1月29日 日曜日 「踏切コレクター」

 「いいなぁ……踏切欲しいなぁ」

 「何寝ぼけた事言ってるんですかリーファちゃん。頭悪いにも程があるぞ」

 「千夏お姉さまは踏切欲しくありません?」

 「踏切って……あの、電車とかが通る時に降りてくる奴?」

 「はいそうです。あの踏切です!! 欲しくありませんか?」

 「いらんわそんなもん」

 どこをどう見れば欲しくなるってんですか。

 「えー!? なんでー!? だって踏切とかあったら便利ですよ!?」

 「……どこが?」

 「電車とか来そうになったら、棒が降りてきてくるんですよ!?」

 「うん。そうだね。それが踏切だもんね」

 「すっげえカッコイイじゃないですか」

 「基準が分からない!! リーファちゃんのかっこよさの基準がわからない!!」

 「それに普段は真剣白刃取りの練習も出来ますし」

 「あの降りてくる棒を使って練習するの!? というか練習して何の意味があるんだよ!!」

 「心身ともに充実します」

 そんなんで充実しちゃう心身なんてどうかと思いますよ。




 「っていうかリーファちゃんさ、前は跳び箱集めてたんじゃなかったっけ? あれはどうしたの?」

 「飽きました」

 「はやっ!?」

 「だってあれ、かさばりますし」

 「だから言ったじゃん!! 私もそんな事言ってたじゃんか!!」

 「というわけで、時代は踏切なのです」

 「聞いたこと無いわそんな時代」

 「ああ……踏切欲しいなぁ。この2006バージョンが一番欲しいなぁ」

 「あるんだ? 踏切に2006バージョンとか」

 「2006バージョンは2005バージョンに比べて遮断機の下りてくる時間が0.5秒早いんです。凄いですよね!」

 「わかんねぇ。そのすごさは全然わかんねぇ」

 「まあでも歩行者には優しくないんですけどね」

 「そうだろね。遮断機が早く降りてくるんだから」

 「……そうだ!! 私と千夏お姉さまのお小遣いをそれぞれ出し合って、ふたりで踏切買いませんか!?」

 「買いません。断じてお金なんて出してやりません」

 「えー!? お姉さまのけちー」

 「なに勝手な事言ってるんですか!! 踏切買って喜ぶのはリーファちゃんだけでしょ!?」

 「私の喜びは全人類の喜びだよ!!」

 「なんて自分を過大評価してる発言なんだ!! それを真顔で言えるリーファちゃんが怖い!!」

 ろくな大人にならんぞリーファちゃん。いや、今でも十分ダメな子供だけども。



 「はぁ……ローン組んじゃおうかなぁ」

 「ローン地獄に陥らないように気をつけてくださいね」

 というかそこまでして欲しいのかリーファちゃん。いったい踏切のどこにそんな魅力が……。

 「ねえリーファちゃん。踏切のどこが一番好きなの?」

 「シマシマの部分が一番好きです」

 「即答か。即答でその訳の分からない発言なのか」

 筋金入りのバカだなぁ……。





 1月30日 月曜日 「アイロンが壊れました」

 「どうしよう!? アイロンが、アイロンが壊れてしまいましたよ!!」

 私が自室で休んでいると、そんな雪女さんの叫びがうるさく届いてきました。
 なるほど。アイロンが壊れたらしいです。そりゃあ大変ですね。
 まあ私にはあまり関係ないや〜……制服がシワがついたままで学校に行くのは嫌だけど、別に死ぬわけでも無いしね。
 そんな極論言ってたら全部関係ない事になってしまいますけども。


 「千夏さん! どうしよう!? アイロンが壊れちゃったんです!!」

 「うわぁ!? いきなり部屋に入ってこないでくださいよ!! びっくりするじゃないですか!!」

 「だって、アイロンがですねぇ……」

 「知ってますよ! 壊れたんでしょ!?」

 「な、なぜそれを知ってるんですか千夏さん!!
  ……はっ!? まさか千夏さんったら、私の部屋に盗聴器を……」

 「仕掛けないよ!! あれだけ大声で叫べばね、隣りの県に住んでいる人にだって聞こえるだろうさ!!」

 「本当ですか!?」

 「例え話に決まってるでしょうが!!」

 なんでこんなに雪女さんとの会話は疲れるんでしょうね?
 ああ、彼女が少し天然入ってるからですね。だから疲れるんだ。



 「千夏さん……これから私、どうすれば良いんでしょうか?」

 「なにが?」

 「アイロンを壊してしまった私の今後の身の振り方の話をしているんです」

 「電気屋に行って新しいアイロン買ってこれば?」

 「問題はそう簡単に解決できるもんじゃ無いんですよ!!」

 「そうなんですか。知りませんでした。アイロンが壊れちゃった事って、すごい大問題だったんですね」

 「はいそうです。国際問題に発展するぐらい大問題なのです」
 「へぇ〜……国際問題に。
  ……んなわけあるかい」

 「本当なんですってば!! 戦争が起こっても不思議じゃありません!! アイロンが壊れたから!!」

 あれですか? 風が吹いたから桶屋が儲かるとか、そんな理論なんですか? バカバカしいったらありゃしない。




 「とりあえず雪女さんの言いたい事は分かったと仮定します」

 「仮定なんですか?」

 「仮定です」

 だって訳わかんないって言ってたら話が進まないし。

 「それで、雪女さんはどうしたいんですか? 新しくアイロン買っちゃダメなの?」

 「アイロンを新しく買う事は……悪魔に魂を売るのと同じ事です!! 私にはできません!!」

 「……そうっすか」

 「な、なんですか千夏さん!? その、また訳の分からない事言い出しやがったよって言いたそうな顔は!?」

 いや、世の中にはいろいろな価値観があるんだなぁと噛み締めていただけですよ。ホント。
 ……にしても、雪女って種族はみんな『こう』なんですか?



 「じゃあどうするの? 直すの?」

 「そうですね。それが一番良い解決方法なんですけど……」

 「なにか問題でも?」

 「実は……私が使ってたアイロンは特別製だったんです。そんじょそこらの修理屋さんでは直せないのです!!」

 「どんな風に特別製なの?」

 「ミスリル鋼を使ってましてね……」

 「なるほど。エルフにしか加工できないわけですか。そんな物を壊したとなったらそりゃ一大事だ」




 ……………………やっぱり新しいの買えよ。そんなレア物使わずに。



 1月31日 火曜日 「ズル休みじゃない休み」

 「うあ……気分悪い……」

 「どうしたの千夏? すっごく顔悪くしちゃって」

 「いやですね、その……朝起きてみたらすっごく気分悪いんですよ。
  なんていうか、身体の中にある内臓を全部ごちゃ混ぜにされたみたいな」

 「もう千夏ったら……もしかして二日酔い?」

 「どこの世界に二日酔いで胃の中戻しそうな小学生が居るってんですか!」

 「あら、違ったの? じゃあ寿命とか?」

 「いくらなんでも極端すぎる」

 なんで二日酔いという要素が消えたらすぐに寿命なんだ。
 そんな簡単に素人診断するな。



 「なにか変な物食べた?」

 「昨日は……そういえば、珍しくお母さんが夕食作ってくれたような気が」

 「もう二度と作ってあげないわよ」

 そりゃあ困ります。
 本当にたまにですけど、お母さんの料理が恋しくなる時があるんですから。



 「今日は学校行けそう?」

 「学校ですか……? えっとですね、今からもし神の奇跡が私に降り注いだとしても、学校だけには行けそうもないです。というよりも行きません」

 「それって体調が悪いのとは別の思念が働いているんじゃ……」

 気のせいですってば。



 「そっか……じゃあ仕方ないわね。今日は学校を休みなさい」

 「やったあ……」

 「ふらふらになりながらもガッツポーズだけは忘れないのね」

 そりゃあね。魂から湧き出てくるようなガッツポーズですからね。もはやソウルポーズだと言っても過言ではない。





 「ふぅ……はからずも学校を休む事ができてしまいましたね。これは本当にラッキーな出来事ですね。
  気分が悪いのは確かに辛いですけども、結構嬉しかったり……」

 ……………………あれ? おかしいですね。先ほどまで確かに気分が悪かったのですけど……何故か、今は健康そのものな感じが……。

 「あれ? 千夏さんどうしたんですか? ずる休み?」

 「ち、違いますよ雪女さん!! ずるじゃないって!! 気分が悪かったから休んだだけですよ!!」

 「そうですか。いやー、でも私も良くその手を使って学校を休んだなぁ。千夏さんもなかなかやりますね」

 「だから違うってば!! 信じてよ!!」

 結構ありますよね。こういう事……。
 やっぱりアレは精神的な物だったのでしょうか……。






 2月1日 水曜日 「寝込み2日目」

 「ううう……気分悪い」

 なんと、2日連続で体調を崩してしまいました。いや、結局昨日は結構調子良かったりしたんですけど。
 とにかく、今日は本当にダメなんです。今までで経験した気持ち悪さのナンバーワンなのです。

 「千夏……大丈夫?」

 「お、お母さん……」

 珍しくお母さんが真剣な顔をして私のおでこに触れてきます。
 なんだか心配をかけてしまった事が申し訳なくて仕方ありません……。ごめんねお母さん……。


 「2日連続で同じ演技でズル休みだなんて……あなたにはあまり役者の才能は無いみたいね」

 「なに訳の分からない事を心配してくれちゃってるんですか!! 私の体調を案じてくれたんじゃないのかよ!!」

 「だってこれで千夏の女優への道が断たれたと思うと……」

 「勝手に人の将来の照準を決めてたんですか。しかも女優というえらく不安定な職業に」

 「今の世じゃあ安定している職業を探す方が難しいわよ。
  ヒュー○ーや○イブドアが一瞬で消し炭になる時代よ?」

 「その例えの人は消し炭になる原因が明確にありましたけどねっ!!」

 「はあ……千夏は女優としてデビューして、私たちの家計を助けてくれるもんだとばかり思っていたのに……これでまた一つ生きる希望が消えて無くなったわ」

 なんかすっげえ私が悪い事したみたいになってるじゃないですか。
 お母さんが勝手に夢見てただけのくせに。



 「うう……お母さんとバカな事話してたせいか、すっげえ気持ち悪くなってきた……」

 「吐くときは服を汚さないようにしてね? 洗うの大変だから」

 娘が苦しんでる時にそのセリフを言えるなんて、悪魔かこのおかんは。

 「……もしかして、本当に気分悪いの?」

 「ええ。ずっとそう言ってますよ……」

 「そっかあ……もしかして何かの病気とかじゃないのかしら?」

 「病気って、私はロボットですよ? ロボットでも病気になるの?」

 「今まで散々人間らしく生きてきた千夏が何を言うかね」

 確かにそれはそうかもしれませんけど。

 「もしかして…………」

 「もしかして?」

 「お赤飯の日とか?」

 「ええ〜!? そっちじゃないと思うんですけど?」

 「おめでとう千夏!! 今日からあなたはれっきとした女の子ね♪」

 「うっせえ。ぐわんぐわんしてる頭に響くから声を潜めなさい」

 「今晩はお赤飯炊いてあげる!! いや、むしろ赤いやつだけお椀に盛ってあげる!!」

 「嫌がらせか何かかよ」

 もう本当にどうでも良いんで、ほうって置いてください。
 今の私の体調ならお母さんとの会話で軽く死ねますんで。


 ……はあ、明日になっても良くならなかったら、黒服さんにでも診てもらいますかねぇ………すっごく嫌だけど。





 2月2日 木曜日 「死の宣告」

 「う〜む……」

 「どうですか黒服さん? 私の身体、どこか悪い所あったりするんですか?」

 私は今、黒服の奴に身体を診てもらっていたりします。
 ええ、昨日の気分の悪さがまだ続いているのです。むしろなんだか悪化しているような気がしますし……。
 だから大事をとって、こうやってマッドサイエンティストな黒服に身体を晒しているわけですよ。死ぬほど嫌だけど。

 「うん! 千夏、あと1ヶ月で死ぬね!!」

 「そっかあ! ただちょっと死んじゃうだけかあ!!
  ……ふざけんな!! 嘘でしょ!?」

 「ああ。ごめん。嘘ついた」

 「なんでこの状況で嘘つく必要があるんだ。しかも、そんな全然笑えない嘘を」

 「1ヶ月じゃなくて2ヶ月だった」

 「そこだけが嘘だったの!? 私が死んじゃう事は嘘じゃないの!?」

 「ええ。嘘じゃないです。ガッツリ死にます」

 「その絶望的にアクティブな擬声語はなんだ?」

 そんなバカな事があってたまりますかね……? 私がもうすぐ死んじゃうだなんて。



 「あの……死ぬ原因は?」

 「えーっと、骨折とか」

 「ちょっと待てい!! 私、骨折なんかで死んじゃうの!?
  っていうかその死因はふつう診断できないだろ!! 予言者かお前は!!」

 「じゃあ食あたりで死にます」

 「じゃあってなんだじゃあって!!」

 お前、すげえ適当に物言ってるだろ。


 「とにかく、千夏はもうすぐ死にます。そりゃあもうぽっくりと。カップヌードルよりもお手軽に」

 「人の死をインスタント麺に例えるな」

 「だから千夏よ。その時が来て後悔しないように、しっかりと生きるのだぞ? 死ぬ間際になってもっとプリンを食べておくべきだったと後悔しても遅いんだからなっ!!」

 「私は別にプリンにそんな執着はしないです」

 そんなのが最期の言葉になるのは嫌だし。





 「……それで黒服さん。私が死んじゃう本当の理由を教えてくれませんかね? まさか本当に食あたりじゃないんでしょ?」

 「ああ。本当の理由は別にある」

 「それはいったい何なんですか? 取り乱したりしないから、言ってください」

 「お前が死ぬ本当の理由は……」

 「本当の理由は……?」

 自分では取り乱さないと言っていましたが、やっぱり怖いです。
 ドキドキと鼓動が早くなり、そして胸を締めつけられるような痛みに襲われました。

 「お前は……電池切れで死ぬ」

 「まあ♪ なんてロボットっぽい死に方なんでしょう♪
  ……っていうか電池切れなら電池換えりゃいいじゃん」

 「お前、電池外したらメモリーが吹き飛ぶから」

 「ひと昔前の電子手帳みたいな事言うな」

 というか私の脳みそはそこまでやわだったのか……。





 2月3日 金曜日 「わざとらしい優しさ」

 今日も今日とて、気分が悪くて学校を休みました。
 自室でゆっくりと休んでいた時のことです。なぜか、リーファちゃんが私を尋ねてやってきました。

 「千夏お姉さま。これ、私からの気持ちです。どうか受け取ってください!!」

 「……リーファちゃん。これ、なんですか?」

 「チョコレートが入っていた空き箱です」

 「いらないよこんなん。ゴミ箱にまで捨てに行くのが面倒だからって、私にゴミ押しつけるな」

 「違いますってば! お姉さま、前からこれが欲しい欲しいと言ってたじゃないですか!!」

 「空き箱なんか欲しいと思った事ありません!! なんですか!?
  私はチョコレートの空き箱から香る甘い匂いを嗅いで優しい気持ちになる事を望むような、ちっぽけな幸せを求めているとでも言うのですか!?」

 「えらく具体的ですね。そんな事やってたんですか?」

 うるさいですよ。放って置いてください。


 「とにかく、それを受け取ってくださいと言ってるんです!!」

 「だからいらないってば!! そもそもなんで私がリーファちゃんから物貰わないといけないんだ!!」

 「それはお姉さまがもうすぐ死……」

 「死?」

 「し……シリコンバレーに行くからじゃないですか!!」

 「そんな海外旅行の予定はねえ」

 「嘘です!! 千夏お姉さまはシリコンバレーという天国に行ってしまうんだ!!」

 「リーファちゃん!?」

 よく分からない事を叫んだリーファちゃんは、ダッシュで私の元から去って行きました。
 相変わらず脳みそのアップグレードを忘れてる人だと思います。



 「あ……千夏さん」

 「ああ。雪女さんですか。どうしたんです? 思いっきり顔にどう接していいか分からなくて困ってますって顔してるけど?」

 「べべべ別にそんな!! 千夏さんがもうすぐ死……」

 「死?」

 「し……ししゃもばっかり食べてるししゃも星人だからですよ!! もう! いけない子ね!!」

 「そんな珍妙な異星人になった覚えは無い。
  で、何か用なんですか?」

 「えっとその……私、実は千夏さんにプレゼントがありまして……」

 「プレゼント? 私にですか?」

 「はいそうです。この人形を差し上げます」

 雪女さんが私にくれたのは、可愛い女の子のフランス人形でした。
 まあ嬉しいと言えば嬉しいですけど、なんでこのタイミングでこんな物をプレゼントしてくれるのか分かりません。

 「なんでこれを私に?」

 「だって……結局私と千夏さんの間に子供は生まれなかったじゃないですか……。
  そのせめてもの代わりとしてその子と残された時間を……」

 「いろいろ突っ込みたい所はあるんですけど、今は保留しときます。
 それより、残された時間ってなんだ?」

 「しまった!! 脳が滑った!!」

 「それを言うなら口が滑ったでしょうが。まあ確かに雪女さんなら間違ってないかもしれませんが。脳が滑ってても」

 思考回路が絶対零度による超伝導で溢れていますもんね。

 「と、とにかく、それを大事にしてください!! それじゃあ!!」

 リーファちゃんと同じくダッシュで去っていく雪女さん。あまりにもわざとらしすぎる気がします。





 「はぁ……多分、みんな黒服さんから私の死の宣告の事について聞いたんでしょうねぇ。
  だからこんなに優しいのか」

 あまりにもわざとらしすぎる優しさに逆に傷ついている気がしますけどね。
 そこんとこは徹底して欲しいよ。

 「千夏!!」

 「あ……お母さん」

 お母さんだってきっと黒服さんから全部聞いているはずです。
 お母さんにまで気を使われるのはイヤだな……。

 「千夏!! 今日はご飯作るの面倒だから、夕飯はカップヌードルにするけど文句ないよね!?」

 「……ええ、まあ。いつもの事ですし」

 お母さんの態度だけはいつもの代わりの無い物でした。



 ……………………それもどうかと思うよ。




 2月4日 土曜日 「神様になる方法」

 「あれ……? なに作ってるんですか黒服さん?」

 「千夏専用の棺おけです。もうすぐ必要になりそうだし」

 「そんな物を堂々と私の目の前で作ってるとはいい度胸ですね。
  私の命が燃え尽きる前にあなたを殺したろか」

 「ちなみに千夏用のシュレッダーも作ってたんだけど……そっちを使った方が良かったか?」

 「シュレッダー!? 私の埋葬にそんな物使おうとしてたんですか!? 私は書類か何かか!!!!」

 「でもお前の身体の中にある機密が外部に漏れないためには必要かなって」

 「そんな気遣いいらん!!」

 「それは残念だ」

 本当に残念そうな顔してんじゃねぇ。



 「で、俺に何か用か? もしかして棺おけに新機能でもつけて欲しいとか?」

 「なんだよ新機能って」

 「音と光が鳴る」

 「随分煌びやかな棺おけですね!? っていうかそれに何の意味があるんですか!!」

 「葬式が華やかになります」

 「そんな気遣いはいらねぇ!!!! 私はただ、生き延びるための手段を求めてここに来たんです!!」

 「生き延びるための手段……? お前、もしかしてまだ死ぬ覚悟が出来てないのか?」

 「当たり前でしょうが!! 私、小学生ですよ!? そんな前途有望な若人が軽々と死を受け入れられるわけないじゃん!!
  もっといろんな事したいって思うのが普通じゃん!!」

 「そうか……。それもそうだな。言われて初めて気付いた」

 「なんで言わねぇと私の生きようとする意志に気付いてくれないんだ。
  …………まあ、そんな事はどうでもいいんですよ。私が生き残るための方法を、教えてください。何かきっとあるんでしょう!?」

 「ああ。いくつか方法はある。しかしそれを実際に行うには恐ろしいまでの危険が……」

 「危険ですって!? 死ぬよりも危険な事が起こりえるって言うんですか!? 違うでしょ!? だから、さっさと教えなさいよ!!」

 「しかし……お前、サイヤ人たちと戦うはめになってもいいと言うのか?」

 「ドラゴンボールか!? ドラゴンボールで助かろうとかそういう方法なのか!?」

 そりゃあ確かにいろいろと危険そうですね。
 ただね、ドラゴンボールって実際には無いと思うんだよ。まじで。



 「ドラゴンボールがダメなら、ライダー同士の戦いに参加しないといけなくなるんだが……」

 「お願いだからそっち方面の生き残りの方法は止めてくれ。もっと現実的な話がしたいんです」

 「現実的な方法か………………ひとつだけ、心当たりがある」

 「なにか苦行をやるとかそういうのでなければ大歓迎ですよ。その心当たり」

 「そのただひとつの方法は……神になる事だ!!」

 「随分とぶっとんだ生き残る方法ですね!?」

 そんな事大声で言ってると頭がおかしくなったみたいに思われますよ。お気をつけて。

 「神様になるって……つまり、宗教を開けって事?」

 「それは他者から認識される神だ。観察者が存在しなければ在る事が出来ない神など、高次元の存在として二流だ!!」

 「また良く分からない事を……」

 「つまり!! 自分の肉体を神的領域まで高めれば、病気とかそういうのから開放されるから、死ななくて済むという理屈なのだ」

 「いや、良く分からないのですが……。というか神様ってなろうと思ってなれるものなの?」

 「修行すればなれる」

 なれんのかよ。神様って一体なんなんだ。



 「それで……いったいどんな修行をすればいいんですか?」

 「まずだね、このありがたい像(300万)を購入して、それに毎日三回拝み……」

 「またその商法か!!!!」

 いったいどうすりゃいいんだよ。私は。











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