さんが、メリケンサックを両手に装備し、
 人体の急所という急所を殴っている姿は、トラウマになります。っていうかなりました。
 これもみな、メロンの魔力なんです。
 メロンって言っとけばいいと思ってるんじゃないのかと言われてしまうと困りますが、実際メロンでなんでも済ませようど思ってたりします。
 他にどう説明すればいいんですか。この惨状は。

 


 メロンを奪われたくなければ、先に食べてしまえばいいのにと思うかもしれません。
 しかし、そんなの甘々な考えですよ。
 そんなせこいことが見つかったら、腹部殴打によるメロンの強制召還の刑が待っています。
 残酷にもほどがあります。

 

 ちなみに私は早々にメロンを諦めて降伏いたしました。
 だってさ、みんな真っ先に私を狙ってくんだもんよ。

 


 今日のメロンの覇者は、編み物と撲殺が趣味の美雪さんでした。
 あの闘いかたを見たら、もう誰も気軽に美雪ちゃんなんて呼べません。
 多分明日から美雪ちゃんはアネゴと呼ばれるはずです。
 すごいよアネゴ。

 

 ちなみに明日は給食にケーキが出ます。
 なので私たちのクラスは冥界になる予定です。


 

 2月8日 火曜日 「銀行強盗」


 ……朝起きると、見知らぬおっさん二人組が不法侵入してました。
 どうやら人んちの床下に穴を開けて来たらしいです。
 私の部屋のフローリングにそれはもう見事な穴が開いているのがその証拠です。
 もう驚愕を通り越して怒りしか沸いてきません。

 

 「おっさんたち!! 人の部屋に何してくれてんですか!!」

 「え〜と、あの……こちら、サボテン銀行じゃありませんよね?」

 「残念ながらウチには銀行の1億分の1のお金もありませんよ」

 「なんてことだ!!
  まさか銀行と逆方向に行き着いちまうだなんて!!」

 「あ、兄貴……ど、ドンマイ!!」

 「そうだな、ドンマイだな。
  今度は逆方向に掘ればいいだけだもんな」

 すっげえポジティブ。
 見習いたいぐらいです。


 「っていうかおじさん達……もしかして銀行強盗?」

 「そうです!! いまどき地下に穴掘って銀行の金庫に突入しようとしている、時代錯誤な銀行強盗です!!」

 「あまりの潔い正体のばらし方に、開いた口が塞がりませんよ!!」

 「兄貴!! いくら何でも喋りすぎですよ!!」

 「ごめん。兄貴ドジ踏んじゃった。
  マジごめん。もう切腹するから」

 「切腹は駄目っすよ!! 溢れ出た内蔵とか、誰が掃除するんですか!!」

 そういう問題かよ。
 まあ確かに内蔵の掃除はしたくないんで、切腹なんてしないで欲しいですけど。


 「兄貴思い詰めちゃいました。もう穴があったら入りたいです」

 「どうぞ、あなた達が開けた穴へ帰ってください」

 「兄貴!! 誰にだって失敗はあるっす!!
  ドンマイ!!」

 「そうだね。ドンマイドンマイ」

 無視すんなよ。そして一瞬で立ち直んなよ。

 

 「そうだ!! お嬢さんも私たちの手伝いをしてくれないかい?」

 「兄貴!! それはいい考えっすね!!」

 「嫌ですよ!! なんで私が犯罪の片棒を担がされなくちゃいけないんですか!!」

 「ほら、終身雇用制が崩壊したおかげで技術を受け継ぐような人材がいなくてさ。
  若いうちから育てようと……」

 「そういう文句は社会に言いなさい。
  あと、犯罪者の跡継ぎなんて作ろうとするな」

 「酷い!! あまりにもストレートな反対意見に兄貴超ショック!!」

 「兄貴!! こんな少女に少し言われただけで凹んでちゃ駄目ですよ!!」

 「でも、でもね……」

 「ドンマイ!! 兄貴ドンマイ!!」

 「そうだね!! 元気出さないとね!!」

 っていうかいつまで続ける気なんだこのコント。

 


 

 2月9日 水曜日 「あったね。バレンタインデーとかそういうの」

 

 「今月の14日ってバレンタインデーなのよね?」

 「そうですね。そんなイベントもあった気がします」

 「千夏はさ、甘くて黒くて手にベタベタ付くやつ送る予定なんてあるの?」

 「チョコね。紛らわしい言い方しないでくださいよ。
  えっと……ウサギさんに送ろうと思ってますけど」

 「ウサギさんウサギさんウサギさん……。
  千夏はウサギさんばっかりねぇ」

 「いいじゃないですか別に。好きなんだし」

 「やっぱり手作り?」

 「いえ、そこまで凝ったことしようとしてませんけど」

 「と言う事は大量生産の機械の手にあなたの愛を預けるのね?」

 「嫌な言い方しますね……」

 「これだから千夏は乙女なんて言われないのよ。
  女の子は手作り。これ最強」

 「はぁ……でもですね、チョコを溶かしてまたチョコ作るなんて変じゃないですか。
  大判焼きをタイヤキにするみたいで。
  形を変えるだけが愛なら、そんなの冷めてしまいます」

 「千夏はどこか合理主義的な所があるわね。
  でもね、真なる合理化っていうのはロマンチストとなんら変わりないのよ?
  ありとあらゆる全ての無駄を省いた存在っていうのこの世界には無いし、
  どんなものでも無駄に思える余白がある。でも人はその余白に意味を感じる。
  合理主義者っていうのは、歌で世界を平和にしようとしている人たちとなんら変わりはないわ。
  結局虚構を追い求めているにすぎないのよ」

 「お母さん。もしかして酒飲んでる?」

 「乙女の手作り。これは最強の武器にして、この世界で一番無駄なこと。これ真実」

 「はぁ……分かりましたよ。今年は手作りチョコに挑戦してみます」

 「それでね、義理チョコって言うのも無駄なものだけど、意味のあるものだと思うのよ」

 「……何が言いたいんですか?」

 「私ね、黒くて甘いやつは別に好きじゃないけど、くれたらね、食べるわよ?
  そりゃあいやだけど、ガツガツ食べるわよ?」

 「……別に、お母さんに送るつもりはないんですけど」

 「……で、でもあれじゃない!?
  作るときにちょっと余っちゃったなとかあるじゃない!! あるわよね!?」

 「あ、あるかもしれませんね……もしかしたら」

 「じゃあいいじゃん!! 少しぐらいくれてもいいじゃん!!」

 「そんなに食べたいですか? チョコなんて」

 「親子でチョコを交換し合ったりしたら、なんだか仲がいいように見えるでしょ!?
  そういうトリックも人生には必要でしょ!?」

 誰に対してのトリックなんですか。


 「分かりましたよ。今年のバレンタインデーはお母さんの分も作りますよ」

 「うひょひょ〜い!! やったぁ!!」

 「というかお母さんも私にチョコくれるんですよね? チョコの交換ってことは」

 「ええあげるわよ。ガラナチョコとか」

 「もうちょっと私が喜びそうなものをください」

 

 2月10日 木曜日 「ファンレター」

 

 「千夏ー!! あなたにファンレターが届いているわよー!!」

 「あの〜……残念なことに、私は他人さまからファンレターをもらえるような、
  エンターテイナーじゃないんですけど?」

 「ほら、私たちって一応悪の秘密結社を倒した英雄じゃない?
  だからさ、感謝の手紙とかが山のように送られてきてるのよ」

 「住所はどこで仕入れたんですかね?」

 「ウチって世界遺産だから」

 そういやそうでしたね。
 ありがたみ全然ないんで、壁とか床とか普段通りに傷つけまくってるんですけど。

 

 「はい。これは千夏の分」

 お母さんから渡された手紙の束は、結構な重さでした。

 「うわぁ、かなり重いですね」

 「野良猫2匹分くらいはあると思うわ」

 例えが微妙すぎです。
 まあとりあえず、猫2匹を開腹……じゃなかった。
 もらった手紙を開けてみたいと思います。

 


 「えっとなになに……『千夏さんの勇姿に惚れました』ですってよお母さん!!」

 「すごいわね! ただつっこんでただけなのにね!!
  その人はきっと千夏のノリつっこみに惚れちゃったのね!!」

 「してねえよ!! あの時ノリつっこみは!!
  っていうかそんなこと言ってたら、お母さんだって何もしてないじゃないですか!!」

 「してました!! 代表者の選抜とか、監督っぽいことしてました!!
  それに腕を犠牲にしてまであなたを助けたじゃない!!」

 「可愛い娘のためなんだから、プラスティックの腕なんてすすんで捨てなさいよ!!」

 「プラスティックじゃないわよ!!
  ポリエステルよ!!」

 「予想以上にへぼかった!?」

 そんな腕に私は助けられたんですか。


 「あれ? この山積みなファンレターは?」

 「他の人たちの分よ。今から渡そうと思ってまとめてあるの」

 「でも本当にたくさん来てますね。
  ……げっ、黒服宛てのやつもありますよ」

 正真正銘何もやってないのに。

 

 「……あれ? なんだか女神さん宛てのが見つからないんですけど?」

 「まさか。こんだけ来てるんだから、1通ぐらいは女神さん宛てのあるでしょ」

 「いや……相手はあの女神さんですよ?
  十分あり得ますって!!」

 「どんな存在なのよ。あなたにとって女神さんって」

 


 山のように届いたファンレターの中から、女神さん宛てのを探し出すという、
 普通なら簡単なはずだけど、なぜか砂漠でダイアモンドの粒を見つける難易度にレベルアップ!!
 な行為をすること1時間。
 あの活躍で3通のみというある意味奇跡的なファンレターを見つけだしました。

 

 「なんだ、ちゃんと3通あったじゃない」

 「う〜ん、なんだか不満ですね。
  女神さんなら0通という偉業を果たせられると思っていたのに」

 「あなたは本当に女神さんをなんだと思って……」

 なんにせよ残念です。

 

 

 2月11日 金曜日 「牛丼復活祭」


 「吉野家がさ、1日だけ牛丼を復活させたそうじゃない?
  幾万の生贄を使って」

 「お母さん。悪魔やなんかの類ではないですよ。牛丼は」

 「だからさ、私たちも何かを復活させない?」

 「……今日もすこぶる脳がカオスってますね」

 復活なんて対抗するものじゃないと思います。
 っていうか復活ってなに?


 「そこで今日は一ヶ月前に賞味期限が切れたマグロの刺身を復活させ……」

 「無理ですよそんなの!! っていうかそんな劇物なんでまだ大事にしてるんですか!?」

 「高かったのよ!? マグロ、高かったのよ!?」

 「でも今じゃただの毒でしょ!?」

 「昔から言うじゃない。腐っても鯛って」

 「じゃあ食ってみろ。その腐ったマグロを食ってみろ」

 「バカねぇ千夏は。食べれないから復活させるんじゃない」

 な、なんだかむかつく……。


 「さて、まずは復活の儀式の準備を……」

 「もう復活の儀式なんて言っちゃってる時点で吉野家とは全然関係無くなっちゃってますね」

 「自己流魔法陣を適当に床に描いて、生贄の生きた松坂牛を用意してと……」

 「自己流でいいの? そして、明らかにマグロより生贄の牛の方が高くついちゃってますよね?」

 「こういうのは適当でいいのよ。
  あと、松坂牛は奪取してきました」

 「さらりと犯罪を自供しないでください」

 「それで、またしても適当な復活の呪文を唱えます」

 「一応さ、こんなへんてこな儀式でも真面目になりましょうよ」

 「え〜っと……ザオラル!!」

 「適当じゃなかった!! 元ネタがちゃんとあった!?
  っていうかどうせならザオリクにしてくださいよ!!」

 「きゃっ!!」

 何故かお母さんの適当な復活の儀式が発動したらしく、
 魔法陣が眩い光を放ちます。


 「適当で復活しちゃうんですか!? 安いぞマグロ!! いろんな意味で!!」

 「ふふふ……この時をどれだけ待ち望んでいたことか……。
  ついに、マグロの復活の時だぁ!!」

 別に無理して悪役っぽい雰囲気ださなくてもいいですから。


 眩い光が収まり、どうやら復活の儀式が終わったらしいです。
 魔方陣の中央に置かれていたマグロの刺身(劇物)は果たしてマグロの刺身(夕食)に……?

 


 「ふはははは!! よくぞ私を呼び出した!!」

 「悪魔が召喚されちゃった!?」

 悪魔とか魔王とか、そういうのに遭遇する確率は多すぎる気がするんですけど。私。

 「クーリングオフで」

 「あ、はい。分かりました」

 お母さんが3秒で送り返しちゃいました。
 すごいよある意味。


 

 2月12日 土曜日 「死を運ぶ餅」


 「んがぁっ!! ごふぅっ!?」

 今日、寒かったので家であったかいおしるこを食べていました。
 で、ものの見事にお餅を喉に詰まらせました。
 その詰まらせ方は、「あ、あの人餅詰まらせてるねお母さん」という温い会話がきこえてくるほどで……。

 (ってやばいよ私!! 幻聴聞いちゃったら駄目でしょ!!)

 喉を詰まらせたまま、自分自身に突っ込みを入れることで意識を保ちます。
 ちなみにまだ喉に餅が詰まったままです。

 

 「……お姉さま? 何バカやってるんです?」

 ちょうどいいところにリーファちゃんが。
 例え彼女が暗殺者であっても、助けを求めずにはいられません。

 「ぐひゅっ……がふん!!」(り、リーファちゃん。救急車を……)

 「なんですかそれ。ラクダ語? ラクダ語の練習?」

 しねえよ。ラクダ語なんて練習しないよ。

 「ぎっ……ゴフッ!! ガバヒュン!!」(掃除機を!! 応急手段として掃除機を!!)

 「今の何て意味ですか? 温めてください?
  ラクダ語で温めてください?」

 なんでコンビニで使いそうな会話をラクダ語で教えなきゃいけないんですか!!


 「う……あぁ」

 っていうかもうやばいです。明らかにチアノーゼです。
 こんな所で私は死んでしまうのでしょうか?
 嫌だな……餅詰まらせて死んじゃうなんて。

 

 「お姉さま? それはギャグなんですね?
  ラクダたちの中で流行っているギャグなんですよね?」

 違います。ものごっつ違います。
 ああ……もう意識が……。

 「え〜っと、それじゃあ失礼して。
  なんでやねん!!」

 「ごふっ!!」

 リーファちゃんの突っ込みが私の喉を殴打します。
 そのおかげで餅が私の喉から吐き出されました。


 「げふっ、ごふっ……り、リーファちゃん!! ありがとうございます!! あなたは私の命の恩人ですよ!!」

 「え? それもギャグですか?」

 「違う。全然違う」

 なんにせよ命が助かったので良かったです……。

 「なんでやねん!!」

 「違うってば!! 今のはギャグじゃないってば!!」

 お願いですからメリケンサックで突っ込みするのは止めてください。

 

 




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