3月5日 日曜日 「黒幕っぽい人たちの会話」


 「く、くそ!! 邪魔さえ入らなければあの一家を抹殺する事が出来たのに!!」

 「それは残念だったな。アヴェよ……」

 「そ、そのなんとも偉そうっぽい感じの語り草は私の本体である……ラスボス(仮)!!」

 「ちょ、なんだよ。そのラスボスっていう名称は」

 「何となく全ての黒幕っぽい人たちに送られる称号です」

 「ちっとも誇れない称号だな。しかも(仮)ってなんだ」

 「ほら。ラスボスって良く側近の人間に倒されて取って代わられる事があるから」

 「そういう事言うなよー。俺、ちょっと気にしちゃう性質なんだから。そういうの」

 「えーマジでー? あはは。気にしちゃうのー? かっわいいー」

 「も、もうっ! そんなこと言わないでよ!!」

 「あはははは。このおちゃめさんめー」

 「…………って何やってるんだ俺たちは」

 「本当ですね。何やってるんだろ」

 「しかしまあ全ては計画通りに動いている。あの千夏とか言う少女が神への道へ一歩踏み出してしまったのは口惜しいが……まあそれも想定の範囲内だ」

 「おっ。流行語使っちゃった。しかも今話題の人の」

 「まあね。いくら俗世間から離れていたとしてもさぁ、ナウい事やってみたくなる年頃なのよ」

 「ナウいって表現事態がもうすでに時代の波に飲まれている感じだけどね」

 「そういう事は気にするな。
  それで本題なのだが……まあ今回はあの家族をひとりしか減らす事が出来なかったが、それでも良しとしよう。
  何せ一番の力を持つ春歌を殺せたのだからな」

 「それが問題なのですが……どうやら、春歌はまだ死んでいないらしいのです」

 「なんだと? それはどういう事だ!?」

 「私が殺した春歌は、あの旅館の死階の境界にいたドッペルゲンガーなのです。
  つまり、本物はまだ生きている」

 「なに……? それは本当か!?」

 「ええ。間違いありません。確かめました」

 「ならば一体本物はどこに……?」

 「それが問題なのです。何故彼女が姿を隠しているのか……えらく不気味です。
  何かを企んでいるとしか……」

 「なんにせよ、気は抜けないという事か……」





 「…………今の会話、すっげぇ黒幕っぽくなかった?」

 「ホントホント!! すっごく黒幕っぽい!! なんかすっごく悪い人っぽい!!」











 「……という夢を見たんですが、ウサギさんどう思います?」

 「千夏は想像力が豊かな子だなぁ」

 それってバカにしてんじゃないでしょうね?
 どうでも良いことですが、私たち、家に帰ってきました。





 3月6日 月曜日 「本当の神様に」

 「はぁ〜……やっぱり家が一番だなぁ。一番すぎて爆走中だなぁ。2位を置いていきまくっているなぁ」

 「そうっすね」

 「4週差はついちゃってるね。勝利確実だね」

 「そうっすね」

 「いやぁ〜、でも本当に旅館での出来事は大変だったよねぇ……。大変さランキングが3位ぐらいだね。
  アメリカさんと戦争していた時ぐらい大変だった」

 「そうっすね……」

 「…………ちなみに私の中で黒服さんは、相づち打つのが苦手な人ランキング1位ですよ。
  そのムカつく相づちは止めてください」

 「そうっすね」

 殴るぞお前。




 「もー! なんなんですか黒服さんはっ!! 話を聞くなら聞く!! 聞きたくないなら聞きたくないと言う!!
  そういう事出来ないんですか!? ねぇ!?」

 「聞きたくないです。千夏の話」

 「うわぁ……まさか会話を拒否されてしまうとは。あまりの衝撃に握りこぶしが怒りに震えていますよ」

 「というよりも千夏……こんなどうでも良い事を話している場合じゃないと思うんだ。
  お前にはもっとやるべき事があるだろう?」

 「え? 私がやるべき事……? お母さんのちゃんとした供養とか?」

 「確かにそれは必要かもしれないけども。アイス棒一本立てただけの墓はどうかと思うけども。
  でもそれよりも優先してやる事があるはずだ」

 「……なんですかそれ? ちょっと身に覚えが無いんですけど?」

 「お前は、神様にならなきゃいけないじゃないか。そうしないと死んでしまうと言ったじゃないか」

 「え!? あれってもう良いんじゃないの!? だって免許貰ったよ!? 仮免!!」

 「仮免は所詮仮免。言うなれば、無料お試し期間だ」

 「あんなに苦労したのにお試し期間!? そんなバカなっ!!
  というか、このままだと私、死んじゃうの!?」

 「もちろん。そりゃあもうぽっくりと死にますよ。このまま仮の神様だったら」

 「騙されたー!! 詐欺だよー!!」

 もうなんの心配もないと思っていたのにっ!! 酷い。酷いや!!



 「はぁ……それじゃあ私は、本当の神様になるためにまた頑張らないといけないというわけですね?」

 「そういう事です」

 「面倒臭いなぁ……。それで、なにやればいいの? 何やれば本当の神様になれるの?」

 「とりあえず愚かな民衆を1000人ほどその足元に跪かせてみようか?」

 …………私は一体どんな神様を目指しているんですか?








 まあやってみますけども。





 3月8日 火曜日 「100個の良い事と1個の悪い事」

 「それでは今から神様になるための修練を始めます」

 「黒服さん……本当に黒服さんの言うとおりにしたら神様になれるんでしょうね?
  まさか本当は黒服のジョークでしたー。まさに、ブラックジョークでしたー♪
  とかな最悪なオチを用意してるんじゃないでしょうね?」

 「どこまでうたぐい深い奴なんだよお前は。普通の人間はそこまで考えないぞ」

 心配性にもなりますよ。我が家の中で1、2を争うほど怪しい存在である黒服に頼ってるんだから。


 「で、いったい何をすれば神様になれるんですか?」

 「善行を100回やれば、神様になれるぞ?」

 「善行を100回? なんだか積み重ねれば誰でも出来そうな修練ですねぇ。
  そんなので良いの?」

 「ああ。ただしな、ひとつ条件があるんだ。
  こいつの存在が、この修練を苦行の域にまで押し上げている」

 「その条件っていったい……」

 「その条件とは、100の善行をしている間にひとつでも悪行を行えば、今までやってきた善行はすべてゼロとなるというものだ」

 「一回でも悪いことやったらまた最初からって事ですか? どれだけ良いことしてても?」

 「その通り。99回良いことしてようが、一気にゼロだ」

 「なんだか三途の川の河原で行われていそうな鬼の嫌がらせみたいですね……まあいいです。それしか方法が無いのならやってやろうじゃないですか」

 それじゃあさっそく誰か困っていそうな人を見つけて……。

 「ハイ、千夏アウト〜。善行カウントがゼロになりました」

 「ちょっと待ってくださいよ!! まだ何もしてないのに!!
  良いことも悪いことも!!!!」

 「足下を見てみなさい」

 「え……? 足下ですって? いったい何が……」

 「名も無き草を踏んでました。だからアウト」

 「ふざけんな!! そりゃ踏みますよ!! たいていの人間は自然に踏んじゃってますよ!! だって草だし!!」

 「たいていの人はそうであっても、神には決して許されない事なのです。すべてのモノに等しく慈愛を持つ事こそが、神の条件なのだから」

 「神様って大変ですね」

 「まあこれぐらい大変じゃないと、税金ドロボーと罵られるからな」

 神様は私たちの税金で生活してたんかい。
 どんな神様やねん。



 「よ、よ〜し……足下に気をつけながら困っている人を助けないと……。
  なんだか、難易度が急に上がった気がしますねえ」

 「ハイ。千夏アウト。善行カウントがゼロになりました」

 「えー!? だから、何もやってないんですってば!!」

 「いや、今さっき千夏の腕に止まっていた季節外れの蚊が居ただろう?」

 「確かに居ましたけど、そいつを殺したりなんかしてませんよ!!
  ただこう、追い払っただけで!!」

 「ブブー! だからダメなのです」

 「なんで!?」

 「神様ほどの人間ならば、あえて血を吸わせてやるぐらいの器がなければ。
  季節外れの蚊のような弱き生き物を哀れむ心は持ち合わせねばいけません」

 「神様って一年中ムヒを携帯しなくちゃいけない人種なんですか?」

 本当に大変ですね。神様って。




 「はぁ……それじゃあ足下に気をつけながら蚊を受け入れるようにしながら困った人を見つけて……」

 「はい。千夏アウトー」

 「なんで!? 今度はなにしたって言うの!? アリでも踏んだ!?」

 「今千夏は二酸化炭素を出して地球温暖化を促進させました」

 「息もするなってか!?」

 神様って本当に大変ですね。
 普通に挫けるわ。




 3月8日 水曜日 「花粉テロ」

 「あーあ。暖かくなったり寒くなったり忙しい気候ですねえ。
  もうちょっと落ち着いてくれれば過ごしやすいのに」

 私は家の縁側に座ってのんびりと空を眺めてたりしました。なんてのどやかなひとときなのでしょうか……。
 え? 神様になるための修練? 呼吸するたびにカウントがゼロになるってのにやってられますかい。
 私はそんなに暇じゃないんです。


 「はあ……それにしても、これからどうすればいいんだろ……。
  神様になれないと私死んじゃうし……だからといってあの修練をクリア出来るとは思わないし……。
  はぁ……本当にどうしよう」

 「千夏お姉さま。なんだか元気がないようですけど大丈夫ですか?」

 「あ、リーファちゃん……」

 普段ならこの人なんかに弱気な所なんて見せたくないんですけど、よっぽどまいっていたんでしょうか。
 私はリーファちゃんの顔を見ると、泣きそうになりながら今の自分の不安な気持ちを吐露しようとしてしまいました。

 「あのですね、実は私……」

 「まあそんな事どうでもいいんで、私と遊びませんか?」

 「まだ何も言ってないのにどうでもいい扱い!?」

 「だって千夏お姉さまが言うことって言ったら、何でやねんとか、どないやねんとかばかりなんだもの」

 「あなたは私の事どう思ってるんですか」

 私の吐く言葉吐く言葉、すべてツッコミかい。


 「だから、別に聞きたくないのです。
  それよりも千夏お姉さま、私と一緒に遊びましょうよ」

 「今までの失礼極まりないプロセスの後に遊んでもらえると思ってるんですかあなたは」

 いくら私でもそんな気分にはなれないよ。

 「今日やる遊びはすっごく楽しいですよー? もう病みつきになっちゃうぐらいに」

 「へぇ……そうですか」

 「その名も、『花粉症の人が住んでいる家の敷地内に杉を植林しようゲーム』!!」

 「陰湿すぎる遊びですね!? ある意味でリーファちゃんにぴったりだよ!!」

 「面白いですよこれ。本当に病みつきになります」

 病みつかれるなや。そんな遊びに。




 「木を植えるために地面に穴を掘っている時にですね、花粉症のために死に掛けている住民の姿を想像すると、もう笑いが止まらなくて……」

 「陰湿を通り越して心を病んでますねリーファちゃん。誰がそんな遊びに参加するものか」

 「じゃあ手っ取り早くスギ花粉爆弾を家に投げ込む遊びに変更します?
  確かにお手軽なんですけど、下手したら通報されてしまうのが難点なのですけど……?」

 「人の家に勝手にスギを植えるのも何かの罪に問われると思いますけど?」

 まったく、リーファちゃんは何を考えているんだか。私は今、生死の境をさまよっていると言っても過言ではないのに。
 ……いや、もしかしたら彼女はそういう私の心を汲んで、あまり思いつめないように気を使ってくれたんじゃ……。

 「じゃあスギ弾道ミサイルにしましょうか? 発射に1、2億円かかるけど、小国ぐらいなら全体に花粉をばら撒く事が出来ますよ?」

 「リーファちゃんはどうしてそんなテロリズムの計画を着々と立ててるですか!!
  正気に戻れや!!」

 やっぱりそういうわけじゃないか。
 しょせん、リーファちゃんだしね。






 3月9日 木曜日 「だらだら雪女さん」

 「……雪女さん、ひとつ聞いてもいいですか?」

 「なんですか千夏さん? そんなに改まっちゃって。なんだか気味悪いですよ」

 「言ってくれるじゃないですか雪女さん……。
  もとより溜まっていた怒りゲージが、さらに膨張しましたよ」

 「もとより溜まっていたって、もしかして千夏さんは何かにお怒りなんですか!?」

 「ええそうですよ。ものすごく怒っております」

 「日本の政治についてとか?」

 「私はそんな事で怒れる程身の回りが暇じゃない人間なんでねっ! 自分の目の前の事を怒るだけで精一杯なんですよ!!」

 「うわぁ……目に余る怒りっぷり。私、そんなに酷い事しました?」

 「雪女さん。私の目の前にあるものはなんですか?」

 「なんですかって……今日の夕食のポークカレーですよ?」

 「ええそうです。ポークカレーです。
  まあこいつ単体ではそんなに怒る事なんてありません。むしろカレーは大好物でどんとこいですから。
  問題なのはですねえ……今日の朝ご飯はいったいなんだったのかという事ですよ!!」

 「今日の朝ご飯はチキンカレーでしたよ?」

 「じゃあ昨日の夕食は!?」

 「ビーフカレー」

 「昨日の朝食は!?」

 「プレーンカレー」

 「普通のカレーって言えよ!!
  そいでもってそいでもって、一昨日の夕食は!? すべての始まりは!?」

 「カレーうどんでした」

 「そうそれ!! なんで最近カレーづくしなんですか!!
  しかも、普通はカレーうどんからスタートしないでしょ! カレーうどんは言うなればカレーリレーのアンカー的存在でしょ!!
  どうしてカレーうどんから持ってくるんですかあなたはっ!!」

 「千夏さんはそのカレーリレーの一番手がカレーうどんだった事を怒ってるんですか?」

 「違う! そこじゃない!! 私は毎日の食事がカレーだらけになっている事に怒っているの!!
  雪女さん、お母さんが居なくなってからちょっとたるんでるでしょ!? 掃除とかも雑になってきてるし!!」

 「ドキリッ!! なんて的確な点を突いてくれるんですか千夏さん……。
  そうなんですよ。お義母さんが居なくなってから、どうも家事に身が入らなくて……。
  やっぱり傍に鞭をもった暴虐王が居ないと気が入らないんですかね? 銃を小脇に抱えた悪意の塊が居ないと気合が入らないんですかねぇ」

 「あなた、毎日そんな事されながら家事してたんですか。そりゃ今の生活は気が抜けますよね」

 なんだか兵士が戦場から帰ってきたみたいになってますね。
 なんにせよきちんと家事をやってもらわないと困るんですけど?



 「雪女さん。とりあえず家事だけはきちんとやってくださいよ。そうでないと雪女さんをこの家に置いている意味が無くなっちゃうから」

 「さらりとシビアな事言ってのけますね千夏さん。でもまあ分かりました……次から気をつけます」

 「まあそれだけ分かってくれればいいですよ。きちんと分かってもらえれば」

 「次からはカレーうどんはアンカーにします」

 「違うだろ。というか全然わかってくれていないでしょう?」

 お母さんが居ないと脳みそまで油断してるんですか?





 3月10日 金曜日 「我が子との将棋対決」

 「ねえママー。カナと将棋しよー?」

 「……加奈ちゃんも成長しましたねえ。まさか、親に将棋の勝負を挑むようになったとは。
  というか加奈ちゃん、将棋なんていったいいつ覚えたの?」

 「さっき、女神さんに教えてもらったの」

 「女神さんですか……。暇を持て余しすぎたあまり、加奈ちゃんを将棋の相手にしようとしたのですね?
 なんていろんな意味で可哀想な人なんですか」

 まさか将棋を教えただけなのに涙を誘われるとは思わなかった。


 「ねえねえ〜。将棋してよ〜」

 「ええいいですよ加奈ちゃん。ママが相手になってやるのです。
  ……の前に、将棋盤と駒は? それがないと話にならないんですけど?」

 「そんなのないよ?」

 「無いの!? じゃあいったいどうやって将棋しろって言うんですか……」

 「あたまの中で」

 「盤無しの将棋をやろうとしてたんですか!?」

 加奈ちゃんみたいな子どもには無理だと思います。
 というか、大人にだって出来やしないよ。




 「じゃーいくね? 3四歩」

 「本気で始める気なんですか加奈ちゃん!? どんだけ天才児なんですかあなたは!!」

 親として鼻が高いとか言う前に、どうしていいものかパニックですよ。

 「次はねー、3三桂馬」

 「加奈ちゃん……勝手に2回行動はだめでしょ。どこのスパロボだよ」

 「そうなの?」

 「そうですよ」

 「じゃー92一四一金」

 「ちょっと待って加奈ちゃん!! 座標が明らかにおかしい!! それじゃあ戦いが盤上から飛び出して銀河系を巻き込んじゃうよ!!」
 「すたーうぉーず?」

 「うん。スターウォーズになっちゃうね。あくまで喩えだけど」

 「それなら8四ジェダイ」

 「だからあくまでも喩えですってば!! なんですかその銃系統がまったく効かなそうな駒は!?」

 「よーだくんです」

 「ヨーダか。よりにもよってヨーダが私の敵にまわったんですか」

 こりゃ大変です。勝てる気がまったくしない。いろんな意味で。



 「ママの番だよ?」

 「あれだけさんざん行動しといてようやく私の番ですか。待ちに待ってましたよ。
  え〜っと、それじゃあ……8五ダースベイダー」

 「きゃー! ママ酷いぃ……。今の手で共和国が壊滅しちゃったぁ……」

 「ねえ加奈ちゃん。私たち、なんのゲームやってるんですかね?」

 女神さんはいったいどんな教え方をしたんですか。
 問いただしたくて仕方ない。



 3月11日 土曜日 「混合料理美食研究会」

 それは私が休日のお昼ご飯を食べている時の事でした。

 「う〜ん……昨日ハンバーグで今日ハンバーグカレーですか。
  おのれ雪女さん。またもや手を抜きはじめましたね?
  あれほどキツく言っておいたのに分かってくれないなんて、やはり実力行使で分からせるしか……」

 「そうとも! ハンバーグとカレーでハンバーグカレーというありがちな発想しかできない人間には、死あるのみなのだ!!」

 「うわわあぁ!!?? 見知らぬおじさんが、我が家の窓をぶち破って飛んできたー!?」

 なんて衝撃的な映像なのでしょうか。心臓が弱い人が見たら失神してしまうと思います。
 私も口の中のハンバーグカレーを吹き出しそうになったわ。


 「あ、あなた誰ですか!? もしかして強盗とか!?」

 「私は混合料理美食研究会の会長です。けっして怪しい者ではございません」

 「今名乗った肩書きがそっくりそのまま怪しいんですが?」

 間違いなく通報されるべき人間であると思います。
 まあ私はこういう人種の人間には慣れっこなので動じませんが。
 …………嫌なものに慣れてしまいましたね。



 「それで……あなたはいったい何者? 混合料理美食研究会ってなに?」

 「その名のとおり、二つの料理を一つに合わせた革命的料理、混合料理を追究する者たちです!!」

 「そうですか。お暇な方なんですね」

 貴重な時間をそんな事に消費してるあなたに本当に同情しますよ。



 「しかしハンバーグカレーとはないですなぁ!!」

 「あ! ちょ、なに人の食事を勝手に食べてるんですか!!」

 「カツカレーは良いのです。カツカレーは!
  衣のサクサクとした食感がカレーに新たな食いごたえを与えるのですから!!
  しかしハンバーグとはなんですか!? ハンバーグなんて、肉と対して食感も変わらないじゃないですか!!」

 「そんな事は無いと思いますけど、まあたしかにトンカツよりは控えめな食感でしょうねえ」

 「そうでしょう!? だから私はハンバーグカレーを認めないのです!!
  こいつは世の中をダメにする害悪だ!! 絶対に許せない!!」

 「ハンバーグカレーひとつでどうにかなってしまう世の中なんてもとよりダメな気がしますけどね。
  まあ落ち着いてくださいよ」

 無駄に熱い人だなぁ……。



 「そんなハンバーグカレーを食べさせられている可哀想なあなたには、我ら混合料理美食研究会が開発した新混合料理を食べさせてあげましょう。
  泣いて喜んでください」

 「いちいち態度がでかいぞ」

 「その名も、『ハヤシライスカレー』です!!」

 「なんかそれ意味無くない!?」

 私みたいな素人には、ハヤシライスもカレーも同じ料理に見えるのですが?










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