西暦2059年。
日本、新設都市『蘭華町』
制服に身を包んだ少女たちが桜並木を歩いていく。
天から降り注ぐ朝日は、彼女達に光のベールをかけている。
優雅なその風景に、心奪われる者も多い。
ぐっとくるよね。
制服って。
みたいな心底どうでもいい情欲は置いといて、
彼女たちが向かっているであろう場所に目を移そう。
『日本天蘭学園』
妙に昭和的な門に達筆な文字が刻まれている。
名前を見る限り、いい所のお嬢様学校だ。
その学校を取り巻く壁は厚く高い。
カメラ片手に女生徒たちの麗しい姿を納めようと、
意気込む輩の熱き魂を挫くのには十分な堅牢さである。
少しばかり話がずれた。
さて、そんな制服をまとった天使達が集う痴情の楽園。間違えた。
地上の楽園とも呼べるこの学校に小鳥達のさえずりと、銃声が鳴り響く。
銃声?
いやいやいや、いくらなんでも銃声って。
ご無礼を許して欲しい。
少しばかり耳が腐っていたようだ。
そうである、いくらなんでも麗しい女生徒が、対戦車ライフルとガトリングガンを台車で押しながら、
学校内を右往左往するなんて、あるわけないのである。
運動場と思える場所に『危険。地雷注意』なんて看板があったり、
機動戦士だなんて銘打たれそうな武装した巨大ロボットが放置されていたり……
目の前にそんな風景が広がっていたとしても、
認めるわけにはいかないのだ。
いや、認めろ。
これが現実だ。
さあ、なんとなく気付いたと思うけど、この天蘭学園は普通の学校とはちょっと違う。
人間とチンパンジーのDNAの相違点ぐらい違う。
決定的な差なんだけど。
いろいろな説明を飛ばして、分かりやすく言ってしまうと、軍事学校なのだ。
この天蘭学園は。
年端もいかぬ少女たちが、なぜ軍事学校に在籍しているか。
なんていう疑問は、本編見て解決してください。
で、学校を囲っている壁が、不届きな輩から生徒を守るためではなく、
むしろ学校からくる流れ弾から近隣住民を守るものだったことが発覚した所で、
この物語の主人公を紹介させてもらう。
丘野 優里(おかの ゆうり)15歳。
近くにある公立の中学校を卒業した後、この天蘭学園へと進学した。
そして今、妙に頬を引きつらせながら、彼は学園の門をくぐる。
可愛い顔が台無しである。
そう、男性にしては可愛いすぎる顔が。
理由は分かる。
なんて言ったって、優里少年は、この天蘭学園に、
女子用の制服を着て、
つまり『女装』して通うことになってしまったのだから。
……理由?
だから、
本編見てってば。
そんなこんなで、本編へと続く。