3月12日 日曜日 「スパイ衛星の打ち上げ」

 「……なにやってるの黒服さん? 庭なんかに出て? そろそろまともな所に就職しようと考えてたとか?」

 「いんや。ちょっと打ち上げ実験をしようと思ってな」

 「そうか。ようやくまともな人間として歩みだしたのかと思って安心していたのに」

 というかね、すっごく気になってたんですが、あなたは一体どうやってお金を得てたりするんですか?
 もしかして本当に私んちに寄生してるわけじゃないよね?

 「……って、打ち上げ実験? ロケットか何かを?」

 「まあね。そう言えなくも無い物を打ち上げてる」

 「そう言えなくも無い物って何? すっごく気になるんだけど?」

 「納豆とか」

 「納豆とか打ち上げてるの!? なんで!?」

 意味が分からない。納豆を宇宙まで飛ばす意味がまったく分からない。
 あれか? 味が良くなったりするのか? 宇宙の神秘的な何かで?



 「まあ納豆とかは冗談だけど……」

 「そうだろうね。分かってはいたけども」

 「スパイ衛星とかこっそり打ち上げてる」

 「それはまた物騒な物を打ち上げてますねぇ」

 「今の時代は情報戦が何より大切だからな。相手の出方さえ知っていれば、いくらでも対処のしようがあるのだから」

 「あなたは一体何と戦う気なんだよ。また戦争でもやりあう気ですか?」

 もうあんなの勘弁して欲しいんですけどー?

 「俺たちが戦っている相手をお前は知っているのか!?」

 「知らないよ。戦っているっていうか、勝手にいろんな人たちが私たちに戦いを挑んできているだけじゃないですか。
  悪の秘密結社とか、アメリカさんとか、神様のドッペルゲンガーとか」

 「そういやそうだったね。すごい専守防衛だ」

 「専守防衛って言うんですかねこれは。ただ巻き込まれただけに思えるけど」

 「まあとにかく、今の世、専守防衛はもう古い!!」

 「古いとか新しいとかで変えるような物でも無いと思うんですけど……」

 「ミサイルが飛んできてからでは遅いのだぞ!? そうなる前にどうにか手を打つのが我々にとって一番良い選択なのだ!!」

 なんだか分からないけど今日は熱いなぁ……。





 「そういうわけで、スパイ衛星千里眼くんが必要になるわけです」

 「え? なにそれ? 衛星の名前がそれなの?」

 いろんな意味でダメダメ感が出てますね。

 「性能は折り紙つきだぞ? 例え曇り空の地であったとしても、地面に落ちている縫い針の穴をばっちり見る事が出来るんだからな!!
  どんな場所でも覗き放題だ!! 隣のお姉さんの着替えシーンもばっちり!!」

 「ウチの隣、廃園テーマパークじゃん」

 「ものの喩えなんだ。隣のお姉さんは」

 良く分からん喩えだな。


 「それで……その衛星、どうやって打ち上げるの? 良く分からないけどさ、打ち上げって凄い設備が必要なんじゃないの?
  そんなのどこにもこの庭に見えないんですけど?」

 「これで打ち上げようと思ってる」

 「……これって、その」

 「ロケット花火」

 「無茶でしょそれは!? どこの子供の発想なんですか!!」

 そんなんで衛星打ち上げられたらNASAいらんわ。

 「大丈夫大丈夫。100本ぐらい束ねてやるから」

 「そういう問題じゃない!!」



 3月13日 月曜日 「不思議発見」

 「それにしても不思議ですよねぇ。人間界って」

 「なにまるで今まで人間界に触れてこなかった的な発言してるんですか雪女さん。あなた、思う存分この世界に馴染んでいたくせに」

 一般家庭の家事をやるぐらいにね。

 「時折ふと感じるんですよ。初心に戻るっていうか、野良の雪女だった頃の野生本能を取り戻すっていうか」

 野良の雪女ってなんやねん。

 「雪女さん、私んち来る前はどちらにお住みだったんでしたっけ?」

 「千葉です」

 「普通に人間社会じゃねえか」

 「いいえ。千葉は普通の日本とは違いますから」

 千葉の人に失礼極まりない発言ですよそれは。



 「はぁ……地下鉄の電車ってどうやって入れたんですかねぇ?」

 「雪女さんの言う人間社会の不思議ってそんなもんなんですか?」

 「気になりません?」

 「まあ確かに今よりも小さかった頃はそういう事考えてましたけど、今ではもうどっかに地上と繋がってる線路があるのだろうとしか思えませんよ」

 「石油コンビナートのガスタンクは何故球状なのだろうとか」

 「内部の圧力がどこの面に対しても一定にかかる形状だからでしょ?」

 「飛行機はあんなに重いのにどうして飛べるんだろうとか」

 「揚力、揚力」

 「氷は何で滑るのだろうとか」

 「圧力を与えられた所が溶けて水になるからでしょ?」

 「…………」

 「どうしました雪女さん?」

 「千夏さん、夢がねえー。千夏さんドリームナッシングですよ」

 「明らかに間違ってそうな英語で人を非難するな」

 せめて小学生のわりにはよく知ってるねと誉めてください。
 私、誉められると伸びる子だから。




 3月14日 火曜日 「リーファちゃんに尋問」


 「へっくし!」

 「花粉症ですか千夏お姉さま? ロボットの癖に」

 「相変わらずどこかトゲのある事言ってくれるじゃないですかリーファちゃん」

 「まあね。ほら、私って射手座だから」

 知らんがなそんなプチプロフィール。

 「ぶえっくしょん!!」

 「あははは。リーファちゃんも花粉症なんですか? へっぽこロボット暗殺者だから?」

 「はいそうです」

 「全面肯定!? 潔いというかなんていうか……」

 「最近の暗殺者は素直なんですよ。イメージアップのためにそういう風に頑張ってるんです」

 「イメージアップって言ったってもういろいろと遅いでしょ」

 少なくとも姉の部屋にマシンガンを持って突入してくる娘に、これ以上の好意は抱けませんって。



 「……そういえばリーファちゃん」

 「はい。なんですか千夏お姉さま?」

 「ウチの中に、なにやら敵さんと通じているスパイが居るんですって」

 「へえ、それはそれは…………」

 「……」

 「……」

 「……」

 「……なんでそんな事を私に?」

 「なんとなく?」

 「疑問形で返さないでください」

 理由は察してあげてくださいよ。



 「千夏お姉さま、もしかして私の事を疑ってるんですか!?」

 「疑ってる!? 何を言ってるんですかリーファちゃん!!
  私がリーファちゃんの事を疑うなんて、弁当に付いてくるソースなどが入っている袋の切り口が油でベトベトして切りにくくなっていたとしてもありえませんよ!!!!」

 「ハードルが低い! なんだかやすやすと飛び越えられそうな気がする!!」

 そりゃあ気のせいですって。




 「まあ良いからさリーファちゃん、私とぶっちゃけトーク集しよっか?」

 「やっぱり疑ってるじゃないですか。しかもトーク集ってなんですか」

 「リーファちゃんさ、何か我が家に不満とかあったりするの?」

 「人の話を聞いてくださいよ……。
  ……不満ですか。そうですねぇ……」

 「あ。やっぱり不満はあるんだ?」

 「姉がバカで困ります」

 「そうですか。でもそのお姉さんは大切にしてあげてください。
  で、他に無い?」

 「自分にとって都合の悪い事は徹底的に無視ですか」

 れっつぽじてぃぶしんきんぐなので。


 「千夏お姉さま! 私はスパイなんかじゃありません!!」

 「リーファちゃんが本当にスパイだったら、同じような事言うだろうね」

 「当たり前じゃないですか!! スパイが自分がスパイですって言うわけないでしょう!?」

 「リーファちゃんって、やけにスパイさんのお気持ちが分かるんですね。……はっ!?
  やはり、リーファちゃんがスパイ……」

 「だから違いますってば!!」

 「そうですかぁ……。はぁ、もしリーファちゃんがスパイさんだったら、決して手加減する事無くへめきょる事が出来たのに」

 「なんですかその不吉な単語、へめきょるって」

 残念だなぁ。






 「とにかく、私はスパイを見つける気なんで、リーファちゃんもどうか協力してくださいな」

 「まあ良いですけども……千夏さん。家族の中にスパイが居るって本当に信じてるんですか?」

 「はい。信じてます」

 「一点の揺らぎも無い発言!?」

 「だってウチの家族ほど怪しい人たちは居ないでしょうし」

 「確かにそうですね」

 ええ。間違いなく。




 3月15日 水曜日 「雪女さんへの尋問」


 「雪女さん雪女さん。ちょっとお話ししたい事があるんですけど」

 「え? な、なんですか? またカレーの連続メニューの事についてですか?」

 「確かにそれについてはちょっと言いたい事があったけども。
  でも残念ながら今日はその事についてじゃありません」

 「今日はカレーじゃないって事は……もしかしてこれからやろうとしているクリームシチュー4連戦の事ですか!?
  まだ誰にもその計画を話していないのに、どこから情報を!?」

 「それでも無いです……って、そんな事企んでたんですか。我が家の食卓へのテロ首謀で逮捕しちゃいますよ」

 今の世では考えただけで逮捕出来るらしいですしね。




 「今日私が雪女さんにお話ししたいと思っていたのは……我が家に潜んでいるともっぱらの噂のスパイについてですよ」

 「潜んでいるくせにもっぱら噂になってるんですか。
  潜めて無いじゃない」

 「それぐらいダメなスパイなんですよ。しかしながらそのダメなスパイさんに、私たちの個人情報は漏らされまくりなのですよ。ダイレクトメールが送られまくりなのです」

 「スパイとその怪しい会社の類は繋がってるんですか」

 「いや、それは知らないけど。単なる喩えです」

 っていうか話がまったく進まないじゃないか。いい加減にして頂戴。


 「それで……そのスパイさんがどうかしたんですか? 私と何か関係が?」

 「関係ないんですか?」

 「えっ? 私、知らない間にスパイさんと関係あったんですか?」

 質問に対して質問で返したらまた質問で返されてしまいましたよ。
 なかなかやるね雪女さん。



 「それじゃ家族の中で怪しい行動してた人とか、心当たりありませんか?」

 「怪しい行動ですかぁ……そういえば、ミノフスキー粒子さんが……」

 「そんなガンダムに出てくるような名前の人、ウチに居ましたっけ?」

 「女神さんの事ですよ。私の中ではそういう名前で呼んでいるんです」

 「なんでそんな名前で?」

 「ほら、レーダーとか無力化する人だから」

 さりげなく酷い。

 「で、女神さんがどうしたんです?」

 「なんと女神さんがですねぇ……後のせサクサクの天ぷらをお湯を入れた直後に放り込んでいたんです!! びっくりですよね!!」

 「インスタントの天ぷらそばの話!? そんなのちょっとしたミスじゃないですか!! 私だって間違えちゃう時あるよ!!」

 「ええ!? 千夏さんもスパイなんですか!?」

 「違うわ!!」

 なんですかその雪女さん自己流のスパイ判別方法。
 あてになりゃしないよ。




 3月16日 木曜日 「女神さんへの尋問」

 「女神さん女神さん。私が今から適当な物の名前を言いますから、それについて連想出来るものを答えていってください」

 「え? なんで急に連想ゲーム?」

 「占いのようなものだと思っちゃいなさいな。じゃあいきますよ?」

 「今日はえらく積極的に絡んできてくれるんですね。女神感激」

 まあせいぜい喜んでなさいな。

 「梅干しって言ったら何を思い浮かべますか?」

 「梅干しって言ったら……おにぎりとか」

 「……ちっ」

 「え!? その謎の舌打ちは何!?
  なにかマズイ事でも言った!?」

 「今の答えはスイカに七味唐辛子を振りかけるかのような酷さです」

 「なんてワイルドな。塩だけじゃあガマンできなくなったわけですか」

 「じゃあ次はですね、レモンと言えば何を思い浮かべますか? 今度は真面目に思い浮かべてよねっ!」

 「結構あれも真面目だったのだけど……。
  ええっと、レモンと言えば……ビタミンC?」

 「ああっ! 惜しい!!」

 「惜しい!? 何か良く分からないけど、惜しかったの!?」

 「ええ。もう掠ってましたよ。もう少しで致命傷でした。もう少しで心臓を貫通できたのに」

 「それって私にとって良い事なのでしょうか? 致命傷というのは」

 そういう喩えなので気にしないでください。あくまで喩えだから。




 「さあ! この調子でやっていこうよ! あともう少しでゴールだから!!」

 「なんだか良く分からないけど、千夏さんはすっごくハッピーになってますねぇ」

 「それじゃあ問題です!! 熟していないミカン!! さあ、何を連想する!?」

 「えっと………………」

 「ドキドキドキ……」

 「……すっぱい?」

 「…………ファイナルアンサー?」

 「微妙に古いと思いますよ。その単語」

 「じゃあ最終解答?」

 「日本語に訳されても。…………最終解答です」

 言ってくれるんじゃん。

 「……」

 「……」

 「……」

 「…………………………正解です!!」

 「わーい! やったぁ!! そんなに嬉しくはないけど、一応喜んでおきますよ!!」

 「お前が犯人だなー!?」

 「ってえー!? なに!? いきなり何!?」

 「熟していないミカン⇒すっぱい⇒スパイ!! つまり、あなたがくだんのスパイなんですねー!!」

 「なんですかその言いがかりはー!! っていうか今までずっと私にすっぱいって言わせたがっていたでしょう!?」

 「ええ、まあね。スパイ探すの面倒だから、女神さんをスパイにしたててあげて全部解決しちゃおっかなあと」

 「なんて酷い事を考え付いているんですか!! おそろしいよ!!」

 「ちなみに本当に女神さんがスパイとかじゃないんですか?」

 「ええ、違います。神に誓っても」

 「あなた自身が神じゃないか」

 「それもそうでした」

 こんなバカな人がスパイなわけないし……という事は、もう一度探し直しですかぁ。
 はあぁ。面倒だなぁ。






 3月17日 金曜日 「加奈ちゃんへの……尋問?」


 「えーっと加奈ちゃん」

 「んー? どうしたのママー?」

 「……」

 「……?」

 「もしかしてだけど……加奈ちゃんってスパイ?」

 「ちがうよー?」

 「そっかあ。加奈ちゃんはスパイじゃないかあ。じゃあいいや」

 「甘っ!? 甘すぎますよ千夏さん!!」

 「あ。雪女さんだ」

 「あ。じゃないでしょ!!
  なんですか今のは!!」

 「今のは何かと言われましてもねえ……。
  えーっと、尋問?」

 「どこが!? あれのどこが尋問なんですか!?
  まるで高級羽毛布団の至福の手触りのような尋問しやがって!!」

 その喩えはいるんですか?

 「でもそう言われても加奈ちゃんですからねえ。スパイなわけないじゃないですか」

 「意外な人物程怪しいものじゃないですか!!」

 「それはミステリー小説の読みすぎです」

 「千夏さんも今までに似たような事を言っていたはずなのにその切り捨て方!?」

 自分に甘く、他人に厳しくが私の信条ですから。



 「というか前から言おうと思ってたんですけど、千夏さんは加奈ちゃんに甘すぎます!!」

 「え〜……? そんな事無いと思いますけど」

 「自覚無いんですか!? 親バカっぷりにも程がありますよ!!」

 「だからそんな事無いですってば」

 「例えば! 加奈ちゃんがちょっと床に落書きとかしたら怒らずに褒めるし!!」

 「だってですね、あれは本当に天才的な絵画だったんですよ。絵を嗜んでいる人間としては、正当に評価してあげる義務があるのです」

 「ただの落書きだったじゃないですか!!」

 「ただの落書きですって!? 私はあれほどの絵画はピカソか加奈ちゃんぐらいしかお目にかかった事がありません!!」

 「比較対象が前衛的すぎます!!」

 仕方ないじゃないか。私的には匹敵していると思うのですから。


 「加奈ちゃんが泥ダンゴを作ったら本気で食べようとするし……」

 「美味しそうだったから」

 「お腹壊しちゃいますよ!! 私が止めなかったら今頃千夏さんは病院のベッドの上ですよ!?」

 「それも覚悟の上です」

 「なんて硬い信条に支えられた親バカっぷりなんですか……」

 尊敬してもいいですぜ?




 3月18日 土曜日 「黒服さんの自供……?」

 「黒服さん。黒服さんってさスパイ?」

 「はい。そうです」

 「そっか。う〜ん……しかし困ったなあ。まったくスパイの手がかりが掴めないよ!!
  しらみつぶしのローラー作戦も効果無いみたいだし……いったいどうすればいいんだろ」

 「とりあえず面倒ならさ、ダーツの的に家族の名前を全部書いて、矢が刺さった人がスパイって事にすりゃいいんじゃないか?」

 「そんな事してもどうせ女神さんか雪女さんに当たるだけですからねえ。
  結果が見えている事やっても」

 「あの二人は不幸の避雷針みたいなもんだからな」

 おっ。上手い事言うじゃないですか黒服さん。




 「っていうかおまえ、ウサギの奴にはまだ尋問してないだろ?」

 「そりゃそうですよ!! ウサギさんがスパイなわけないじゃないですか!!
  当然の事だからあえて聞いてないんですよ!!」

 「いや、意外と分からんぞ? あいつがスパイだったりするのかもしれない。
  よく言うじゃないか。真面目な人間程変態性が強いって。それと同じだ」

 「ウサギさんは変態じゃないよ!!」

 「いいや! あいつは変態だね! 鞭とかで叩いたり叩かれたりするのが好きなのさ!」

 「んだとこのやろう!! SMの世界をバカにする気かてめえ!!
  奥歯鞭でガタガタ言わせたるぞ!!」

 「そこに怒るのかよ」

 「とにかく、ウサギさんは変態じゃありません!! あとついでにスパイでもない!!」

 「まあスパイは俺だしね」

 「そうっすね」

 「でも本当にこれからどうしようかなぁ……。このままずっとスパイを野放しにしているなんて嫌だしなぁ」

 「そうだよな。なんだか気持ち悪いもんな。傍にスパイが居ると思うと」

 「まったくですね。きっとスパイのやろう、私たちの生活を四六時中見張ってるんですよ!!
  その姿はまるでパパラッチのように!!」

 「懐かしい名前だな。パパラッチ」

 「そうだね。最近あまり聞かないね。じゃなくて」

 「フーリガンも聞かないよな」

 「ワールドカップのシーズンになってこればまた聞き始めるんじゃないですか?
  じゃなくて、もっと身のある話をしましょうよ!! スパイとかを捕まえる罠とかのアイディアとか!!」

 「チーズでも置いとけば引っかかるんじゃないか?」

 「まるでネズミですね。いや、確かに時代劇とかでネズミが紛れ込んでおるなとか言うけども」

 「今のは上手かった。黒服ギャグ大当たりだった」

 「自画自賛するな。そしてなんだよ黒服ギャグって。ダサいとかそういう次元を超えている」

 「じゃあスパイギャグ大当たりだった」

 「はいはい。そうですね」




 「あーあ。もう今日はいいや。スパイについて考えるの」

 「もう止めにするのか?」

 「黒服さんが余計な事を言ったりするから話が進まないんだよ。こんちくしょうめ」

 「こういうのがきっと戦争がこの世からなくならない理由なんだろうね」

 「意味が分からない感じにでかいスケールにするな」

 まったくもう。だから黒服さんと話すのは嫌なんだよなぁ。




 「………………っていうかさ、本当に黒服さんスパイなの?」

 「うん」

 「冗談とかじゃなくて?」

 「うん」

 「えええええええ!!??」

 なにその恐ろしい自供。









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