2月20日 日曜日 「静電気対策」

 今日は休みだったので、ウサギさんと出かけることになりました。
 デート? デートって奴?

 先に出かける準備が終わってしまった私は、
 ウキウキしながら外で待っておくことにしました。


 「……千夏? なんで玄関で寝転んでるんだ?」

 「うあ……あ、ウサギさんですか。いや、ちょっと気絶してたみたいで」

 「さらりとすごいこと言ってるね。一体何があったんだ!?」

 「玄関のドアを開けようとしたら静電気にやられまして……」

 「……思った以上に弱い敵にやられたな」

 「だって不意打ちしてくるじゃないですか?
  あいつら忍者ですよ忍者。忍んでやがりますよ!!」

 「忍んでるっていうか帯電してるんだけどね」

 「ううう……静電気とか、なんとかならないですかね?
  あの奇襲をどうにか防ぐ方法とかないですか?」

 「どこかでライター持って火をつけたら静電気が空気中に逃げるって聞いたことあるけど」

 「なるほど。試してみましょう」

 「なんだか千夏が火を使うと、言い表せない不安が湧いてくるんだけど……」

 「安心してくださいよ。こう見えても『火遊びの女王』として小さい頃有名だったんですから」

 「今のでますます不安になりました。ライター没収」

 「うわぁ!? 酷いですよ!! 私に静電気の奇襲を甘んじて受けろというのですか!?」

 「……そんなこと言われても」

 「そんなあなたにっ、画期的な新装備を紹介いたします!!」

 私とウサギさんの会話に急に黒服が入ってきました。
 また変なこと言い出すに決まってるんで、とっとと逃げ出すことにします。

 「それじゃ私出かけて来ますんで……むぎゃ!!」

 玄関のドアを開けようとして、忍者もとい静電気にやられました。
 あまりの痛みに気を失います。

 「千夏!? なんていうかダメージ受けすぎだろ!?」

 「い、痛みに敏感なんで……ショック死レベルなんですよ」

 「まあ帯電処理し忘れてるからね。その身体」

 さらりと私の身体に欠陥があるって言わないでくれますかね? この馬鹿黒服。


 「そんな千夏さんに朗報です。この装備さえ身につければ、もう静電気なんて怖くない!!」

 「へぇ〜……本当ですかそれ?」

 「千夏。あまり期待しないほうがいいと思うけど」

 「じゃ〜ん!! アース線!!」

 「洗濯機ですか私は!?」

 「この線の片方を身体に繋いで、もう片方を地面へと繋げば静電気が地中へと逃げてですね……」

 「いやいやいや、そんなことしたら自由に動けないじゃないですか。
  繋がれた犬みたいになっちゃうじゃないですか」

 「そういうプレイだと思えば」

 「思えない。思いたくない」

 「ウサギさんもそんなにもの欲しそうな目しないで。
  ちゃんとあなたの分もありますから」

 「欲しそうな目ぇしてない。全然してない」

 やっぱり黒服なんかに期待した私が馬鹿でした。
 こんな奴ほっといて、もう外に出ます!!


 「この馬鹿黒服!! ヘッポコポン!! ってぐはっ!?」

 またもや玄関のドアを開けようとしたら静電気が……。
 なんていうか私、電気が溜まり安すぎてる気がするんですけど。

 

 というわけで、デートの間はずっとウサギさんがドアとかを開けてくれました。
 レディファーストとか何とか言うのはあまり好きなものじゃなかったりしますけど、
 気分が良いことは確かです。
 小さい頃からこんなだと、あまりいい大人になれそうに思えませんけど。

 にへへ。


 

 2月21日 月曜日 「ロレックスっぽいもの」

 「ねぇ千夏ちゃん」

 「なんですか〜おばあちゃん?」

 「ロレロレロレックス欲しくない?」

 「ロレが多過ぎな気がするんですけど、それってもしかしてロレックスのこと?」

 「そう、そのレロレロレロレックス」

 「なんだかそれって偽物っぽいんですけど……。
  っていうかなんでロレックスを私に?」

 「ほら、よくあるじゃない。お金に困った時はこれを売ってしのいでって奴」

 「ありますけど……私的には直接現金を渡してもらったほうが嬉しいんですけど」

 「レロックス欲しくない?」

 「……いや、だからですね」

 「ロレレレックス」

 「……分かりました。欲しいです」

 「よし!! それじゃあ可愛い千夏ちゃんにロロックスを差し上げましょう!!」

 「どうも……っていうか偽物じゃないんでしょうね?」

 「大丈夫大丈夫。本物本物。ワタシ、ウソツカナイ」

 「カタゴトが余計に怪しいです」

 「そのロレックスは本当にすごいわよ〜。なんて言ったって、私の手作りだから」

 「思いっきり偽物じゃないですか!!
  しかもおばあちゃんが偽造犯かよ!!」

 「でも本物より高性能よ?」

 「そういう問題じゃないと思うんですけど」

 「このボタンを押すと、5人分の重量を支えられるワイヤーが出るし」

 「スパイ? 00何とか?」

 「他人の手に渡ったら自爆するし」

 「それ、もう売れなくなっちゃったじゃん!!
  先ほどの困った時にはお金に換えてって言うの、もうすでに出来なくなっちゃったじゃん!!」

 「今ならこのロレックスがなんと9800円ぽっきりであなたの物に!!」

 「あれ!? くれるんじゃ無かったの!? お金取っちゃうの?」

 「な〜んてね、冗談よ」

 「あはは……そうですよね。いくらなんでもおばあちゃんが偽物作るわけ……」

 「自爆はしないわ」

 「そっちだけ!?」

 あとは本当なんですか。


 

 2月22日 火曜日 「強盗の説得」


 「おら!! 逃走用の車を持って来い!!
  1時間以内に持ってこねえと、この人質を殺すぞ!!」

 「きゃ〜!! 助けてぇ!!」

 「うるせえぞこのアマ!!」


 うわぁ……本物の強盗が人質とってビルに立てこもってますよ。
 警察も駆けつけて来て、大変なことになってます。
 ちなみに私は遠くから傍観させていただいてます。だって怖いし。

 

 『君、人質を解放しなさい。
  そんなことしてると知ったらお母さんが悲しむぞ?』

 わ〜、警察の方々が拡声器でそれはもうお約束通りの説得してますよ。
 それってドラマの中だけで通用するかと思ってたのに。


 「うるせえ!! そんなの知ったことかよ!!」

 ああ……強盗を余計に怒らしてしまったみたいですし。


 『今この場に、おまえのお母さんを呼んであるんだぞ?』

 「な、なに!?」

 お〜、なかなか手際がいいですね。
 やっぱり実の親による泣き落としは効果あると思いますから。

 「ではお願いします千夏さん」

 「はいはい私に任せて……ってなんでだよ!!
  私はあんな馬鹿息子産んだ覚えないですよ!?」

 「いや、実はですね……彼の母親が見つからなくってですね。
  ですから声マネで有名な千夏さんに彼のお母さんの真似を……」

 「無理ですから!! っていうか私は声マネでは有名じゃありませんから!!」

 「頑張ってください!! 千夏さんの肩に人質の命がかかっているんです!!」

 そんな重ったるいもの勝手に背負わせないでください。

 「はい、拡声器です」

 「本当にやらせる気なんだ……」

 

 

 『え、え〜っと、強盗さん。じゃなくて、正一さん。ではなく、正一。
  母さん悲しいよ〜。強盗なんて止めなさい。いやマジで』

 「……」

 『……』

 「……」

 『……』

 「……お前、誰?」

 『ほーらばれちゃったじゃないですか!!
  つうか無理でしょ!! 普通に無理に決まってるでしょ!!』

 「うらぁ!! ふざけてんじゃねえぞお前ら!!」

 「千夏さんのせいですよ!! もっとちゃんと似せようとしないから!!」

 『あほか!! っていうかあいつの母さんのこと知らねぇもんね!!
  知らない人間の真似しようとするほうが無理ってもんですもんね!!』

 「この人質殺す!! そっこー殺す!!」

 「千夏さん!! 世界一のネゴシエーターとしての腕を見せてください!!」

 『勝手に人の経歴に変なもの付けないでください!!
  犯罪者相手の交渉なんて、やったことありませんよ!!』

 「気合です!!」

 『気合でなんとかなることかぁ!!』

 「うらー!! 死にやがれー!!」

 『うっ、うわぁっ!?
  マジ? マジでヤル気なの!?」

 これはやばいです。
 私のせい(絶対に認めませんけど)で人が一人死んでしまうかもしれません。

 『か、カモーン!! グランドマザー!!』

 テンパっちまって思わずおばあちゃんを呼んでしまいました。
 なんか、なんとかなってしまう気がして。

 

 「はろー千夏ちゃん」

 「早っ!?」

 「死ね強盗!!」

 「うぎゃっ!!」

 「さらに早っ!?」

 もうなんていうか、おばあちゃんに全部任せてればこの世から悪が消えてなくなる気がします。


 「その人強盗じゃありませんけど……」

 「あれ? それじゃこっちだった?」

 「げぶふっ!?」

 訂正します。おばあちゃんに任せてたら世界中から罪無き人々が消えます。

 

 

 2月23日 水曜日 「リーファちゃんの高笑い」


 「わははははは!!」

 「……リーファちゃん? 何で笑ってるんですか?」

 「今高笑いの練習してるんです」

 「恐ろしく無駄な一時を過ごしていますね」

 「お姉さまもご一緒にどうです?」

 「何の役にも立たなさそうな行為に思えるんでやめときます」

 「なに言ってるんですか!!
  もしかしたら、高笑いコンテストに出場!! 優勝して300万円もらう。
  みたいな展開になるかもしれないじゃないですか!!」

 「人生ゲームのマスっぽい展開ですね」

 高笑いコンテストなんて聞いたことありませんし、仮に存在したとしても出場なんてしません。

 

 「高笑いなんて普段使いませんし、やるだけ無駄でしょ?
  っていうか、練習するものでも無いし」

 「高い所から登場する時とかに使うじゃないですか」

 「ああ、うん。確かに使いますね。高い所から、ね。
  今まで一度たりともそんなことした覚え無いですけどね」

 「でもこれからの人生の中であるかもしれませんし、
  いざその時になって恥をかかないためにも今のうちから練習しておいたほうが良いと思いますよ?」

 何でリーファちゃんはそんなに高笑いを薦めるんですか? 変な健康法を推してくるおばさんですか?

 


 「さあ!! お腹で空気を吸って、思いっきり相手を馬鹿にした感じで!! 笑っちゃってください!!」

 「なんだか心が荒みませんか? そのイメトレ」

 「わははははは!! バーカ! バカ万引きアイドル!!」

 「うおぅ!? 微妙に時事なやばいネタを!?」

 「ほら、千夏お姉さまも誰かをバカにした感じで」

 「え〜っと……はははは、や〜い万引きアイドルぅ。
  ……やっぱりなんだか気分悪いですよ」

 いじめっ子ぽいし。

 「そのうち人を罵倒するのが快感になりますから」

 Sっ気全開にすんなよ。

 

 「わははははは!! や〜いバカ千夏!!」

 「なんだとおい!!」

 「イメトレですよイメトレ。
  本気でお姉さまをバカだと罵るわけないじゃないですか」

 「どうですかね?
  リーファちゃんは笑顔を張り付けたまま鈍器で後頭部を殴打するぐらい朝飯前というイメージがあるので、
  やすやすと信じられません」

 「もうお姉さまったら人間不信なんだから☆」

 そうやって笑顔で私をけなしてるから信じられないんですよ。

 

 「ほらほら、お姉さまも高笑いを」

 「はいはい、分かりましたよ」

 「それじゃ私の後に続いてくださいね。
  わははははは!! この万年いじめられっ子が!!」

 「……」

 間違いなく私のことですよね?
 ……なんだかすごく腹立ちました。


 「ふはははは!! このピー(放送禁止用語につき伏字)ズッキューン(差別用語につき伏字)バホホーン(隠語につき伏字)妹がぁ!!」

 「……」

 「……リーファちゃん?」

 「ううぅ、えぐっ……ひ、酷いですよ、お姉さま……うぐっ」

 「うっわぁ!? 泣いてるの!?」

 打たれ弱すぎですよリーファちゃん。
 ……っていうか私が口悪すぎなんでしょうか。

 

 

 2月24日 木曜日 「お墓の販売」


 「お嬢さん、ちょっと話を聞いてくれない?」

 「間にあってます。
  金運がアップする招き猫も不思議な力のある石もなんでもかんでも真っ白にする洗剤も、
  家に在庫の山があるくらい間にあってます!!」

 「ほら、今の世の中なにが起こるか分からないじゃない?」

 あっれー? あんなに気合い入れて断ったのに、すんなりと無視されてしまいましたよ?

 「例えばほら、変態性癖を持っている大人に誘拐されて殺されちゃったりね」

 私も少なからず変態性癖を持ち合わせているのでノーコメントで。

 「子供も安心して歩けない時代よね。
  そこで!! お嬢さんも今のうちからお墓のことを考えないとね!!」

 「お墓!? 防犯グッズとかそういうのだと思っていたら、よりにもよってお墓ですか!?」

 「極端に言ったら、そこにたどり着くじゃない?」

 極端すぎです。


 「お墓は別にいいです。うちにはちゃんと立派なやつがあるので」

 「最近のお墓はすごいんですよ〜。なんとですね、強化チタンで作られておりまして……」

 「必要ないでしょ。そんな強度」

 「墓石をジャーマンスープレックスで壊すというイタズラ対策ですよ」

 「聞いたことないです。そんなアグレッシブなイタズラ」

 「墓石に刻む文字も最新のフォントを使用しておりまして、
  その気になればアスキーアートも可能です」

 「どこの間抜けだ。墓石にアスキーアート刻む奴」

 「そんな素敵な墓石が、なんと本日はたったこれだけであなたの物に!!」

 私に提示してきたのは指5本。

 「……5万円?」

 「いえ、指5本」

 「そのままだった!? しかもヤクザちっくな支払い方法!?」

 誰が買うものか。

 

 

 2月25日 金曜日 「取り調べ」


 「おいコラ!! いい加減吐いちまえよ!!」

 「え〜っと、なんで私が取り調べ室でリバースをすすめられなくちゃいけないんですかね?」

 「しらばっくれてんじゃねえよ!!
  2丁目のハイボル・ヒッピローニさんを殺したのはお前なんだろ!!」

 「そんなことしてませんよ!!
  っていうかそのハイボルなんとかってどこの国出身なんですか!!」

 「栃木に決まってるだろうがぁ!!」

 日本国内だった!?


 「まあまあ、そんなに怖い顔してたら、話せるものも話せなくなっちゃうよ。
  ここは一つ、私に任せてくれんかね?」

 「お、おやっさん……。
  分かりました。お願いします」

 う〜わ〜。なんだかありがちな、強気な人の次は温和な人で攻める作戦が展開されようとしていますよ?

 

 「お嬢さん。まず、あなたの名前を教えてくれないかな?」

 「はぁ……えっと、千夏です」

 「千夏って、竜殺しのナツで有名なあの千夏!?」

 「違います。そんな壊滅的にダサイ二つ名は持っていません」

 「てめえ!! おやっさんにつっこむとはいい度胸じゃねえかよ!!」

 「まあまあ徹くん。落ち着きたまえ」

 なんなんでしょうか、この目の前で展開している芝居は?


 「それじゃあ竜殺しのナツさん」

 「だから違いますってば」

 「昨日の夕方の6時。いったいどこで何をしていましたか?」

 「昨日の6時は普通に家でテレビみてましたけど」

 「嘘ついてんじゃねえぞコラ!!」

 さっきからうるせえよ怒り担当。

 「ロリキャラぶってんじゃねえぞコラ!!」

 「怒り所が訳分かりませんよ!!」

 「二人とも落ち着いて……。それで、昨日家でテレビ見ていたことを証明できる方はいますか?」

 「あの時間帯は、家族全員が確か家にいたと思います。
  だからさっさと証言取っちゃって、私を解放してくださいよ」

 「それがですね、お宅の人たちは事情聴取を拒否してまして……」

 「え!? なんでですか!?」

 「なんでも『面倒だし嫌』とのことで……」

 お母さんだ。今のは絶対にお母さんですよ。
 娘の一大事なのに面倒の一言で済ませるなんて、酷いったらありゃしません。


 「そ、それじゃあリーファちゃんに、私の妹に聞いて……」

 「彼女は『死ね!! 死刑になって死んでしまえ!!』と叫んで拒否していました……」

 「……雪女さんは?」

 「『最近構ってくれなくて寂しい』と言ってました」

 全然事件と関係ないじゃん。こんな所で文句言われても困ります。

 「おばあちゃんは?」

 「『面倒』だそうです」

 さすがですね。お母さんと同じこと言ってますよ。
 この親子は……。


 「そ、そうだ!! ウサギさんは? ウサギさんは何て言ってたんですか!?」

 「彼女はその時間はジョギングに行っていたらしくて……」

 ああ、なんていうことですか。タイミング悪すぎですよ……。


 「あ、そういえば女神だと名乗る人が証言すると言ってましたけど……」

 「本当ですか!?」

 「無視しました」

 「なんで!?」


 っていうか本当になんで?
 そういうオーラ纏ってるの?


 

 2月26日 土曜日 「ルーレットな日」

 

 「今日の朝食はなんでしょかルーレットー!!」

 「え、なに? なんなんですかお母さん?」

 「今日は休みのくせに、いつもより早く起きやがった千夏さんの朝食のメニューをどうするか決めるためのルーレットです」

 たまに早く起きてみるとこんな文句を言われることになろうとは……。


 「ルーレットの中にはどんな項目があるんですか? いやですよ。バナナ一本が朝食とか」

 「え〜っと、朝食の定番の卵かけご飯でしょ。ふりかけご飯でしょ。あとご飯かけご飯」

 全然朝食作る気ないでしょ? あとご飯かけご飯はただのご飯です。


 「さぁ!! 回れルーレット!!」

 いつの間にやら作っていたルーレットが回ります。
 さっき聞いた限りではまともな食事がありませんでしたが、
 どうにかお腹が一杯になりそうな物に当たって欲しいです。

 「ルーレットの目は……ちくしょう!! チキンドリアかよ!!」

 「わ〜い、美味しそうな物に当たったぁ!! でも朝からこれはきついぞぉ!!」

 嬉しいのやら悲しいのやら。

 「作るのに2時間かかるから、ちょっと待ってなさい」

 「え……?」

 朝起きたばっかりなんで、お腹空いてるんですけど?
 ……これなら卵かけご飯の方が良かったかもしれません。

 

 

 

 「今日の昼食はなんでしょかルーレットー!!」

 「また? またやるのそれ?」

 「このルーレットは、休日なのに外に出かけもしない千夏の昼食のメニューをどうしようか決めるためのルーレットです」

 寒いもん。外寒いんだもん。

 「で、そのルーレットの項目は? 朝ドリア食べちゃったから、あまりこってりしたものは食べたくないんですけど?」

 「え〜っとね、ラザニアにグラタンにピザとかね」

 「なんで今日の昼食はそんなに気合が入ってるの!?」

 全部大好きなメニューですけど、今の私にはちょっと……。

 「さあ!! まわれルーレット!!」

 どうか軽いやつお願いします……。

 「ルーレットは……このやろう!! ソバかよ!! 私のやる気返せよ!!」

 「ほっ……っていうかそんなにやる気あったんなら、ルーレットで決めないで作っちゃえばいいじゃないですか」

 「もういいや……ソバを手でこねる所から作るから、2時間ぐらい待ってなさい」

 「また待たされるんですか!?」

 もうそれなら食事の2時間前にルーレットやってくださいよ。

 


 「じゃんじゃかじゃ〜ん!! 今日の夕食はなんでしょかルーレットー!!」

 「マイブームなの? ルーレット」

 「このルーレットは、大して働いてもくれない家族たちに振舞う夕食のメニューを決めるためのルーレットです」

 「そうですか。で、一応聞いておきますが、ルーレットの項目は?」

 「出前。回転寿司。ファミレス。などなど……」

 「作る気最初からなし!?」

 やっぱりお昼のソバ作りで燃え尽きちゃったんでしょうか?
 なんていうか、やる気のペース配分が下手すぎます。


 「さあ、まわりなさいルーレット!!」

 「まあいっか……手抜き料理食べさせられるよりは」

 「ルーレットの目は…………コンビニに決定しました」

 「外食でもなんでもないですよそれは!!」

 「さあみんな。今から近所のコンビニに行きましょうか」

 ……なんで今日のご飯は、質に差がありすぎるのでしょうか?

 

 




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