6月20日 日曜日 「四コマA」



 私が気にするんですよ。



 6月21日 月曜日 「なんかいろいろ失った日々」


 「私はこの国から存在を抹消されようとしている先住民族。
  アウグムビッシュム族の末裔だ!!
  私は日本政府に対して、我が同胞を苦しめた罪を償って貰うべく、
  人質を取った。
  これから三十六時間以内に我らの要求を呑まなければ、
  人質を殺す!!」

 

 「お母さん」

 「なに? 千夏」

 「何で私たち人質にされてるの?」

 「運命と書いて『さだめ』と読みましょう」

 そんな運命ごめんです。

 


 いつも通りの起床時間に起きてみると、
 目の前には銃を持った男の人たちが五人いました。

 一般的にテロリストと言われる人たちなのでしょう。
 一般的じゃない方々には革命家と呼ばれています。

 どっちにしろ私にとっては最悪のいじめっ子なんですけど。

 

 それにしても何で一般家庭の母親と娘を人質に取るんですか?
 もっといい人材があるでしょうに。
 大使館の職員だとか、政治家だとか。


 「おい、お前らこっち来い!!」

 一人の男の人が呼んでいます。
 多分家の中央の部屋に私たちを集めて、
 機動隊とかが突入しにくいようにするんだと思います。


 「ヤルなら娘をどうぞ」

 何を勘違いしたのか分かりませんが、
 お母さんがそんなこと口走りやがりました。

 「お、お母さん……何を言って」

 「あなたの身体は、こういう時のためにあるのよ?」

 今まで見たことの無いほど母性を前面に出した笑顔でそう言いました。
 口から出た言葉は本当にとんでもないことなんですが。


 テロリストたちが私を憐れみの目で見ています。
 こら、そんな眼差しを私に向けるな。


 「そ、そうだ。ウサギさんは?」

 ウサギIN戦闘用ボディならこの状況を打破してくれるに違いありません。


 「借金のかたに差し出しちゃった。てへ」

 てへ、じゃねぇよこのアマ。

 

 で、なんだかんだで数少ない理解者と
 愛情を与えてくれるはずの親という存在を同時に失った私は、
 絶望に包まれたまま二度寝することにしました。

 ええ、現実逃避ですよ。


 じゃ、おやすみなさい。

 


 せめて夢の中では幸せになりたい……。

 

 

 6月22日 火曜日 「四コマB」



起きたら怖い人たちと
いろんな意味で怖い親がいるんで
ずっと眠っておきたいんです。

 6月23日 水曜日 「四コマC」



テロリストな人たちは……夢じゃなかったみたいですね。

まあ知ったこっちゃないです。
ちょっとなんか生臭いけど気にしない気にしな〜い。

 6月24日 木曜日 「最近肩が重いんですよね……」


「私ね、空がとても好きなの。
 雲ひとつ無い空を見てると
 イジメられていることなんて忘れてしまいそう」

「う、うん。そうだね……」

 さっきから、震えが止まりません。

「やっぱり千夏ちゃんもそう思う?
 嬉しいなぁ。今までこんな風に話せた友達いなかったから」

「わ、私もだよ。玲ちゃん……」

 別に風邪引いてるわけじゃなくて。

「千夏ちゃん、大好き〜!!」

 隣にいた玲ちゃんが抱きついてきます。
 だけど、私の肌のセンサーには、何の温度も感じていなくて。
 何故か悪寒が背筋を駆け巡りまくっていて。

「わ、私も好きだよ……」

 震える声でそう言うと、玲ちゃんはとても嬉しそうに笑いました。

「あ、そうだ。せっかくだから私と一緒に写真撮らない?」

 オチ。なんとなく見えてきましたよ。

「え、でも……」

「カメラ持ってきたんだ〜。えへへ」

 多分。あなた写りませんよ。
 ねぇ?
 ねぇってば。

「い、いいよ。私、写り悪いから」

「そんなこと無いって。千夏ちゃん可愛いから写真でも同じだよぉ」

 そう言って玲ちゃんは私の肩を抱き寄せ、
 私たちの方にカメラを向けます。

「それじゃはいチーズ!!」

「ち、チーズ……」

 ああ、どうしよう。
 ヘンな物が写り込んでたり、私の体の一部が消えていたらどうしよう。

 っていうか玲ちゃんは自分が死んでること気付いて無いんだよね?
 もし気付いちゃったらどうするんだろう……。

「……あれ? シャッターがきれない」

 ……ああ、そういう『現象』もあるんでしたね。

「また壊れちゃったのかなぁ」

「残念だったね……玲ちゃん」

 もし写真取れてたら、神社にでも供養しに行かないといけなくなる所だったので助かりました。

 ……そろそろ友達づきあいを考えなきゃいけません。

 

 


 

 6月25日 金曜日 「北斗七星が……」

 

 放課後。
 近所の公園に行ってみるとやけにボロボロな服を着た、
 無駄に筋肉質な武道家らしい男性がいました。

 その男性は何故か悪そうな人たちに囲まれています。
 彼らの服装は20xx年に核戦争が起きていたら最先端だったはずです。

 ……もうこの時点でやられキャラに見えてくるのは何故でしょう?

 


「おいおい!! よくも俺たちの邪魔しやがったなぁ!!」

 悪そうな人がいかにも悪そうな言葉を吐き捨てました。

 ここで言う『悪そう』は頭のことではないですよ?
 いや、あながち間違ってはいないんですけど。

「邪魔……? 俺が何をしたというんだ?」

「ナンパの邪魔に決まってるだろ!!」

 ナンパの邪魔かぁ。
 それはとても恥ずかしかったでしょうね。
 突然現れた男にそんなことされたら。
 少し同情したりして。


「相手は小学生だったじゃないか」

「それがいいんだろうがぁ!!!!」

 ごめんなさい。
 頭も悪い方たちだったみたいです。

 

「私は変態が嫌いなのだ」

 武道家が言います。
 気持ちは分かりますが、
 私は以前、ドッペルゲンガーに
 マゾだと言われた経験があるので複雑な心境です。


「うるせぇ!! 死にやがれぇ!!!!」

 逆上した悪い男たちが一斉に襲い掛かりました。

「空舞破天流奥義……BREAK・break・DEATH・dance!!」

 なんとなくそれっぽい名前がカッコいいのですが、
 どうせなら漢字か英語のどちらかに一つに統一してください。
 何こんな所で国際化の波を感じさせてるんですか。

 

 武道家らしい男の人はまるで踊るように悪そうな人たちの攻撃を避け、
 彼らの後ろに立ちました。

 不良たちは何が起きたのか分かっていないらしく、
 殴りかかった姿勢のままで固まってました。


「BREAK END」

 武道家の彼が淡々とそう言うと
 今まで止まっていた不良たちの体が砕け散りました。

 お約束な「ひでぶ!!」と言うセリフの残して……。

 

 ……それにしてもロリコンだっただけで殺される彼らは少し不憫です。

 

「な、なにが起きたの?」

 私の呟きを聞いたのか、武道家がまるで独り言のように喋ります。

「避けると同時に目にも見えぬ速さで数千発の打撃をを与え、
 相手を破壊する。
 これぞ空舞破天流奥義の極みなり」

  なんとなく嘘っぽいですが
  実際にこの目で見たので納得するしかないです。

「……そなた」

 彼が私をじっと見つめています。
 なにか気に障ることでもしちゃったのでしょうか。

「一見した所、かなり武術の才能があるとみえる。
 よければ私のもとで空舞破天流を学んでみないか?」

 ええ!?
 私って武術の才能があったのですか?
 でも武術って大変そうだし……。

 ふと私の頭にいじめっ子たちを次々とミンチにしている図が浮かびました。

「やります師匠!!」

 がっちりと手を組む私と師匠。
 こうして私は武道家の道を歩むことになりました。

 

 

 

 


 ……なぜか師匠は手を放してくれません。
 妙に嬉しそうで、まるで私の手の感触を楽しんでいるみたいです。

 


『私は変態が嫌いなのだ』

 ……同族嫌悪って知ってますか?

 

 

 

 6月26日 土曜日 「武道家への道Act1」


 昨日出会った師匠(多分ロリコン)と山篭りしています。
 二人っきりなのはなんかいろいろ危ない気がしますが。


 師匠に言われるままストレッチやランニングなどの
 基礎トレーニングをしていたのですが、
 ……なんていうかすごくつまらないです。

 っていうかそもそもロボットって練習したら
 能力があがるんですかね?
 なんだかただ金属疲労を溜めているだけみたいなんですが。


 「師匠。何かすごく退屈なんですけど……
  って何してるんですか?」

 師匠は森にあった一本の大木に蜂蜜を塗ってました。

 「熊を誘きだそうと思ってな」

 何やってんだよ。
 ホントに。

 っていうか蜂蜜で寄ってくるのは虫だけだと思いますよ?

 「やはり実戦の練習は生きている物でないと……」

 だからって野生動物ですか?
 間違いなく喰われますよ私。

 「そんなの絶対無理です!!
  死にますよ!!」

 「お、熊が来た」

 「えええぇ!!??」


 どうしろってんだよ。


 


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